日経ビジネスの特集「事業仕掛人」に触発されて | ラテン系企画マンの知恵袋

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(なお、本ブログは個人の責任で書いており、所属企業とは無関係です)

だいぶ時間が経ってしまいましたが、日経ビジネス(6/27号)のカバーストーリー「事業仕掛人」に関する備忘録です。

『総合力が求められる時代に、社内外の人材をフル活用し、企画を練り、形にして世に送り出す「事業仕掛人」。人材や技術などを結集して、組織のあり方を問い直す。事業を創る社員が増えれば、組織はまだまだ伸びる』

■アシックスで初となるランニング直営店を3ヶ月で立ち上げた池田氏の話。「ストアの主役は商品ではなく、あくまでランニングを楽しむ顧客」とモノではなく体験価値を中心に据え成功に導いた。

■格安航空会社(LCC)実現の際に逢えてANAを飛び出して、背水の陣でピーチ・アビエーションを立ち上げた井上氏の話。「同じLLCの経営者じゃないか」と先行する世界のLLC経営者が成功のコツや失敗談を包み隠さず話してくれた。

■NTT西日本で振り込め詐欺を未然に防ぐシステムを提案する際、上層部を説得するのに感情移入しやすいイメージビデオを作成し、共感を得ることで支持を得た木村氏。「社内で共感を呼べないものは、お客様からも評価されない」

そして、本特集のクライマックスはディズニーランドの事例。『規則よりも理念で導く、自分で考える組織』。同社にはマニュアルはなく、SCSEと呼ばれる理念を渡されるだけ。

・Safety(安全) ・Courtesy(礼儀正しさ) ・Show(ショー) ・Efficiency(効率)

これらの理念に沿っている限り、キャスト(従業員)は自由に発想して行動して良いと大幅に権限委譲している為、キャストは自覚と使命感を持って常に自分ができる最善なことを考えながら行動することが習慣づけられている。

有名な話が、園内で清掃しているキャストにあなたの仕事はと聞くと「夢のかけらを集めています」と。

だからこそ、3・11のような不測の事態に対しても、柔軟で適切な対応を取ることができた。

翻って、日本の多くの企業はというと、何か問題が起こると、その都度、マニュアルだ規則だがどんどん増え、従業員は事務作業に忙殺され、主体性を失い、余計なことをやって怒られるよりも言われた通りの業務をこなし無難に日々過ごしていこうとなりがち。

みなさんの周りにも、そういうこと、起きていませんか?

ディズニーのように、「立ち返る場所」がきちんと定められていて(呼び名は理念でクレドでも何でも良い)、従業員を心から信頼し、権限委譲を徹底する。

もちろん、失敗も起きるであろうけれど、やらされ仕事ではなく、自分で考えて実行したことであれば、責任転嫁をするのではなく、自ら問題解決に動くのが人間である、と私は信じています。そして、その失敗をリカバーする過程で力がつく。自分自身の過去を振り返ってみても、まさに、そう思います。

更に、以前のように、経験と正解が比例していた時代と異なり、誰も正解を知らない世界、誰かが正解を見つけ出さなければならない世界において、権力者がすべてを握る組織構造は通用しないのは明らか。成功確率を上げる為にも、より末端に権限委譲すべきであると思う。誰が正解を見つけ出すかは、事前にはわからない訳ですから。

Webテクノロジーの様に日々進化する世界に関しては、尚更。自分が理解できないという理由で片っ端から判断を保留する企業と、わからないからこそ、わかる人間に権限を委譲し、新しいものにどんどんチャレンジし、失敗も含めノウハウを貯めこむ企業との間には、取り返しのつかない差がついてしまうと思います。

私自身、常日頃からこの様な問題意識を持っていただけに、この「事業仕掛人」特集は大変興味深く読みました。事業仕掛人の候補人材に場を与え、彼ら/彼女らが自由自在に動き回れる環境を整備することがマネジメントの仕事。本特集で成功事例として取り上げられている企業に共通すること。

本特集の最後にある「組織をいくら変えてもダメ。市場の創造は個人の発想や行動なくしてはできない。自由に動けたり、情報交換できる枠組みが大切だ。それがないと優秀な人材を引き止められない。理念を旗印に個人と組織の目標が一致する。まさに、日本企業に総合力が問われる時代だ」には、心から賛同します。