
発行年月:2009年11月
サ イ ズ:395P 16cm
現代社会とは無縁と思われる習わしや言い伝え。
その禁忌を破ったとき、平穏だったはずの世界が、
恐ろしいものへと豹変する―。
人の死にまつわる不思議な力を持つ家系に生れた
女性の哀しみを描いた、著者のデビュー作「雨女」、
その続篇となる表題作など、哀しみと恐怖に溢れる
八篇を収録した短篇集。
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初めましての作家さん。
恵さんのレビューを読んで
即購入したものの、安心して積んでいる間に
脳みそが誤作動したらしく、料理系の本と思い込んでました。
年かなぁ~(-。-;)
本の紹介にある通り、哀しみと恐怖に溢れる作品ばかりです。
本来、驚かし系は苦手で、後からジワリとくる恐怖は大好物。
でも本作は、後からというよりも、読んでいる途中で
不可解な恐れが湧き上がってくる。
いわゆる不気味という奴ですね。
不可解な事って、それだけで怖いでしょ。
幽霊のソレとは違う、わからない事への恐れっていうのかな?
同時に、そこには哀しみが寄り添っている。
そして、温かさもあるからたまらない。
しかも、日常の中で気付いたらそこにあったという
そういう怖さの構成が絶妙な作品達です。
っていうか、デビュー作が「雨女(うめ)」って
凄すぎるでしょ~
「かっぱタクシー」
個人タクシーを引退したくてもできない理由とは・・・
過去に妻を苦しめた夫と痴呆の症状が出始めた妻
妻の告白とは・・・
「三途BAR」
亡くなった夫を未だ恋い慕う妻が仕事仲間に連れられて入ったのは
この世とあの世が交りあうという不思議なBARで・・・
「ジェリーフィッシュ」
ヨットを安く係留させるために仲間達が出された条件は
事故の為に異形となってしまった元漁師の息子と
友達になることだったが・・・
「つむじ風」
海外に移住する事になった友人の家を買い取って、
新生活を始めた夫婦だが・・・
「石室」
二世帯住宅に建て直しをしている間の仮住まいは
すっかり古ぼけてしまった元は大規模ニュータウンの
古い団地で・・・
「彼岸橋」
古くからの風習を頑なに守り続ける村に嫁入りしたものの
耐えられずに逃げ出した女だったが、息子の死の知らせ聞き
息子を取り戻しに行くのだが・・・
「雨女」
病気の兄の突然の入院。病の原因は自分のせいだと言う兄嫁(義姉)
過去を話したがらない義姉の秘密とは・・・
「澪つくし」
雨女の続編。兄の忘れ形見である姪を預かることになった弟。
先祖代々、雨女の血を受け継いだ幼い娘の決断とは
久しぶりのお気に入り作家さんです。
八篇の怪異譚。楽しめました。