大学時代、卒業までずっと下駄で過ごしたが慣れると真冬も冷たくはなかった。
武術で足首を鍛えるのもあったが、木の感触が快適でクセになってしまっただけだ。
帰省するのに飛行機は問題ないが、フェリーは断られた。
飛行機の床はカーペット、しかも歩き回らない、フェリーの床はカンカン響くのが理由だ。
「これしかない」・・と言うと、お姉さんがスリッパを用意してくれた。
空手をやれば打撲や捻挫は日常茶飯事、それほどたいそうな怪我もしなかった。
20年後もやはり年中裸足で、下駄ではないがサンダル履きだった。
ある日友人の医師が発見した。
「その足の指・・・」
「これ・・? これがどうした?」・・
「何で曲がっているの~?」
「そんなこと言っても昔から・・いや・・確か子供の頃は曲がってなかったなあ」
「それ・・骨折・・」
「え~~!骨折~?そんなバカな」
「骨折ならすぐわかるし、だいたい痛くて歩けないだろうが!」
そう言うと診察してから
「でもネ・・これ やはり骨折・・昔に」
数人いた者は皆一瞬・・目がテンになった
その内の一人が
「まさか骨折に気づかないなんてあり得ないよねえ・・」
仕方なく、ない脳味噌をしぼって懸命に考えたがなかなか思い出せない。
そう言えば試合中、蹴りを避けようとした相手が肘を下げ、そこにつま先が当たった、
結果的に肘打ちを食らったことになる。
指は死ぬほど痛くて、少し曲がったようだったので曲がりを修正したら元に戻った。
それでも痛くてしばらくビッコを引いていたような気がする。
皆が「じ~~!」と見つめた右足の人差し指は、真っ直ぐの左足の指に対して確かに右カーブしていた。
爆笑の渦が起き、可愛そうに曲がった人差し指はさらし者にされてしまった。
「しかしなあ・・ちゃんと骨、繋がっているし、動くし、困らない」。
医師が・・
「そう・・放っておいたから曲がってくっついたの。しかも下駄の振動と衝撃で普通は歩けないのに歩き回っていたの・・アナタ!」
と指差してバカにしたように
「鈍いとしか 言いようが」
医師のくせに涙流しながら笑っていた。
20年前の過ぎ去った過去を・・
可愛そうに、ギブスくらいしてあげれば良かった。
「真っ直ぐにならないかなあ・・」
と言うと、一言
「無理~~~!」
もう涙が止まらなくなったようだ。
とにかく「指の根性と生命力」に、皆で脱帽!
人を思いやる心があれば、退屈させないように常に話題を提供出来る。