「けいおん!」という大人気の傑作アニメがあります。
以前このブログでも学校のモデルをご紹介したことがあるのですが、
ヴォーリズ設計「けいおん!」の学校
もともと四コマだった漫画をあの京都アニメーションのもてる力を全力投入して作り上げたアニメです。
高校生になったばかりの女の子たちが、
女子高内で廃部寸前の「軽音部」をいかに立て直すか、盛り上げるかを通じて起こる友情や青春模様を、
まったりと追っかけたところのリアリティが、うけているんだと思います。
いわゆる高校生主人公漫画でありがちな、
泡沫高校が熱血監督のもと甲子園へ出るぞ!とか、
天才テニスプレイヤーとして開眼とか、
ライバル校との熾烈なバトルとか、
そんな突っ張ったものはまるで無い。
にもかかわらず、意外とのめり込ませる緊張感。
特に、ギターを弾いたこともない主人公が、仲間たちに連れられて楽器店におそるおそるエレキギターを買いにいくシーンなどは、
怖そうな、むちゃくちゃ楽器が上手そうな店員のお兄さんがいる楽器店に、グレコの黒いレスポールを買いにいった自分のことなども思い出してかなり胸キュンです。
結果、唯ちゃんはいきなり初心者でギブソンのレスポール買うんですがね。
自分ではなんのとりえもないと考えていた主人公の女子高生平沢唯ちゃんが、
間違って入部してしまった「軽音部」での仲間たちとの成長模様が、ほほえましい。
視聴者は自分たちのの高校生時代を思い出し共感できる。
そんなストーリーなんです。
その物語の舞台となる「桜ヶ丘高校」が、ヴォーリズ設計の豊郷小学校であり、
教室内のシーンであるとか、階段や廊下や講堂などの大正モダン建築の細やかな意匠によって、気品のある、誇らしげな特別の学校の雰囲気をかもしだすことに成功しています。
一方、このアニメでは各登場人物の日常風景についても結構リアルに追っかけておりまして、
特に主人公平沢唯ちゃんの自宅については、
そのぐうたらでさっぱりした性格描写のためもあって、
友人たちが遊びに来たり、試験勉強そっちのけでギターの初級を練習したりするシーンが、これまた見もののひとつなんですね。
そのためか、平沢唯ちゃんの家の間取りについてどうなっているのか、
いろんな方々が検証されているみたいです。
この家は、専門家から見てもちょっと不思議な変なところと、
意外とよく考えてあるぞと感心するところがあるのですよ。
一応、私も建築家のはしくれとして、漫画アニメファンとして、
簡単に検討してみました。
その結果の平面図はこれです。
この家を検討していると、いくつか問題点にぶち当たるんですよね。
まず、外観を見て気づくのが、玄関部分を納めている突き出しのところが、
玄関廊下だけの幅としては広すぎる、しかしキッチンや部屋とするには細過ぎることなんです。
この細い形状とガレージの存在から安易にこの建物が鉄骨造ではないか、、
鉄骨プレファブメーカーの商品ではないか、、
と考えがちですが、この玄関前の外側控え壁を見る限り、これは木造住宅でしょう。
一部で言われているダイワハウスのジーボじゃないですね。
どういうことかというと、玄関前にこのような洞窟状の壁コーナーを機能上設ける必要はありません。
むしろすっきり抜けていたいと考えるのが普通ですよね。鉄骨なら簡単です。
しかし、この壁がある。ということは構造上やむを得なかったなんだと思います。
木造の場合、この建物の角部分をキチンと60センチ以上固めて取れるかどうかが、
構造耐力上非常に重要な要素なんです。
なので、ガレージの幅も1間半2730としてみました。
この数字はなんで決まるの?と思われる方も多いと思いますが、
日本の木造住宅のモジュールは3尺(約910ミリ)を基準に出来上がっており、
ベニヤ板などの材料も910ミリなので、その方が都合がいいのです。
この寸法体系を外すと部材の無駄も出てコストに響くんですよ。
そして、ちょと奇妙なのがこの屋根周りとバルコニーと壁の取り合い。
外観デザインとしての特徴はこの細幅の突き出し部分が瓦状の屋根なんです。
しかも2階部分に同様のデザインで庇が出ていながら、
正面のファサード壁(顔になる部分)は上下まっすぐなんですよね。
このあたりが、現代のデザイナー住宅と少し趣が異なる興味深い点です。
最近の建売住宅とかデザイナー住宅では、きっと瓦調でなくガルバリウム鋼板縦はぜ葺きとするでしょう。
次に、ガレージ部分の屋根が2階バルコニーと化しているところなのですが、
奥行き的には2階と1階を合わせたかったんです。
しかし、玄関内部シーンにおける廊下に設置された縦長窓の存在を考慮すると、
もう少し一階では廊下がガレージに面する部分が長いようなんです。
