七つの死者の囁き (新潮文庫)/有栖川 有栖
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死者はそこにいる。生きている私たちの記憶の中に、
夢の中に、そしてすぐ背後に。
私たちを見つめ、語りかけ、時に狙っている。
ひそやかで絶え間ない、死者たちの攻勢?。
少女の幽霊は窓辺に立ち、死んだ恋人からのメールが届く。
自殺した女の呪詛が響き、亡くなった男は秘密を打ち明け、
死霊の化身が地底から出現する。
怖恐と憂愁を纏った七つの死者たちの物語。
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アンソロジーは、新しい作家発掘のためと
前に読んだ本に感情移入し過ぎた時に
脳みそのリセットをするにはもってこいなんですよね。
タイトルから幽霊話しだと思ったらダメですよぉ
幽霊の話しもありますけど、怖くはないです。
たぶん・・・(^◇^;)
ある意味怖いってのはあります。
「幻の娘」有栖川 有栖
殺人容疑で取調べを受けている男が証言したアリバイは
飛んだ帽子を拾う為に入り込んだ家の美少女だった。
ところがその美少女は既に亡くなっていると・・・
幽霊が見える早川刑事は、男の話を信じるのだが
表向き、幽霊話を信じるとも言えず・・・
有栖川氏にしては、ちょっと軽過ぎ?
いつもの読み始めてすぐに引きずり込まれる感がなかった。
そういえば有栖川氏は幽霊の本を書いてますよね?
『幽霊刑事』手元にあるけどまだ読んでいない。
と思ったら続編らしい・・・( ̄□ ̄|||)
ネタバレしてるらしい・・・
やっちまったil||li _| ̄|○ il||li
「流れ星のつくり方」道尾 秀介
旅先で出会った少年が、かつて起こった殺人事件の話を始める。
友人の家に入り込んで両親を殺した犯人。
犯行直後に友人は自宅に帰っているにもかかわらず
犯人は消えていた。犯人はどうやって誰にも気付かれずに
現場を立ち去ったのか?
初めての作家さんです。
本人も作家として名前だけで登場してます。
タイトルの意味は、最後にわかるんだけど切ないお話です。
死者とは関係ないような気がしないでもないけど
この作家さん、好みかもしれない。
真備庄介シリーズの番外編らしい。
「話し石」石田 衣良
録音技術が開発されていなかった時に活躍したのが
「話し石」と呼ばれる石で、その採集にかけては
世界一だと言われる男が1001個目に採取した石に
かけた願いとは・・・
星新一さんに捧げるショートショートらしい。
ちょっと不可思議な話し。
切ない話しにしたいのはわかるんだけど
その為に使った「悪魔」がご都合主義で使われていて
星新一さんは1冊しか読んでないけど、悪魔の使い方を
どうしても比べてしまう。
たぶん、この人の文章の組み立てがmokkoには合わないんだなぁ~
どうせなら同じ題材で、長野まゆみさんに書いてもらいたい。
もっと幻想的で切ない物語になったと思う。
「熱帯夜」鈴木 光司
精神的に病んでいる奈保美が映画館で電話の呼び出しを受ける。
彼女が映画館にいることは誰も知らないはず。
電話に出てみると、短くくぐもった笑いを残し電話は切れた。
一方、他の女性とは違う雰囲気の奈保美と付き合う雅人は
順調な人生を歩んでいる大学4年生。
奈保美は恐ろしい体験を話すため雅人のアパートを訪れるのだが・・・
著者原作のドラマや映画は見ていたけれど、活字では初めて。
奈保美の病的な描写もすごいけど、雅人の描写に入った時に
真相はわかるんだけど、そのことがとんでもない結果をもたらし
さらに最後のダメ押しが待っている。
これは怖かったぁ~。
危なく「うわぁっ」って声出しそうになった。
他の作品も活字で読んでみたくなりました。
「嘘をついた」吉来 駿作
首を吊って死んだ彼女からメールが届いた。
心霊写真を撮るべく、裕子が自殺した現場に千莉と一緒に行く翔。
翔は「裕子が死んだら僕も生きてはいない」と約束したのに
未だに生きている事に恐れを抱いています。
知り合ったタクシー運転手の協力を得ながら、裕子との
接触を試みるのだが・・・
初めての作家さんです。
これはミステリとホラーをうまく組み合わせていて
なかなか面白かったです。
タクシー運転手の解釈が説得力があるというか
納得できる内容でした。
タクシー運転手から見た幽霊の話しは笑ったけど
そんな事、考えた事もなかったわぁ~
「最後から二番目の恋」小路 幸也
死を目前にして、人生の中のひとつの思い出の「やり直し」を
させてくれると持ちかけたバクのような存在。
琴美は小学5年生の時に出会ってからずっと親友だった
真理恵との人生を振り返る。
初めての作家さんです。
これはファンタジーになるのかな?
最後の最後にわかる意外な真相。
なんとも複雑というかほろ苦さが残るというか
これが本当の「死者の囁き」って思いました。
「夕闇地蔵」恒川 光太郎
寺の地蔵の前に捨てられていたから地蔵助。
彼は普通の人間とは異なった視覚を持つ。
幼馴染の冬次郎が妹の死後、塞ぎ込んでいることに心を痛め
寺の和尚に聞いた「冥穴洞」に彼の妹を供養するつもりで
冬次郎を誘いますが…。
これは、視覚を刺激されるというのかなぁ~
異なった視覚というのが、人と違ったものが見えるんだけど
それは幽霊が見えるとかそういうことじゃないんですよ。
基本は白と黒の濃淡の世界と金銀の炎に彩られた鮮やかな世界。
人間であることはわかるけど詳細はわからない。
生き物によって、その輝きは違う。
自分で想像するしかないんだけど、こういう作業というのが
初めてだったので、刺激的でした。
そして、話しは予想外の方向に進みます。
これはダークファンタジーですねぇ~
「夜市」しか読んでないんですけど、この著者の表現は好きです♪
今回のアンソロジーは、今まで読んだアンソロジーと比べて
当たりが多かったかも。
「死者」をテーマにしたものではありますが怖いというより
切ないアンソロジーだと思います。
個人的に当たりが多いので得した気分です。