サメの生命力 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

人間にとって一番の恐怖は何と言っても鮫だろう。映画「ジョーズ」で紹介され、悪者扱いされたおかげでホオジロザメの数が極端に減少している。鮫は人間よりはるかに長い歴史を生き抜き、食物連鎖の頂点にあるが、中でもホオジロザメが王様だ。獰猛なサメで、目が悪いせいか鍋でも釜でも噛み付いて確かめる悪癖がある。サメに噛まれて、あの時は痛かったなあ~などと笑い事では済まされない。メジロザメやイタチザメもホオジロほどではないが人を襲う。他にヨシキリザメやアオザメ、比較的大人しいとされるシュモクザメ、オナガザメも油断は出来ない。サメの種類は多く、南西諸島には顔が見るからに獰猛なネムリザメがいるが、海底の穴に頭を突っ込んで眠る大人しいサメだ。サメは泳ぎつづけなければ呼吸出来ないようになっているがこのように例外もいる。鮫の歯はデリンジャラスで、上下共に数列、諸刃のナイフが飛び出ている。噛み付くと尾ビレを振る反動で激しく首を振る。どんなものでもズバッと切れる。数本歯が折れてもコンベヤ式に奥から順番に次の歯が生えてくる。つまり「永久スペア」を持っている。しかも・・毎日塩水でうがいしているから絶対に虫歯になることがない。鮫肌という言葉があるが、鮫の肌はザラザラしてサンドペーパーのようになっている。本ワサビのおろし器は有名で、金おろしのように鋭くなくきめが細かいのでワサビの風味が引き立つ。

鮫の仲間の生命力には驚かされる。まあ人間より歴史が長いからしょうがない。マグロ延縄漁師が、すでに死んだと思っていたデッキの乾いた鮫に足を食いちぎられたとか、打ち上げられてカラカラのエイに刺されたとか、色々な話を聞く。お客様とカジキのトローリング中に100キロ近くのサメがかかった。ボートに引き寄せ仕掛けを切ろうとしたら、鮫の歯が欲しいし、数万円するルアーももったいないと言う。やむなくギャフを首に打ち、呼吸できないように水から出して船にくくり付け、死ぬまで放置した。しばらくしてお客さんが「もういいんじゃないですか?目が死んでいます」と言う。鮫は最初から死んだような目をしている、まだ駄目と首を横に振る。30分近くして、ピクリともしないので、ナイフで腹を裂いて内臓を海に流した。それから口を開けてルアーを取り出そうとした。瞬間鮫が大きくジャンプ、ギャフもルアーも引きちぎって着水、悠々と泳いで去っていった。とっさに避けたが、さすがに2人とも「うーん、信じられん、奴には内臓もないぞう・・」と唖然として鮫を見送った。サメは死んだフリをするから信用出来ない。