【書評】ソーシャルメディア進化論 武田隆 著 | ラテン系企画マンの知恵袋

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ソーシャルメディア進化論/武田隆
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読了致しました。 想像以上に中身が濃く、読了に時間がかかってしまいました。そして、歴史に残る素晴らしい本だと思います。私的には、「キュレーションの時代」「次世代マーケティングリサーチ」と並ぶ本年のベスト3です。


「最もインターネットらしいことをやろう」という志。ソーシャルメディア時代において、企業は悪者ではなく、情報発信/社会貢献を行いたい消費者が社会と繋がるハブになれるという着眼点。大いに共感しました。

そして、サポーターによるネットワークへの波及効果や「顧客関係性マップ」を足掛かりに、コミュニティーの質的側面に着目し、顧客獲得/育成(販促)とインサイト抽出(リサーチ)という成果を同時に提供できるマーケティング装置としての企業コミュニティーを作りあげていく過程は、実にスリリングで一気に読み切りました。極貧の時には、おにぎりよりみたらし団子の方が重宝するという話も、リアリティ抜群でした(笑)。

また、会員/サポーターをリサーチに活用するという側面だけでなく、リサーチに参画すること自体が顧客育成⇒コミュニティーの活性化に繋がるという企業コミュニティーの生態系/ダイナミズムにも大いなる示唆を得ました。

「サポーター」が会員/消費者のハブとなり、企業の担当者が会社のハブとなり、相互に対話を通じた関係構築を継続的に行っていくことで、スキル/ノウハウの蓄積とロイヤリティーの形成がなされていき、消費者と企業が相互信頼の元、ダイナミック繋がっていく。そうした、企業コミュニティーというモデルは、次世代マーケティングの主流になるという強い確信を持つに至りました。

もちろん、私が携わっているFMCGの世界では、従来型のマスマーケティングが、相対的に有効に機能しており、短期的に大きく企業コミュニティーへ予算シフトをするのはハードルが高いのですが、成果が出るまでに時間がかかる、成果が出始めると等比級数的に恩恵にあずかれるという同モデルの特徴を考えた際、着手しないという判断は、将来、取り返しのつかないことになるという思いを強くしました。

武田さんが全身全霊を込めて作り上げた企業コミュニティという次世代モデル。ありがちな、成功事例を再構築した企業宣伝本とは異なり、正解に辿りつくまでの紆余曲折を包み隠すことなく、すべてを開陳した貴重な一冊。正直、ここまで書いてしまって大丈夫か?と心配になってしまうくらいです。マーケティングや広告・コミュニケーションに携わる方にとって必読の1冊として推薦させて頂きます。