ということで、一階と2階でガレージ奥の壁とバルコニーの切れ目は、
一致させることができませんでした。
本当はここの上下階の壁が一致している方が耐力構成上は有利なんです。
2階の間取りについてなんですが、リビング15畳の奥の壁に扉がひとつだけあります。
ここから個室にいくことは考えづらいのと、お風呂などの水周りを1階ではちょっと不便ですし、
3階にもっていくのもコストアップですから、
まあ、順当に2階にお風呂であろうと。
そして、そのまま長方形と考えてしまうと、この水周り部分は広すぎたんです。
ここまで広くなるとおかしいな。と
この広さでトイレを独立的に配置しないで洗面所内部に入れるのはちょとナンセンスかなと。もうひとつ扉があればトイレ&洗面扉の可能性も高いんですけどね。
そこで、この奥の水周りについては放っておいて、三階を検証しました。
階段からの入り方で、唯ちゃんの部屋は容易に推察できたのですが、
妹の憂ちゃんの部屋が、どういう風に構成されるべきか少し悩みました。
そのまま並べると妹の部屋が大きくなりすぎるし、、
再度アニメを見て検証したところ、重要な手がかりがあったんです。
それは、憂ちゃんの部屋には窓が90度展開してついていたことなんです。
これは、何を意味するかというと「角部屋」だということです。
表から見える窓はこの部屋内部にはついていないですし、
階段を上ってから角部屋になるということは、建物の奥角がエグれているということです。
なるほど、そうなのか。
それであるなら2階の水周りの無意味な巨大化も防げるし、ということで
3階、2階と解決して一応このような感じになっています。
キッチン後ろの不思議な扉もおそらくトイレで間違いないでしょう。
結果として建物全体の面積も50坪前後の大きさにまとまりましたので、
まあ、広めの一般的な住宅と考えていいでしょう。
もっと大きい家かと思っていました。
この道路からの作業性のよさや、水道引き込みや下水が完備されているとして、
敷地の前面を空けてあって、重機の搬入や資材の保管がやりやすいとして、
木造三階建てで、地盤状況が良いとするなら、
ズバリ平沢家は2980万円くらいで建たったのではないでしょうか。
そのときの仕様がどのようであったか、引き続き検証してみたいと思います。
けいおん!平沢家における建築的考察 2
けいおん!平沢家における建築的考察 3
以前このブログでも学校のモデルをご紹介したことがあるのですが、
ヴォーリズ設計「けいおん!」の学校
もともと四コマだった漫画をあの京都アニメーションのもてる力を全力投入して作り上げたアニメです。
高校生になったばかりの女の子たちが、
女子高内で廃部寸前の「軽音部」をいかに立て直すか、盛り上げるかを通じて起こる友情や青春模様を、
まったりと追っかけたところのリアリティが、うけているんだと思います。
いわゆる高校生主人公漫画でありがちな、
泡沫高校が熱血監督のもと甲子園へ出るぞ!とか、
天才テニスプレイヤーとして開眼とか、
ライバル校との熾烈なバトルとか、
そんな突っ張ったものはまるで無い。
にもかかわらず、意外とのめり込ませる緊張感。
特に、ギターを弾いたこともない主人公が、仲間たちに連れられて楽器店におそるおそるエレキギターを買いにいくシーンなどは、
怖そうな、むちゃくちゃ楽器が上手そうな店員のお兄さんがいる楽器店に、グレコの黒いレスポールを買いにいった自分のことなども思い出してかなり胸キュンです。
結果、唯ちゃんはいきなり初心者でギブソンのレスポール買うんですがね。
自分ではなんのとりえもないと考えていた主人公の女子高生平沢唯ちゃんが、
間違って入部してしまった「軽音部」での仲間たちとの成長模様が、ほほえましい。
視聴者は自分たちのの高校生時代を思い出し共感できる。
そんなストーリーなんです。
その物語の舞台となる「桜ヶ丘高校」が、ヴォーリズ設計の豊郷小学校であり、
教室内のシーンであるとか、階段や廊下や講堂などの大正モダン建築の細やかな意匠によって、気品のある、誇らしげな特別の学校の雰囲気をかもしだすことに成功しています。
一方、このアニメでは各登場人物の日常風景についても結構リアルに追っかけておりまして、
特に主人公平沢唯ちゃんの自宅については、
そのぐうたらでさっぱりした性格描写のためもあって、
友人たちが遊びに来たり、試験勉強そっちのけでギターの初級を練習したりするシーンが、これまた見もののひとつなんですね。
そのためか、平沢唯ちゃんの家の間取りについてどうなっているのか、
いろんな方々が検証されているみたいです。
この家は、専門家から見てもちょっと不思議な変なところと、
意外とよく考えてあるぞと感心するところがあるのですよ。
