溶かしすぎた | さまようブログ

溶かしすぎた


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 左は"Times Atlas of the World"という、世界で最も有名な地図帳の最新版に記載されたグリーンランドの地図です。なんだか私が小さい頃に見たグリーンランドの地図に比べ、白い部分が小さくなったようい見えます。特に東海岸側。

 ところがこれに氷河の研究者達が噛み付きました。「この地図は氷を溶かしすぎだ!」というのです。右の図が現状のグリーンランドをよく表しているものだ、と言うのです。しかも、地図帳には「NSIDCのデータに基づいている」「この氷床の面積減少は地球温暖化による」と明記されているのだそうです。

http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2011/09/atlas-shrugged-outraged-glaciologists.html?ref=hp

 

 なるほど、東海岸や南海岸では明らかに左図のほうが氷が後退しているように見えます。もし左図が正しければ、グリーンランドの氷床は約15%が失われたことになり、その場合海面は1mは上昇しているはずだ(もちろん現実にはそんなことはない)、と氷河の研究者たちは指摘しているとのことです。

   なんでTimes Atlasがこんな地図を作ってしまったのかは分かりませんが(*)、気になったのは氷河学者の反応。Times Atlas最新版が発売されたのは1週間前だそうですが、すでに質問状を送っているとのことで、非常にすばやい反応ではないかと思います。やはり以前のヒマラヤ氷河消失に関するミス は教訓になったのでしょうね。"いろんな意味"で。

 また、気候変動研究に関わる多くの科学者は、決して気候変動を誇張したがっているのではないことも分かりますね。それと同時に、「このようなことを、地球温暖化に懐疑的な人たちに利用されることを危惧している」とも述べられています。「ほらやっぱり陰謀だ」という感じですかね。それを避けるためにも科学者はこのようなミスがあった場合、即座に指摘すべきなのでしょう。大変ですが。


 最後に、グリーンランド氷床は15%も溶けてはいませんが、大規模に融解しつつあることは間違いない ことは強調しておきます


*:例えば、地図の製作者が、氷床から山が頭を出しているようなところを氷床ではないとみなしてしまったのではないか、とか、空から観察すると氷床と地肌の区別は案外難しく、雪があったりするとさらに困難になるからではないか、とか推測は述べられていますが。


2011/09/24追記

気候変動千夜一夜 」のページでも取り上げられています。詳しい紹介があるのでこちらもぜひ。