ものづくりエンジニアのたまり場ブログ・・・【mono-B-LOGue】 -5ページ目

【機械設計】回転機械の大きさはトルクで決まる

歯車装置というのは一般的に、自社で設計するよりも仕様書や型式で購入するものという感覚があると思います。
引合を頂いた際、先方も色々なパターンを検討されるので、今の大きさでどれくらいまで使えるか、というような質問も時々あります。

これまでの経験で、これだけは知っておくと問い合わせる手間が減るのに、という基本的なポイントがあります。

それは、「回転機械の大きさはトルクで決まる」ということです。

※トルクって何ぞや?という方はWikiを参照してください(トルク)。

機械系技術者でトルクを知らないということは無いと思いますし、当たり前のことを何でわざわざ、と疑問に思う方もおられるとは思います。
しかし、意外とこれが意味するところを自分で使えるところまで落とし込むのに経験がいるようです。

エンジンなどの原動機の性能は出力(kWやPS)と回転数で示されることが多いと思います。
実際に設計する場合、定格点の出力と回転数からトルクを求め、そのトルクから軸や軸受等の仕様を決めているはずです。なので、当然トルクで軸の太さや軸受の寸法・仕様が決まることを理解しているはずです。

ここまでは解り易いと思います。

そこで一つ質問です。
ある出力を出している原動機が定格運転中、何らかの理由で急激に回転数が下がるとどうなるか?



急激にトルクが上がるという答えが浮かんだ方。

正解です。

トルクは「出力÷回転数」に比例しますので回転数が下がった分、ググっとトルクが増大します。



が、実際に機器を設計している技術者の回答としては不十分だと思っています。

急激にトルクが上がることで損傷が発生する可能性がある、という所まで瞬間的に理解できるかどうかで、感覚としてトルクを理解しているかどうかの分岐点があると思います。


発注者側の立場で、例えば定格点の出力と回転数のみ仕様を与えて部品や機器を購入したとします。
ところが実際の使用条件では、定格点でのトルク以上のトルクが発生する運転条件が存在するはずです。

受注をもらったメーカは何かトラブルがあれば納入メーカの責任になるので、時には使用条件を発注者側以上に厳密に想定し、起こり得る過負荷を考慮した設計をすることがあります。

しかし、これをしないメーカも当然あるわけです。
与えられた仕様だけを満足すればOKという発想。

この二つのメーカの見積を比較した場合、まず確実に後者の方が見積価格が安く、形状もコンパクトなものを提案してくるはずです。
さて、技術力が高く、品質の良い製品を供給できるのはどちらでしょうか。

一概には言えませんがかなりの確率で前者の製品の品質の方が高いと予想できます。

このとき、ふたつのメーカの差をとことんまで詰めることで仕様を揃えた比較ができるようになりますが、それについては【業務スキル】仕様書作成手順解説にて説明しています。


同じ出力でも想定するトルクによって回転機械の大きさは全く違ってきます。
これをきちんと理解することで仕様の与え方も当然変わってきますし、出てきたものの大きさからどの程度のトルクを想定しているかも逆見積することが可能になります。

力学の知識を実際の機器の状態にまで落とし込んで理解することが重要なんだと思います。

[更新履歴]
2009-07-11 18:30:00 初回投稿

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現役MBA受講生との交流から思うこと

先週、ちょっとしたイベントがありました。
英国C大のMBA受講生が、関西を始めとする大手企業を巡るツアーのため来日していました。

その訪問先企業は、
・某下着メーカ
・某鉄鋼メーカ
・某自動車メーカ
・某医療機器メーカ
・某重工メーカetc...
と、ジャンルも様々、密度の濃いツアーが組まれていました。

その一つ、某重工メーカについては、神戸大学の社会人MBAコースを受講されているこの方が自身が担当しているプロジェクトについてプレゼンをすることになりました。

その準備段階で、関係者への準備依頼メールが、工場も違う、プロジェクトにも関係していない、私のところにも「何故かCCで」回ってきました。


・・・ええ、はい。


見事に釣られました。



こんな機会滅多にないからと、お手伝いでいいから是非ともボランティアで参加させてください、と即返信。
そしたら数分も立たないうちに、案の定、乗ってくると思った、との返事が・・・。