一応、私も建築家のはしくれとして、漫画アニメファンとして、
簡単に検討してみました。
その結果の平面図はこれです。
この家を検討していると、いくつか問題点にぶち当たるんですよね。
まず、外観を見て気づくのが、玄関部分を納めている突き出しのところが、
玄関廊下だけの幅としては広すぎる、しかしキッチンや部屋とするには細過ぎることなんです。
この細い形状とガレージの存在から安易にこの建物が鉄骨造ではないか、、
鉄骨プレファブメーカーの商品ではないか、、
と考えがちですが、この玄関前の外側控え壁を見る限り、これは木造住宅でしょう。
一部で言われているダイワハウスのジーボじゃないですね。
どういうことかというと、玄関前にこのような洞窟状の壁コーナーを機能上設ける必要はありません。
むしろすっきり抜けていたいと考えるのが普通ですよね。鉄骨なら簡単です。
しかし、この壁がある。ということは構造上やむを得なかったなんだと思います。
木造の場合、この建物の角部分をキチンと60センチ以上固めて取れるかどうかが、
構造耐力上非常に重要な要素なんです。
なので、ガレージの幅も1間半2730としてみました。
この数字はなんで決まるの?と思われる方も多いと思いますが、
日本の木造住宅のモジュールは3尺(約910ミリ)を基準に出来上がっており、
ベニヤ板などの材料も910ミリなので、その方が都合がいいのです。
この寸法体系を外すと部材の無駄も出てコストに響くんですよ。
そして、ちょと奇妙なのがこの屋根周りとバルコニーと壁の取り合い。
外観デザインとしての特徴はこの細幅の突き出し部分が瓦状の屋根なんです。
しかも2階部分に同様のデザインで庇が出ていながら、
正面のファサード壁(顔になる部分)は上下まっすぐなんですよね。
このあたりが、現代のデザイナー住宅と少し趣が異なる興味深い点です。
最近の建売住宅とかデザイナー住宅では、きっと瓦調でなくガルバリウム鋼板縦はぜ葺きとするでしょう。
次に、ガレージ部分の屋根が2階バルコニーと化しているところなのですが、
奥行き的には2階と1階を合わせたかったんです。
しかし、玄関内部シーンにおける廊下に設置された縦長窓の存在を考慮すると、
もう少し一階では廊下がガレージに面する部分が長いようなんです。
ということで、一階と2階でガレージ奥の壁とバルコニーの切れ目は、
一致させることができませんでした。
本当はここの上下階の壁が一致している方が耐力構成上は有利なんです。
2階の間取りについてなんですが、リビング15畳の奥の壁に扉がひとつだけあります。
ここから個室にいくことは考えづらいのと、お風呂などの水周りを1階ではちょっと不便ですし、
3階にもっていくのもコストアップですから、
まあ、順当に2階にお風呂であろうと。
そして、そのまま長方形と考えてしまうと、この水周り部分は広すぎたんです。
ここまで広くなるとおかしいな。と
この広さでトイレを独立的に配置しないで洗面所内部に入れるのはちょとナンセンスかなと。もうひとつ扉があればトイレ&洗面扉の可能性も高いんですけどね。
そこで、この奥の水周りについては放っておいて、三階を検証しました。
階段からの入り方で、唯ちゃんの部屋は容易に推察できたのですが、
妹の憂ちゃんの部屋が、どういう風に構成されるべきか少し悩みました。
そのまま並べると妹の部屋が大きくなりすぎるし、、
再度アニメを見て検証したところ、重要な手がかりがあったんです。
それは、憂ちゃんの部屋には窓が90度展開してついていたことなんです。
これは、何を意味するかというと「角部屋」だということです。
表から見える窓はこの部屋内部にはついていないですし、
階段を上ってから角部屋になるということは、建物の奥角がエグれているということです。
なるほど、そうなのか。
それであるなら2階の水周りの無意味な巨大化も防げるし、ということで
3階、2階と解決して一応このような感じになっています。
キッチン後ろの不思議な扉もおそらくトイレで間違いないでしょう。
結果として建物全体の面積も50坪前後の大きさにまとまりましたので、
まあ、広めの一般的な住宅と考えていいでしょう。
もっと大きい家かと思っていました。
この道路からの作業性のよさや、水道引き込みや下水が完備されているとして、
敷地の前面を空けてあって、重機の搬入や資材の保管がやりやすいとして、
木造三階建てで、地盤状況が良いとするなら、
ズバリ平沢家は2980万円くらいで建たったのではないでしょうか。
そのときの仕様がどのようであったか、引き続き検証してみたいと思います。
けいおん!平沢家における建築的考察 2
けいおん!平沢家における建築的考察 3