恋海 シン夢 「言葉にしないけど分かってよ」 中編 | 夜の羊の本棚

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ソーシャルゲーム”恋に落ちた海賊王” ”戦国LOVERS”の夢小説を書いています。

更新不定期。

小説らしい文章スタイルを目指しています。


言葉にしないけど分かってよ 中編






その後すぐ昼食を食べ終わり、ハヤテとトワは船内掃除を言いつけられて階下へと降りて行った。ハヤテが、夕飯抜きだけは勘弁してくれと泣きついてきたので、ナギが掃除で大目に見てやることにしたのだ。
シンとソウシはそれぞれコーヒーとお茶を飲んでくつろいでいる。騒がしいハヤテたちがいなくなったとたんに、食堂はのんびりとした空気に変わった。

だがシンはというと、内心まだ先ほどのことでイライラとしていた。
はたから見れば、健気なセラがシンのわがままにいつも振り回されているように見えるらしいのだが、実際は逆だろうとシンは思う。普段冷静沈着で並大抵のことでは動揺しないシンも、セラのことでは自分の心が全くコントロールできないのだ。愛しいと思う気持ちは大切にしたいが、それと同じくらいのこのいらだちをどう処理していいのか、ほとほと困る。これしきの事で感情の高ぶるままに怒り散らすのは、シンのプライドが許さない。
男しての器の大きさを試されているようで、面白くない。

そんなシンの内情を知ってか知らずか、向かいでお茶を飲んでいたソウシがシンを見て、ふふ、と笑いをこぼした。

「・・・・なんですか、ドクター」

「いや、シンも大変だなぁと思ってね」

その言葉を聞いて舌打ちしたい気分になったが、ソウシ相手にそれは失礼だろうと思いとどまる。変わりに、短いため息が出た。

そして直後、下からハヤテとセラの叫び声が聞こえてきた。

「・・・っ、あいつ・・・!」

本当に、心の休まる時がない!
そう思いつつ聞くなりすぐに階下に向かうシンを見て、ソウシはほほえましそうに、もう一度小さく笑い声を洩らした。 







バスルームで体を洗いながらセラは、シンの言うとおりにして良かった、と思っていた。確かに濡れた衣服の感触は、気持ちのいいものではない。毎日繰り返される争奪戦だが、こんなことは初めてだなぁと思う。そういえば隣にいたシンが全く濡れていないのは、ちゃんと体を引いて避けたんだと気付くと、自分はなんてどんくさいんだろうとも思う。ハヤテは夕食抜きと言われていたが、大丈夫だろうか。

そんなことを何となく考えながら洗い終わり、タオルを取ろうと伸ばした手がそのまま止まった。いつもの場所に、タオルがない。

「あれ?」

そしてもっと重要なことに気がついた。なんと、着替えも持ってきていなかった。
濡れた服が気持ち悪くて、服をとりに行くことをすっかり忘れていたのだ―――。

(どうしよう!?)

とりあえず、さっきスープを拭いたタオルを手に取ったが、どこも汚れていて使えそうにない。小さいフェイスタオルなので、体を隠すこともできない。
しょうがないので濡れたまま、無事だった下着をつける。この際さっきまで来ていた服をもう一度着るしか選択肢はないようだが、せっかく洗ったところなのにまたスープのかかった服を着るのはためらわれた。
それに、バスルームからシンの部屋までは遠くない。急いで駆け込めば大丈夫なように思われた。

「大丈夫、大丈夫・・・」

そう自分に言いきかせ心を決めると、ドキドキしながらバスルームの戸をそっと開けた。









「・・・・え?」

「あ・・・・」

お互い顔を見合わせて、一瞬の間があく。そして直後

「きゃああ! ごご、ごめんなさい!!」

「うわぁ、わりい!!ってか、なんでオレが謝ってんだ!?」

二人同時に叫ぶと、セラは急いでバスルームの戸を閉め、ハヤテは赤くなった顔をセラとは違う方向へそむけた。

「え?なんですかハヤテさん?」

二人の叫び声に、モップにバケツを下げたトワが小走りにやってくる。

「セラのやつが、服着ないでバスルームから出てきて・・・」

「ええ!? 服を着ないで!?」

「ばっ、声がでけぇ!」

そう押し殺した声で言ってトワの口をふさぐが、今更だ。
絶対に誰かが様子を見に下に降りてくると思ったハヤテの視界に現れたのは、今一番来てほしくないシンだった。

「シ、シン、なんだよ?」

「なんだはこっちのセリフだ。お前ら今度はなにをやらかした?」

「い、いや? 別に何も・・・なぁ、トワ」

「そ、そうですよ僕たちなーんにも!」

明らかに挙動不審な二人が、セラのいるバスルームの前にいるのも気になる。この二人に聞くよりセラに聞いた方が早いと判断したシンは、バスルームに向かって声をかけた。

「おい、セラ。何があった?」

「な、何でもないです!」

中からくぐもったセラの返事が聞こえた。
声色が、何でもないという風ではない。

「・・・お前、俺に隠し事をするとはいい度胸だな?とにかく開けるぞ―――」

「だ、ダメです!入らないでください!」

「・・・・何を隠してる?」

イライラとシンが尋ねる。
待ってられるかとドアノブをつかんだが、向こうからセラが必死に押さえつけているようだ。

「あの、まだ服を着ていないので・・・!」

「じゃあさっさと着ろ。待っててやるから」

「それが、その・・・・服を、忘れました・・・・」

セラのこの発言で、シンは一瞬で何が起きたのか理解した。
そして先ほどの怒りが更に膨れ上がるのを感じる。

「おまえは・・・・!」


力任せにノブを押してドアを開ける。もともとセラなんかが押さえたところで、シンの力にかなうはずがない。


「きゃ・・・!し、シンさん・・・!!」

恐い顔をしたシンがいきなり入ってきたかと思うと、後ろ手にドアを閉めながらそのままバスタブまで追いつめられる。迫ってくるシンに、背中に当たる浴槽の縁をつかみ仰け反って何とか距離をあけようとするが、無駄なあがきだった。射るような視線が怖くてセラは顔をうつむかせたが、シンの手に顎をすくわれて上向かされたかと思うと、そのまま口をふさがれる。またも逃げようとするセラの後頭部にシンの手が当てられ、逃げられないように固定されてしまった。

「・・・ぅ、ん・・・・!」

口の中に差し入れられた舌にぞくぞくしたものが背中をかげ上がり、何も考えられなくなる。
シンが顔を離すと、口を押さえてそのままずるずると床にへたりこんだ。


「お前、どうして俺が・・・」

こんなことするのか分かってるのか、とシンが言おうとした時、うつむいたセラの顔からぱたぱたと音を立てて涙が落ちた。

「ごめ、なさい・・・!違うんですこれは!」

必死に涙をぬぐうがなかなか止まってくれず焦るセラを見て、シンの中の先ほどまでの怒りがどんどん引いて行く。

そして改めて今のセラの状況を見てみると、服も着ずにシンに追い詰められ、わけもわからず怒りをぶつけられて涙を流しているのだ。
一気に罪悪感がシンを襲った。


「・・・・・・」


「・・・・シン、さん、どこに行くんですか?」

そのまま黙って出て行こうとするシンを、今度はセラが引きとめた。振り向いて見てみると、自分の顔を見たセラが泣きながら息を飲むのがわかった。

「しん、さん・・・?

「・・・・タオルと服をとってくるだけだ。おとなしく待ってろ」

そう言うとシンは、静かにバスルームを後にした。










お、おかしいな・・・・終らなかったorz
次の後編で最後です、ほんとです(汗
お決まりパターンですみませぬ。