IT技術の進歩により、従来は人間にしかできなかった様々な「おもてなし」がITで代替できるようになりつつあるという話。「視覚・嗅覚・触覚のマーケティングへの応用」「音声認識技術」「3D技術の応用」「AR(拡張現実)」「モーションポートレート」「レコメンドエンジン」「顧客経験モニタリング」「エスノグラフィー」「ペルソナ活用」等々の最新事例がバランス良く配置されており、CRM系の仕事に携わっている方には、とても有益な本です。逆に言うと、ターゲットは狭いです。
紀伊国屋のECサイトの事例が興味深かった。後発でガリバーのアマゾンにどう対抗していくか?リアル店舗での価値である「思いがけない本との出会い」の再現や、シロウトの書評(アマゾン)に対するプロの書評やプロからのレコメンドによる差別化。同時に、劣っている点(送料の高さ等)はきっちりと競合にミートさせていくことで、独自ポジションの確立に成功したという事例。
最後に、本書中で引用されているドナルド・A・ノーマン(「エモーショナル・デザイン」の著者)の言葉が、IT技術の活用の云々以前に、マーケティングに携わる者が認識しておくべき重要なこと思いますので、シェアさせて頂きます。
『「はっきりとわかっていないニーズ」をどのように発見すればよいのだろうか。質問、フォーカスグループ、アンケートでないことは確かである。ほとんどの人は真のニーズに気づいていないから、それを見つけるには自然な状況で注意深く観察する必要がある』
「おもてなし」のIT革命―エクスペリエンス・テクノロジーがビジネスを変える/田中 達雄
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