魚神(いおがみ)/千早 茜 | mokkoの現実逃避ブログ

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現実から目を背けて堂々と楽しむ自己満足ブログ

ページ数:257P
発売日:2012年01月

 

かつて一大遊郭が栄えた、閉ざされた島。
夢喰いの獏、雷魚などの伝説が残る島で、本土を追われた人々は
自治組織を作り、独自の文化を営んでいる。
捨て子の白亜とスケキヨは、この島で捨て子の姉弟として育った。
伝説の遊女の名を継ぐ姉・白亜と、デンキを放つ弟・スケキヨ。
ふたりは互いのみを拠りどころに生きてきた。
スケキヨは、あるきっかけから薬学の知識を身につける。

 

しかし、その美貌ゆえ、悪評高い裏華町に売られてしまう 。
離れ離れになり動揺したふたりは、ある夜、過ちを犯し
仲違いしてしまう。
成長した白亜もまた廓へ売られ、やがて島随一の美しい遊女となる。
スケキヨのことが忘れられず、無感覚のまま身をひさぐ毎日。
彼女は遊郭の女郎や裏華町の男達を通じて徐々にスケキヨへと
近づいて行くが、彼の周囲には不穏な噂が漂っていた。

 

強く惹きあい、拒絶を恐れ近づけない姉弟。
ふたりが再び寄り添うとき、島にも変化が……。
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二度目ましての作家さん。
おとぎのかけら 新釈西洋童話集(短編集)を読んで
是非、他の作品も読んでみたいと思って、本作をチョイス。

第一印象は外れてはいなかったぁ~

大まかな話の流れは、あらすじの通りです。
 

この世界観というか、白亜の感じ方が面白い。
常に気だるげで自分に対する興味がない。
本当に水の中でユラユラと漂いながら成長し
気が付いたらスケキヨという弟がいて
時間は流れているはずなのに、スケキヨ以外は
不必要と認識しているのか、どうでもいいのか・・・

 

スケキヨを認識したところから二人の時間が始まって
お互いにお互いが必要不可欠な存在で
なんとなく自分は遊郭に売られる身だとわかっていても
それもどうでもいいことだった。
スケキヨも、色白で他の子どもより見栄えがすることで
嫉妬からか嫌がらせを受けても相手にしない

 

スケキヨは白亜の世話をし、白亜はスケキヨ以外を受け付けない。
ユラユラと二人の時間が過ぎていくように見えたが
変化は突然やってきた。

 

スケキヨが裏華町に売られた。
白亜がそれを知ったのはスケキヨが売られた数日後だった。
後を追えないように周到に準備されていたようで
スケキヨの荷物は何一つ残っていなかった。
劇的な変化を受け入れられない白亜がとった行動は・・・
そして、成長して遊女として売られていった白亜は
有能な薬師の噂を聞いて・・・

 

 

読んでいる間中、ニオイと水気を感じるんですよ。
透き通ったきれいな水ではなく、澱んでいたり
臭った川の水だったり、森の湿気だったり。
ニオイと一緒に湿った空気が周りを満たしまとわりつく。
ユラユラと漂いながらも、水を肌で感じられる
そんな状態で、周りの景色の方が勝手に動く感じ
情景描写が上手いので、物語の世界にすんない入り込める

 

白亜、わかる?夜になって森が息をしだしたよ。
上から緑の青い匂いが降ってきている

 

匂いの記憶は特別だ。
見たものや聞いたものは日々移ろっていくのに、
匂いだけは忘れることが出来ない。
それは一瞬で鮮やかに記憶を蘇らす。

 

穏やかな二人の時間は、やがて引き裂かれる。
途端に薄ぼんやりとしていた景色に生身の色が加わって
感情というものが頭をもたげてくる。
後半に入ってからは続きが気になって気になって
貪るように読みました。
どこか気だるげな白亜目線なのに
幻想とリアルが混在した何とも言えない読み味です。

 

好き嫌いがはっきり分かれる作品のようですが
mokkoは大好きです。
楽しい時間だったぁ~(*´◇`*)
他の作品もチョイスしておこう(p^_^q)