週間文春 矢沢永吉 最終回 プライド | 矢沢永吉激論ブログ

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八月から続いてきたこの連載も、
残念だけど、今回で終わりです。
だから、最後に改めて、
矢沢のこだわる「プライド」の話をします。

良くも悪くもまっすぐに、
プライド持って生きてきたつもりだけど、
今の世の中、ちょっとまずいのは
そのプライドがなくなってきてるんじゃないか、ってこと。

最近、学校の給食費の話が気になったりする。
新聞に出てたりするよね。
ホントは払えるのに払わなくて、
催促されても、払わないで済んだらOK、
なんて言うモンスターペアレントがいる。

オレは子供の頃、給食費が払えなかった。
あのかっこ悪さっていったら……。
先生がみんなの前で、「矢沢、給食費は?」 って言う。
「忘れました」ってごまかすんだけど、忘れてるわけない。

金があれば持ってくる。
でも、ないんだもの。
こんな悔しいこと、なかった。

だから俺が親になったら、
子供の給食費を滞納するなんてことは絶対しない、って思った。

当たり前のことだけど、
俺みたいな団塊の世代では、
そういう人がほとんどだった。

「払わないで済むなら踏み倒しちゃったほうがラッキー」だなんて、
今の親のプライド、価値観が全く変わっちゃったんだね。

この前、コンビニの弁当を見ながら、
こんなことも考えてた。
五八〇円の弁当を、
賞味期限の切れる何時聞か前になると
店主が二九〇円の半値で売った。

そしたら、ばっとさばけるようになった。
お客さんも値段が下がるの待ってて、
そこばっかり狙っていけば、
いつも二九〇円で弁当が食えるわけ。

そこで、どっちに振れるか。
Save moneyできたことで、
浮いたお金を、きちんと自分の夢の、
計画のために貯めて、
使おうっていうポジティヴな人と、
「ま、これで生きれるよね」 っていう、
とりあえず現状維持の人。
二種類出てくるわけ。

これって、 俺達の頃の
「本当にモノがないpoor」と違って
「モノは揃いすぎているけどpoor」なんだね。
そこそこでいいよね、って気持ちになれちゃうんだ。

これって、根が深い問題だと思う。
契約社員や派遣社員の諸にしても、
今、大量解雇されて大変だと思う。

でもね、元をただせば、
自分が望んで契約社員になった人もいたはずなんだ。
「私、行きたいライブの時は自由に休みたいから、
正社員にはならない」って目分で選んだ人もいた。

メディアもそういう新しい働き方を「カッコイイ」って立ててた。
それが百年に一度の不況ってことになったら、
「クビにするとは何事だ」
「弱者切り捨てだ」って、
自分で選んだ人もそうじゃない人も一緒くたになっちゃって、
理由なんて度外視されて報道される。

これ、もう話が違うとこいっちゃってんじゃない? 
で、誰もそれに反対しないで
国家総動員で同じ方向に行っちゃう。
あえて言うよ。
これ、危険だと思う。

結局、一人一人のテメェが、
テメェの生きざまにプライドを持ってない、ってことなんだ。

以前、イチローさんと対談をしました。
初めて会った時
「イチローさん、会えてうれしいです」って言った。
すると、
「矢沢さん、なんでこんなふた周りも下の人間に
『さん』付けなんですか?」って言われた。

だって、世界のイチローさんじゃない。
これ、僕だけじゃなくて、当たり前の、
尊敬の念を込めた気持ち。
みんなあるんじゃないですか。

そうイチローさんに言いました。
やっぱり一芸、一発決めた人はすごい。
野球選手でもゴルファーでも、
アメリカン・ドリーム、
夢を叶えた人には拍手を送る感覚は、
もっとあっていいと思う。

そのイチローさんにしても、
一番感受性の強いときにどっかで
「野球やるんだ!」っていう瞬間、
決断の時があったんじゃないかな。

その、ピカッと光ったモノに出会えるかどうかが、大事だね。
ただ、この「モノが溢れたpoor」の時代には、
そのピカッと光るものに出会いにくくなってるかもね。

もし、自分がやりたいことに出会えたら、
腹くくってやるしかない。
それがプライドなんだ。

最近はCMで共演Lてるし、
この前の東京ドームライブでは一緒に歌ったけど、
娘のyokoは今、the generousってバンドで歌を唄ってる。

正直まだまだだけど、
「じゃあ なんでデビューをOKしたのか」
って言ったら、
OKも何も、本人が絶対やりたいって言ったから。

オレ、彼女に言いましたよ。
「お前、やめときな。もっとマトモな仕事あんだろ」って(笑)。

でもだんだんハイスクール、
大学に入って、一年二年が過ぎて、
もう方向決めなきゃいけない、
それでも本人は「歌手になりたい」とはっきり言ってました。
「だったら自分で腹くくってやれ」
娘にはそう言いました。

腹くくるってことは、
あとで「お父さーん、どうにかしてよー」 
って言うんじゃねえぞって。
そう言いましたよ。

そういう意味じゃ、
ここまで本気で
「お父さん、自分やりたいんだ」
って言えたら、その熱さは嘘じゃない。
だったら熱いものがない奴よりはいい。
そういうことなんだ。

yokoも、頑張ってる。
矢沢永吉も、
16で見つけたロックシンガーの道を、
60になっても進み続けていく。
まだまだ、道は続くんだ。

これからも、腹くくって、
プライド持っていきますよ。
みんなもそうだったら、うれしいね。
またどこかで、会いましょう。
矢沢永吉でした。