五声のリチェルカーレ/深水 黎一郎 | mokkoの現実逃避ブログ

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五声のリチェルカーレ (創元推理文庫)/深水 黎一郎
¥693 Amazon.co.jp
277P 15cm

昆虫好きの、おとなしい少年による殺人。
その少年は、なぜか動機だけは黙して語らない。
家裁調査官の森本が接見から得たのは「生きていたから殺した」
という謎の言葉だった。無差別殺人の告白なのか、それとも―。
少年の回想と森本の調査に秘められた“真相”は、
最後まで誰にも見破れない。
技巧を尽くした表題作に、短編「シンリガクの実験」を併録した、
文庫オリジナル作品。
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テーマ読み第6弾は『五声リチェルカーレ
五声とは、中国音楽で使われる五つの音高。五音ともいう。
リチェルカーレとは、ルネサンス音楽や初期バロック音楽における
器楽曲様式の1つ。
ただ、本作はバッハの「六声のリチェルカーレ」から
音楽形式をもじったものかと・・・

初めての作家さんです。
解説文にあるように、昆虫好きのおとなしい少年が
殺人を犯すのだが、その動機を語ろうとしない。
いや・・・語ってはいる。
「生きていたから殺した」
家裁調査官の森本には、その意味するところがわからない。
少年の心を開こうと四苦八苦するのだが・・・

通常のミステリであれば、殺人があって、犯人は誰で動機は?
って流れになるんだろうけど、本作では殺人を犯したのが
少年であることは最初にわかっている。
「問題」は誰を殺して、その動機が何なのかってことになる。

物語はは少年の過去の回想と、森本が少年の心を開こうとする
現在の話が同時進行で進んでいく。

昆虫好きの昌晴は壮絶なイジメにあっていたのだが
運良く?転校する事になったものの、油断すると
またイジメを受ける事になりかねない。
しかし最悪な事に自分の席の両隣は、高校生ですら
一目置いているという不良だった。

昌晴より少し前に転校してきた白崎と仲良くしながらも
前の学校でのミスを繰り返さないように
昆虫のように擬態を続ける事になる。

一方、音楽マニアの森本は、少年が引き起こした事件の構図を
リチェルカーレという音楽形式に当てはめて解こうとするが
悲しいかな森本には最後までそれがわからなかった。

しかしだ!
最後の最後で気付いた。
森本の、途中で話す事をやめたセリフでわかってしまった。
っていうか、これは騙されていた読者に対するサービス?
騙された!完全にやられた!
森本が「三声のリチェルカーレ」から「四声のリチェルカーレ」へと
認識を改めたところまでは書かれているけれど
ちゃんとタイトルで「五声」と出ているではないか!

そういえば、アレ?と思ったところが数ヶ所あったのよ。
しかし、またもスルーしてしまったんだなぁ~
「問題」からして間違えていた。
うまく誘導されてしまった(||||▽ ̄)
これは上手い。
読者だけが「五声のリチェルカーレ」を認識しているという
終わらせ方も気に入った。
久しぶりに気持ちよくやられました。

音楽と昆虫の話がどう絡んでくるかは読んでのお楽しみ。
ネタバレする恐れがあるから言えない。
最後の最後で面白さが倍増するとは・・・
やられましたぁ~
この著者の作品、別のも読んでみよう♪

ただ、少年犯罪をテーマにしたものは
あまりにもリアル過ぎて、読むのが辛かったです。

バッハ 六声のリチェルカーレ



『シンリガクの実験』

人心掌握術に長けた少年が支配するクラスに
似たような少女が転校して来た事によって
支配のバランスが崩れると危惧する主人公の話。
狡賢い少年心理がうまく描かれてます。
結末には笑ってしまったけど(^◇^;)

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