ページ数:389P
発売日:2002年10月
かつて古代ローマ帝国は、人工衛星を打ち上げるほどの
高度な科学文明を享受していた。
だが、その没落から数百年、13世紀暗黒時代の西欧では、
物質の力を行使する科学を悪とし、人間の魂は生涯に積んだ
功徳によって天に召されるという信仰が支配していた。
南仏トゥールーズ市の若き医師ファビアンは、放浪の科学者
アルフォンスに出会ったことにより、みずからの信仰に疑問を抱く。
それは、やがてコンスタンティノポリスから中央アジアへといたる、
生涯を賭けた探求の始まりであった…
異形の中世を舞台に、信仰と科学の狭間に
世界の真実を求める者たちを描く、壮大なる叙事詩。
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二度目ましての作家さん。
前回読んだのも、同じハヤカワSFシリーズ Jコレクションの
ムジカ・マキーナだった。
それが面白かったので、続けて購入したものの
本の厚さと新書版だったことで5年積んでました(^◇^;)
やっと読める(積んでたのは自分だけどね・・・)
まず、世界観からして戸惑います。
13世紀なのに、一度核戦争で滅びた世界になってます。
しかも核戦争を起こしたのがローマ帝国だったりする。
現代の世界地図は頭から追い払わないといけない。
更に、アーサー王が出てきたり、マルコ・ポーロが出てきたり
まさかのベスビオ火山の噴火まで!
いわゆるヨーロッパ中世の史実を混ぜ込んでいる。
架空の世界に史実を織り込んで、更には色々な知識が
ほどよく散りばめられているから厄介。
何度もo(゚◇゚o)は?って思うのよ(^◇^;)
信仰を重んじ、科学を悪としていたファビアンは、
放浪の科学者アルフォンスと出会ってから
自分の信仰心が揺らいでくることを実感しながらも
真実を知ることに、未知の世界に踏み込むことに躊躇していた。
信仰と科学。善と悪の問答がグルグルしている。
真に全き神が創り給うた世界なら何故悪が存在する?
善の方が悪より上位にあるというなら勝たなければおかしい。
そもそも悪なんて存在しない。
人間や教会や権力者にとって、都合の悪いことがあるだけだ!
真の救済・・・すなわちご利益。
神に要求し、取引の要求を満たせば与えられる。
改宗とは自分の欲しいものをくれそうな神や、
自分にとって都合のいい神に鞍替えすること。
無宗教の人は、そう思ってるよね?
こういうのは苦手なはずなんだけど、読めちゃうんですよ。
何故なら、情景描写が好みだからです。
ゴシック系の絵画を思わせる描写がたまらないのですよ。
そして違和感バリバリの登場人物や、戦闘の為に作られた巨人が、
街を襲ってきたり、オーパーツ扱いの過去の遺物が出てきたり
剣と魔法的な出来事や、女しかいない砂漠の都市とか、
困惑しながらも次は何?と気になってしょうがない。
現代人なら、知識があれば解けるカラクリも
科学を悪と決めつけ信仰に縛られてきたファビアンにとっては
驚きと混乱でしかない。
ファビアンとアルフォンスと目線を変えながら、
時は一気に駆け抜ける。
ローマのその後と、二人の向かう方向とは・・・
なかなかに読ませます。
っていうか、これは好みの問題だと思います。
想像の翼を広げるにも、色んな意味で
違和感バリバリなので、ある意味では面白いんだけど
混乱します(^◇^;)