週間文春 矢沢永吉 充電 | 矢沢永吉激論ブログ

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全国矢沢永吉激論学會集団。

去年一年間はライブを一本もやらなかった。
シングルもアルバムも出さなかった。
これはロックシンガーを36年やってきた中で、
初めてのことだった。
 どうしてかっていうと、その前の年、
2007年に、自分としては一つの区切りがあったからなんです。
            
 それは、武道館での公演が100回になったこと。
「100回目か……いろいろあったな。
ものすごいスピードで走ってきたな」
って振り返ってみたら、
ちょっと思うことがあったんだ。

 矢沢は、明けても暮れてもライブをやって、
レコードを作ってきた。
全国津々浦々、 行ってないところはないというくらい、
コンサートという名のもとに足を運んだ。


 でも、その町のこと、
ホントはよく知らなかった。
ホテルにチェックインして、
会場行って、ガーンとライブやって、
夜、酒ガパガバ飲んで、もう次の町に行ってる。
だから、その町を全然知らない
 そんなことも考えて、一回止めて、
あたりをゆっくり見てみたいなということを考えた。

 止めて、何してたかって?
 まあ、なんてこたあない。
せいぜい普段会えないような友達に
会うためにサンフランシスコ行って。
でも、何するわけでもなくって、
そいつとカニ食って、酒飲んでとか。
別にスペシャルなことは何もなかった。
でも、こういった時間は無駄ではなかった。
ものすごく貴重だった。

 みなさんもそうだと思うけど、
矢沢も日々働いている時に、ずっと葛藤してました。
 オレはこのままでいいんだろうか。
 オレには音楽しかないのか。
 もっと他に何かあるんじゃないか。
 けっこうね、いろいろ考えてるわけ。
それで一旦すべてを止めて、周りを見た。
それでわかったことがあった。
まあ、こういう答にたどり着くことは、
想像してたんだけどね。

 オレは、やれるものを持っている。
 やるペきものを持っている。
 そう思った瞬間に、 「矢沢永吉」になってた。うん、なってたね。
 それで今年は、ガンガン動いてるってわけ。
 アルバムとライブ、これはもうずっとやり続けてきた。
けど、今年は二年ぶりにフェスにも出演した。

午前中のライブなんて、初めてだったね。
 フェスって、世代が二世代も三世代も違うのが集まってる。
音楽やってる若い奴らの巣みたいな所。
そこに出るわけでしょ。お客さんも、
「矢沢永吉って名前は知ってるけど本物見たことない」とか、
「矢沢の音楽を聴いたことない」って人が95%よ。
だから以前は、フェスは若者の場所で、
オレとは関係ない、と思ってた。
オレは毎年武道館で5daysやってるから、
それがオレの場所であって、フェスはオレの場所じゃねえって。
別の言い方すれば、ちょっとしょってる矢沢がいた。

 でも3年前、ロッキング・オンの渋谷陽一さんが、
「永ちゃん、矢沢の名前は知ってても
ステージを見たことがない奴らが99%ってところに、
日本のロックの元を見せてやろうよ」
って。
あの人、のせるのうまいよね(笑)。
それ言われたら、お調子者だから矢沢も
「だったらでてやるか」と、こうなった。
               
 で、バーンってやったらさ、

冗談抜きでほんと凄かった。
ぶわーって五万人くらいが総立ちになった。
もうね、がっつりおいしいところとっちゃったからね。
もう最高!終わった後に
「何でオレ、今までフェス出なかったんだけ‥」
って自分を責めました(笑)。
 反響も凄かったね。

その日のうちにメールが百通二百通だーっと来て、
内容はほとんど同じだった。
冒頭はみんな、こんな感じ。
「矢沢永吉が出るって? 
人選ミスしてるんじゃないの事務局は、と思ってました」
「矢沢永吉って歌うの? 
あの人ってCMのおじさんでしょ? 
と思って観てました」

 それがこう続くんだ。
「二曲目三曲目とかなったら目分、
気づいたらもう拳上げて、
四曲目になったら涙溢れてました。19歳」


 これ読んだときにね、
オレ、これじゃまるきしバカたれじゃないかって思った。
何をお前しょってたんだよ、
浦島太郎じゃねえかって。
嬉しさと同時に、自分の愚かさを感じた。
 音楽に国境がないように、
世代差なんてあるわけない。
10代20代が「このオッサン何者だ?」
って言うところに出ていったって
カッコよければこっちが50でも60でも奴らは総立ちになる。

 確かに矢沢の世代で、
東京ドーム規模のライブをやる
日本人ロッカーって前例がない。
欧米ではストーンズ、エアロスミス、
ガンガンやってる奴らがいるけどね。
たとえば亡くなった清志郎、58歳。早いなあ。
清志郎とは残念ながらほんとに交流なかったけど、
本人が一番、もっと歌いたかったんじゃないですか。

 とにかくオレは残り続けて、
若いファンも受け入れてくれて、
そういう時代に生きている。
だったら、矢沢がその最初の前例になりましょう。
そう思ってます。

 もう矢沢、60になるオッサンがよ、
ステージの真ん中で、最初からマイクスタンド、
ボコーンって蹴って始めるんだ。
オレ、フェスでもドームでも、
絶対ごっそりもらっちゃうよ、ごっそり。悪いけどね。
しびれるってどういうことか、教えてやるよ。



矢沢永吉