【書評】「どう伝わったら買いたくなるか」 藤田康人 著 | ラテン系企画マンの知恵袋

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(なお、本ブログは個人の責任で書いており、所属企業とは無関係です)

ずいぶん前に読了していたのですが、掲載が遅くなりました。
インテグレート社長の藤田康人氏の最新刊です。

題名にある通り、企業が言いたいことを一方的に伝えてもダメで、
生活者のインサイトを丁寧に分析し、生活者が知りたいと思っていることを
最適な方法で伝える必要があるという内容です。

IMC型の大型プロジェクトの成功事例として、各所で話題になっている
ワコールの「下着によるエイジングケア」の事例がフルスペックで掲載されています。

企業が長年の研究の積み重ねにより蓄積している膨大なデータ。
生活者からしたら、物凄く価値のある情報であるにも関わらず、
企業自身はそれに気づいていない。

そこに、ソーシャルインサイトやメディアインサイトの視点から、
情報開発を行い、加齢による体型変化に対して最適な下着を選ぶことで、
美しさは維持できるという「下着によるエイジングケア」
というコンセプトとして提案した。

企業内部の情報は、専門的過ぎて理解しづらいので、わかりやすい表現や
図解で訴求するという基本的な工夫に加え、興味を持ってもらう仕掛けとして、
「美STORY」とタイアップした「国民的美魔女コンテスト」等を展開していった。

最終的に60億円相当の広告効果を生み出し、
期間中の当該商品の売上高対前年207%、
ブラジャー全体(カテゴリーとしての)も109%と
売上拡大に大きく貢献した。

もちろん、ワコールがブラジャーのトップ企業で、
需要創造の恩恵が受けられる立場にあったこと。
また、競争優位を生み出す技術や研究の蓄積が
そもそもあったことも重要で、すべての企業や商品に
この手法がしのまま展開できる訳ではない。

その中で、とても参考になったのが、「このコンセプトでいける!」
と確証を持つに至った様々な検証過程の中で、現場で日々、
顧客とのコミュニケーションをしているビューティアドバイザーから
「こんなキャンペーン待ってました」と大きな支持を得たという話。

日々、様々なお客様と接する中で、経験値から「下着によるエイジングケア」
という考え方が有効であろうことは感覚的にわかっていたが、
説得力のある理論としてお客様に提示することができなかった。
だからこそ、このキャンペーンの話を聞いた際、
「待ってました」となったという構造。

多くの場合、課題解決のヒントは現場にたくさんあるのだけれども、
企業自身、それも本社や経営層といった現場に遠い人が発見するのは
困難であるということ。

そこに、ソーシャルインサイトやメディアインサイトに精通した、
PR会社/マーケティング会社の活躍の機会が存在する。

本当は、外部の会社を頼らずとも、自社ですべてできるのが理想的
ではありますが、まずは、外部の会社の力を借りつつ、
成功事例を作り上げていくというところから始めるのが現実的かと。

そんな示唆を与えてくれる1冊です。

蛇足ですが、当社の「クノールカップスープ つけぱん・ひたぱんキャンペーン」
も取り上げて頂いております。


どう伝わったら、買いたくなるか/藤田康人

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