恋海 ソウシ夢 「わたしの知らない桜」 | 夜の羊の本棚

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ソーシャルゲーム”恋に落ちた海賊王” ”戦国LOVERS”の夢小説を書いています。

更新不定期。

小説らしい文章スタイルを目指しています。

この話は、藤田麻衣子さんの歌う”横顔~私の知らない桜~”をもとにイメージして書いた、ソウシとリア、カイトの過去話です。
捏造設定がたくさんありますので、それでも大丈夫だという方のみお進みください。



長いので、連載で何回かに分けて書きます。
勝手ながら、後ほど既にup済みのものもどこかしら修正が入るかもしれません、ご了承くださいm(_ _)m










わたしの知らない桜








前にも話したけれど、彼女は本当に体が弱くてね。
だからその春は、暖かくなってみんなが外で遊んでいるときにも、ベッドで寝ていないといけなくて。普段は穏やかな子なんだけれど気が弱いわけじゃないから、そんな自分がくやしくてしょうがないのに、泣いたり弱音を吐いたりすることもできないんだ。だからそんな時は、私たちが彼女に会いに、よくお見舞いに行っていたんだ――――







しずかな木漏れ日の差し込む部屋の中で、リアは窓の外を眺めて溜息をついた。
もう春になるというのに、どうして自分だけこんな薄暗い部屋の中でじっとしていなければいけないのだろう。
本来なら、この季節は体の弱いリアにとって、一年で一番楽しい季節になっているはずだった。それがどうしたことか、この冬こじらせた風邪がまだ治らず、もう暖かくなったというのにまだ外に出られないでいる。冬は寒すぎるため外出できず、夏は夏で熱すぎて長時間外に出ていることができない。ようやく待ちに待った春だというのにこんな状態では、窓から見える暖かな日差しも、聞こえてくる子供たちの楽しげな声も、自分をみじめにさせる材料にすぎない。

どんどん落ち込んで暗くなっていく思考を、これではいけないと追い払うため目をつぶった時、外から自分を呼ぶ声がした。

「リア」

「・・・ソウシ!それに、カイトも!」

目を開けると、窓越しにこちらを見ている幼馴染の姿が飛び込んできた。

「そんなに不貞腐れて、顔に思い切り“つまらない”って書いてるぞ」
「無理もないよ、この冬からずっと外に出れてないんだろう?」

どこかからかうような口調のカイトに、心配そうなソウシの声。

「そうなの、こんなにいい天気なのに・・・・。もう風邪だって、ほとんど治ってるのよ?いいかげん、外に出ても大丈夫だと思わない?」

開口一番にそう不満を漏らしたリアに、ソウシがそうだよね、とうなずく。

「リアは春を楽しみにしてたからね・・・・俺からも、君のお母さんに頼んでみるよ。ちょっと待ってて」

そう言って早くも家の入口にかけ出そうとするソウシを、カイトがちょっと待ったと引き止める。

「医者はまだ、外に出ては危険だと言うんだろう?だったらダメだ、本当に良くなるまでベッドでおとなしくしているのがいい・・・・・・、それに、もうほとんど治りかけているんだろ?だったら、あとちょっとの辛抱じゃないか」

あまりにリアが落ち込んだ顔をするので、最後にそうつけたして、彼女を励ます。

「そう、だよね・・・・。ごめんねリア、力になれなくて・・・・」

「ううん、いいのよ。カイトの言うとおりよね。本当はわかってるんだけれど、ちょっとわがまま言ってみたくなっちゃって。・・・・ありがとう、二人とも」

そう言ってほほ笑んで見せるリアを見て、カイトはソウシにさっそくお説教をする。

「だいたいソウシ、お前も医者を目指すなら、目先の感情だけで突っ走ったらだめだって、いつも言っているだろう」

「う・・・・、それは、わかってるんだけど・・・・」

目線を泳がせて少し落ち込んで言うソウシに、リアがくすりと笑う。
落ち着いているが案外突っ走ることの多いソウシをたしなめるのは、カイトの役目なのだ。
本当に、兄弟みたいな2人だといつも思う。

「ね、二人とも。今時間ある? 良かったら今日も何か面白い話、聞かせてほしいな」

「そうそう、リアが退屈してるんじゃないかなって思って、二人で遊びに来たんだよ。それで、今日はね。今朝買い物に行った時だったんだけれど――――」


とたんに嬉々として話し始めるソウシに、一歩離れたところから聞き役に徹するカイト。見慣れたいつもの光景、しかし彼らのおかげで、自分の世界は色を取り戻すのだと、リアはいつも思う。






つづく







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