太陽活動と気候の関係
現在起きている気候変動の最大の要因は、人間活動により生じる温室効果ガスです。しかし、温室効果ガスだけが気候に影響を与えるわけでは、もちろんありません。ミランコビッチ・サイクル に代表されるように、自然要因も大きく関与しています。
14世紀から19世紀にかけ、「小氷期 」と呼ばれる寒冷な時期がありました。諸説ありますが、地球平均気温は最大で1℃ほど低下していたとされます。特にヨーロッパでは気温低下が顕著でした。テムズ川の氷結やグリーンランド入植地の全滅、打ち続く飢饉などがこの間に起きています。
小氷期の原因と考えられているのが太陽活動の低下です。小氷期の最も気温が低かった時期と、マウンダー極小期 と呼ばれる太陽黒点がほとんど見られない時期は、よく一致することが知られています。黒点が少ない≒太陽活動が低調とされますので、太陽活動の低下が小氷期の原因ではないか、と言われてきました。
日本時間15日のScience Now で、やはり太陽活動の低下がイングラント中部の低温化を招いたのではないかとする研究が報告されました。イングランドに残る1659年から現代までの気温の記録は、実際に温度計で測定した気温としては最も古いものです。この記録に残されたイングランドの冬の気温と太陽活動の強さには、やはり相関があるようだ、とのことです。
左図:縦軸は中央イングランドの冬の気温偏差。横軸は太陽フラックス(≒太陽から地球に届くエネルギー)の強度。太陽フラックスと中央イングランドの冬の気温には相関がありそう。
中央図:縦軸は左図と同じ。横軸は北半球平均気温の偏差。中央イングランドの小氷期の気温低下は、北半球平均気温の低下より大きいことが分かる。
右図:縦軸は、左図と同様、中央イングランド冬の気温だが、長期の温暖化傾向を取り除いたもの。横軸は左図と同じ。長期の温暖化傾向を差し引くと、イングランド冬の気温と太陽フラックスの相関がよりはっきりする。
なお、太陽フラックスはシミュレーションにより再現したものとのこと。doi:10.1088/1748-9326/5/2/024001より引用。
現在、太陽活動は低下しているとされます。太陽活動が低下すれば、イングランドに厳冬が訪れる頻度が高くなる可能性があると指摘されています。
図2:太陽活動の変動。20世紀はかなり太陽活動が活発な時期であったと言えそう。今後太陽活動は低下する可能性が指摘されている 。wikipedia より。
ただし、これは地球全体が太陽活動低下の影響を大きく受けることを示すものではありません。あくまでもイギリスなど局地的な気候で起こりうることを示したものです。全球平均で見ると、太陽活動低下の影響より温室効果ガス増加の影響のほうがはるかに大きく、太陽活動は温暖化傾向を打ち消せるようなものではありません。
この研究をまとめると以下のようになるかと思います。
・太陽活動とイングランドの冬の気温には相関がありそうだ。その原因として、北大西洋でおきるブロッキング現象 と太陽活動に関連があると思われる。
・今後太陽活動は低下する可能性が高いと思われ、これによりヨーロッパでは厳しい冬が多発するようになるかもしれない。
・ただし、これは地域的かつ季節的な影響に過ぎず、全球平均気温に大きな影響を与えるようなものではない。