虚無への供物 上/中井英夫 | mokkoの現実逃避ブログ

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新装版 虚無への供物(上) (講談社文庫)/中井 英夫
¥730 Amazon.co.jp
サイズ 420P 15cm


昭和二十九年の洞爺丸沈没事故で両親を失った蒼司・紅司兄弟、
従弟の藍司らのいる氷沼家に、さらなる不幸が襲う。
密室状態の風呂場で紅司が死んだのだ。
そして叔父の橙二郎もガスで絶命。殺人、事故?
駆け出し歌手・奈々村久生らの推理合戦が始まった。
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日本三大奇書の1冊。
去年も年の初めが奇書だったのに、偶然にも今年も
そうなってしまいました(^◇^;)
他の2作より読みやすいです。
後からアンチミステリだと知ったのですが
こういうのは初めて読んだかも・・・

氷沼家にはアイヌの呪いが降り掛かっている?
蒼司の友人(牟礼田俊夫)からもたらされた氷沼家殺人事件の予言。
牟礼田の婚約者:奈々村久生は危険回避の為に蒼司の知人である
亜利夫を氷沼家に潜入させるのだが、予言通りに急死した紅司。
死因は心臓発作だったこともあり、病死で処理された。

しかし久夫は話を聞く前に死んだのが紅司だと知っていた。
それは昔から決められたことだという。
そして、これは殺人だと宣言して、トリックを暴こうとする。
そこに参加したのが、亜利夫と蒼司の従兄弟の藍司と
氷沼家の相談役である藤木田で、推理合戦が行われる。

それぞれの推理は奇抜なものから、なるほどと唸る物もあったが
結局は藤木田の推理から叔父の橙二郎だという結論に達する。
ボロを出させようと、氷沼家に全員集合するものの
橙二郎が密室状態の自室で、ガス中毒により死亡してしまう。
状況から事故死と判断されたものの、久夫は納得しない。
そんな中、何かに気づいたらしい藤木田は新潟に帰ってしまう。
蒼司は、立て続けに弟と叔父を亡くして寝込んでしまう。

紅司と橙二郎の死は本当に殺人なのか?
アイヌの呪いとは?
紅司が書こうとしていたミステリ小説と日記に出てくる
男の名前が意味してるものとは?


ミステリは初心者とはいえ、こういうのは初めてかも・・・
探偵役が4人もいて、誰もが殺人事件にしようと
それぞれの説を披露するのだが、どれもなるほど!と思わせる。
誕生石の色と氷沼家の名前、色の名前の付いた不動尊、薔薇の色。
やたらと色を意識させられる。
薔薇の色の原理の薀蓄なんて、黒死館殺人事件みたいだった。

やたらと推理小説のトリックを引き合いに出しての推理合戦と
死を悼むことより殺人じゃなければいけないような久夫の態度が
ものすごく不愉快だった。
その推理も、ことごとく翻されるんだけど・・・
それでも、どう着地させるのか期待しながら下巻へと続きます。