虚無への供物 下/中井英夫 | mokkoの現実逃避ブログ

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新装版 虚無への供物(下) (講談社文庫)/中井 英夫
¥730 Amazon.co.jp
サイズ 475P 15cm


「アンチ・ミステリー」な推理小説の金字塔
氷沼家の周辺で次々と起こる謎の事件、くり返される密室殺人、
謎解きのためのキーワードの数々、多彩な仕掛け——
最後に明かされる犯人の意外な真実とその重み。
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牟礼田俊夫がようやくパリから帰国した。
牟礼田の顔を見て安心したのか泣き崩れる蒼司。
氷沼家に住み続けるのはマズイと判断した牟礼田は
蒼司を別荘に移して療養させる。

ところが氷沼の大叔母が入院している施設が火災で全焼。
大叔母も亡くなったのだが、遺体が1体多かった。
更にアパートの一室で毒殺された男は
紅司の日記に書かれていた架空だと思われていた名前の男だった。
色の名前の付いた不動尊も、調べていくうちに
五色の不動尊が揃っている事を発見する。

翻されたはずの推理なのに、それが正しいと思える証拠が
次々と出てきて困惑する。
氷沼家を勘当された娘が生んだ黄司。
戦争で死んだとされていたのだが、生きているのか?
これは黄司の復讐?


上巻から迷探偵の色彩幻想に憑かれ、じらされ、騙され、
振り回され、結局のところ犯人と動機は何?と、
イライラしながら読んでいました。
紅司が書き上げようとしていた小説風に、牟礼田が
事件の結末を予想して小説を書き上げる。
それを読まされているから、ますます混乱する。

久夫の探偵きどりな物言いにもむかついたけど
牟礼田の行動にもむかついた。
結局のところ、諸悪の根源は牟礼田だとも思った。

最後に犯人はわかるし、動機もわかるんだけど
それが理由?と一瞬思ったんだけど
犯人の最後の叫びに衝撃を受けて言葉を失った。
お前のせいだ!と言われた気がした。
読んで罪悪感を感じてしまったのは初めてです。

スゴイものを読んでしまったような気がします。
著者の幼い頃に書いたという作品を読みたかったなぁ

建築探偵:桜井恭介のオールタイム・ベストノベルで
一番好きなのが本作だというのも、納得しました。