
サイズ 332P 15cm
あたしはとっても幸せ。
この世でいちばんすてきな旦那さまがいるし、
おなかには赤ちゃんだって。
でも最近、変な連続夢を見始めた。ロンデュア、
これが夢の世界の名前。
あたしとあたしの息子のペプシ(!?)は、
五本の月の骨を探すためにその世界に帰ってきたのだ。
やがて夢が現実に、そして現実が夢に少しずつ
忍びこみはじめたとき……!
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2度目ましての作家さんです。
約2年ぶりのジョナサンキャロル。
清く正しくデビュー作の「死者の書」から読みました。
前作同様、淡々と始まります。
同じアパートの階下に住んでた良い子は
後に「まさかり少年」と呼ばれる殺人犯だった。
主人公は二十代半ばのカレン。
事故死した親友の旦那・ダンと結婚するのだが
このダンが、旦那の理想の全てを持ってるんじゃないか?
ってくらいにカレンの事を考えてくれる人だったりする。
なんてラッキーなカレン。
中絶という過去もあったけど、自分で決めた事だから
後悔なんてしていない。
そんなカレンは、妊娠を期に奇妙な夢を見るようになる。
夢の世界は「ロンデュア」という。
そこには何故か息子のペプシがいて
黒い帽子を被った犬と狼と駱駝が案内人で
ロンデュアを旅して「月の骨」を5つ集めなけらばならない。
夢は見るたびに、前の夢と繋がっている。
カレンはダンに夢の話をしたが、心配してるのがわかり、
カレンは同じアパートに住むゲイのエリオットに打ち明ける。
エリオットは、夢の内容を一言漏らさず聞いてくれて
茶化す事はなかった。
現実では、カレンは妊娠し、女の子のメイを出産し
夢の世界では、息子のペプシと旅を続けていく。
カレンは前にロンデュアに来たことがあるらしいが
全く覚えていないけれど、何故か知っていることもあった。
人間の夢は、叱りつける人がいない時に子供が汚した
台所みたいなものだ。
まさにロンデュアの世界は妙チクリンな世界だった。
機械の平野に熱々拇指。夜耳という案内人や死者の都。
兎はシルクハットから手品師を引っ張り出し
吊るされた人々の案内で芸術の橋を渡り
臭気ぷんぷんのクレーターの底で目覚めたり
十字路の中央には死んだ兎が八羽配置されていて
ペプシが配置を変えて進まなければならなかったり・・・
そして、夢の不可思議な力は現実に入り込んできた。
映画監督を突き飛ばしたら手の先から紫の光が出て
彼は吹っ飛んでしまい、それから何故か執拗に
愛の告白を受けるたり、ロンデュアに入り込んだり、
「まさかり少年」から熱烈な手紙を貰うようになったり・・・
妙チクリンで不可思議な出来事が、次第に不気味になり
不吉な不安が圧し掛かってくる。
5つめの骨を手に入れるには、ロンデュアの支配者と
戦わなければならない。
その姿は見る人によって違うし、既にその実力は
見せ付けられていた。
この妙チクリンな世界を頭の中で想像しながら読むのは
楽しいけれども大変な作業だったりする。
シーンが飛ぶから、想像力を試されます。
けれど、後半に入れば想像力は鍛えられ、どんなシーンも
容易に想像できるようになっている。
そこまで読者の脳みそを鍛え上げ、慣れたところで
もっとも残酷なシーンを用意してたりする。
悪夢だ!
さらに駄目押しでリアルな悪夢を用意することを忘れない。
絶句するしかない。
最後のシーンで、幾分救われはしたけれど、やられた・・・
これは、女性向けのダークファンタジーかと・・・
女性なら理解してあげられるって意味ですけど・・・
何だかんだ言いながらも、この著者の幻想的な描写は好きだ。
読むのが遅いのに、更に遅くなる(^ヮ^;)
既に2冊購入済みだったりするけど、しばらくは積読だなぁ~
これは好き嫌いが分かれる作品だと思います(^◇^;)
月特集の月診断
新月 :タイトルのみで月の登場はほとんどなし
三日月:作品の内容には特に関係ないが、月に関する描写がある
半月 :月が作品の内容に関わるキーワードになっている
満月 :月がテーマの作品である

死者の書 (創元推理文庫)/ジョナサン・キャロル