確信犯でした。



担当は資料作成時に言いたい放題の突っ込みと、当日の写真撮影と質疑応答補助、あと企業ミュージアムでの誘導などなど、アシスタント役でした。

今回の話は少し通常業務から外れるので、有給を取得しての参加となりましたが、とても有意義な場に臨場できて良かったと思います。

資料作成時点で「MBA受講生だったらどんな質問をするか?」と自分なりに考えてぶつけていました。
その質問の内容と、実際のMBA受講生の質問を比べたとき、方向性はそれほど違ってなかったのですが、決定的に違ったことが一つだけありました。

私の視点は、技術戦略重視。
でも、彼らの視点は、経営数値からの戦略論。

将来MBAホルダーとして経営の中枢で活躍することを期待・渇望して各国から集まった人達ですから、当然と言えば当然なのですが、技術的なポイントを絡めた戦略論というのではなく、純戦略的な質問が多かったという印象です。


ここから逆に、ものづくりの企業、特に日本の、と言った方がいいのかもしれませんが、ほんの一部の企業を除いて世界の舞台で活躍できない理由がこれではないかと、感じました。

ものづくりの企業が持つ独自技術をいかに活かしながらそれを経営戦略に入れていくか、ということを考えるとき、技術面が解っていなければそれを含めた視点で戦略を立てることはできない、それを強く実感しました。

しかし、彼らの戦略面に関する質問は、非常に鋭いものです。
プレゼンを担当したこの方が、「Any questions? But easy one please.」最後には「Give us easy question!」と半分本気でお願いするほどガチンコで、中には「彼はCEOじゃないから明言できないよ」と、アテンドしていた大学の教授がフォローするくらい企業戦略の根本に関する質問も飛びだしました。


ものづくりの本質を探る!~神戸の企業内技術士の挑戦


実際のところ、このプレゼンはかなりの高評価を得たらしく、これ以前に回ったところではほとんど質問もでなかったとのことですから、彼らの知的欲求をくすぐる内容であったのは間違いないので、関われた自分自身の自信にもなりました。

それと同時に、世界と伍する企業戦略のためには、技術と経営戦略の両方に精通する人財が絶対に必要だということを実感しました。
技術を活かすのに技術を知らないと、数字だけ追いかけてものづくりの本質を見誤る可能性があると思います。


でも、一人じゃ足らんですよね?



今回、一緒にアテンドしていた神戸大学MBAコースの他の受講生の方とも面識ができたので、厚かましくもその輪(飲み会?)に飛びこませてもらって、いろいろな情報交換と刺激を受けられることをとても楽しみにしています。



最後にもうひとつ。

企業ミュージアムを回っている時の英国C大MBA生の方々は、子供のようにはしゃいで楽しんでいました。
子供のような好奇心と高度な知識、そして熱い気持ち。

プレゼンの中で、特に将来の方向性に関する部分は彼らを相当刺激したらしく、質問も集中しました。
最終的な質問への回答は、「これからを担う自分たちが引張っていかなくてはいけないんだ」という、ある種の根性論ではあったのだけれど、これがまた彼らに響いたようです。

結局、なんだかんだいってもこれが重要な要素なんだと、改めて認識できました。

本当に貴重な体験でした。

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レオナルド・ダ・ヴィンチは芸術家であり、科学者だったという話はすでに良く知られているので今更解説する必要もないだろう。

本書は科学者、それも機械技術者としてのダ・ヴィンチの功績を分析、実証していて、機械系技術者にとっては非常に興味深い内容となっている。

まず驚くのは、ダ・ヴィンチが残した手記に、現在の機構学の書に載っているような基本的な機械要素が殆ど描かれていたという事実。
そして、それは自身が設計した自動機械―ロボットを構成する機構の研究のためだということ。

基本的な機械要素から自身で考案し、それをやはり自身で改良し、組み合わせて複雑な機械を創り出すということが如何に大変なことか。

それまで全くなかった概念を創り出して応用したダ・ヴィンチは天才であり努力の人だったと改めて感じる。

また、本書ではダ・ヴィンチが設計した自動化機械のうち、自動走行車、機械仕掛けのライオン、鎧の騎士を実際に再現する試みを行っている。
ダ・ヴィンチの残した手記は散逸して全て残っているわけではないが、可能な限り集めた上で新たな解釈から構造を読み解いていく。
気の遠くなる作業だが、携わっていた人たちはスケッチからダ・ヴィンチの息遣いを感じていたことだろう。


手記に残された技術は、当時としては画期的なものであったはずだが、現代の技術を凌駕するものではない。しかし、ダ・ヴィンチの研究に対する姿勢は、逆に恵まれ過ぎている我々が本来持たなくてはいけない真摯なものだと感じた。

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