蒲田の「とんかつ檍」で修行した店主が浅草橋で独立してからというもの、新進気鋭の職人として瞬く間に東京でもトップクラスの人気店となった。
しかし、「好事魔多し」という諺もあるように良い時ほど気を付けなきゃいけない。
なんと再起も危ぶまれるほどの大事故に遭ったのは2年前。
お店は閉店し、師匠が「とんかつ檍浅草橋店」として引継ぎ、店主は1年以上の長期入院とリハビリを余儀なくされた。
その「丸山吉平」さんが昨年秋に現在の地において見事復活。
とんかつが休みの日は「リリーカレー」というカツカレー専門店に替わる。
オープン時間より早めに訪問したんだが、すでに営業開始で2組目に入店。
券売機で食券を買うシステム。
リブロースカツの200gとごはんをポチッ!
おっと、ドリンクも忘れちゃいけない。
缶というのも素っ気ないが、あまりアルコール類まで手間をかけたくないということだろう。
ハイボールを飲みながらキッチンの様子を眺める。
浅草橋時代は独自のお店ルールを定め、それに従わない客には怒鳴り散らすことでトラブルも多かったらしい。
客に怒鳴るというのも商売人としてどうかと思うが気持ちは分からんわけではない。
私も料理人時代は何度も同じ気持ちになった。
料理に集中すればするほど客の自分勝手な行動には腹が立つのだ。
そこを我慢しなきゃいけないのだが、店主にとってはその限界を超えたのだろう。
それが証拠にとんかつを揚げている店主を見ると凄まじい集中力が感じ取れるのだ。
移転してからは女性スタッフも増えサービスも格段に向上したという。
●リブロースカツ200g+ごはん(2,000円+200円)
ラードの香りが立ち昇る揚げたてカツ。
それではいただきます
一口飲んで唸るしかない美味しさ。
とんかつの定食ではとんかつが重要なのはもちろんだが、ごはん、味噌汁、お新香がそれ以上に重要。
ひとつでも欠点があるとすべて台無しだのだ。
お新香は自己申告制。
もちろんいただきます。
最初の1切れは何も浸けずにそのままガブリ!
写真撮影に手間取り熱が回ったが、中の方はしっとりミディアムレア。
驚くほどジューシーで柔らかく、旨味は濃厚。
帝王切開で取り出し、無菌のまま外部との接触を断って大事に育てられる林SPF豚の魅力がいかんなく発揮されている。
脂身が多いところはヒマラヤ岩塩。
ロースカツの価値は脂身で決まる。
安いロースカツ赤身はごまかせても脂身が不味くて食べられない。
林SPFの脂身を一口食べると異次元の美味さということに気づく。
繊維を生かした切り口で歯応えシャキシャキ。
後半戦はソースで食べ進む。
つやつやのごはんとも相性バッチリだ。
食べ終え、丸山さんに向かって大きな声で「ごちそうさん!」
嬉しそうに微笑むその笑顔こそ本物の料理人の顔だ。
秋葉原もとんかつ激戦区で名店と云われる店が目白押しで、その数は上野、高田馬場をはるかに凌ぐ。
都内屈指、いや全国でもトップクラスの高レベル。
この中で益々磨きをかけ、頂点を目指してほしい。
美味しい食事に感謝をこめて
「ごちそうさま!」
【本日の名曲コーナー】
リリーカレーとのリリーつながりで第二次大戦中に流行したドイツ軍歌「リリー・マルレーン」
ドイツ兵ばかりか敵であるイギリス兵もこっそり聴いていたという。
同時期の日本では「みごと散りましょ国のため」といった暗い曲ばかり歌われていた時代に、別れた恋人を慕う歌詞だからね。
ある意味ヨーロッパの国というのは戦争慣れしているんだろうね。
兵営の前、門の向かいに街灯が立っていた
まだ彼女はそこにいるんだろうか
今もあるのなら、そこで会おう
また街灯のそばで会おうよ
昔みたいにリリー・マルレーン
俺たち2人の影が、1つになった
俺たち本当に愛しあっていた
誰に見られたってかまわない
街灯の下でまた会えたなら、
あの頃みたいにリリー・マルレーン
【お店】 ★
・丸山吉平
・東京都千代田区神田富山町29
・https://www.facebook.com/maruyamakippei/