彫刻家 富松 篤 さん 第1回 | みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

生命礼賛をテーマに彫刻を創作。得意な素材は石、亜鉛版。
クライアントに寄り添ったオーダー制作多数。主なクライアントは医療者・経営者。
育児休暇中の2011年よりブログで作家紹介を開始。それを出版するのが夢。指針は「自分の人生で試みる!」

 皆様、こんにちは。
 みんなの学び場美術館 館長 日下育子です。


 今日は素敵な作家を紹介いたします。
 彫刻家の富松 篤 (とまつ あつし)さんです。
 

 富松 篤 さん

 

 

 アーティストのパルコキノシタさんからのリレーでご登場頂きます。
 パルコキノシタさん   第1回  第2回 


 第1回の今日は、富松 篤さんが美術を始めたきっかけ、制作テーマについて伺いました。
 子どもの頃から、美術作品を作る人になると決めていらしたこと、東京造形大学時代に彫刻家

舟越桂先生 から話されたこと、ご自身の制作テーマについてお伺いしました。
 どうぞ お楽しみ下さいませ。

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 「夏の午後~想~」
 h180×w80×d80(cm)
楠,アクリル絵具
2011

 

 

 

 
 

 落ち着く想い "Thought to be settled down"

 h55×w50×d75(cm)
 楠・アクリル絵具

 2010





 

想いは花のように "The thought like a flower"

h165×w30×d40
楠・アクリル絵具

2010

 

 

 


 閉ざされた表情 "Closed expression"
 h33×w13×d13(cm)
 楠・色鉛筆
 2011

 

 



 little girl#1
h80×w17×d14(cm)
 楠・アクリル絵具・色鉛筆
 2011

 

 

 

私自身、重さを感じない。"I do not feel myself, weight."
h210×w27×d27(cm)
 楠・アクリル絵具・色鉛筆
2011
 個人蔵

 
 

 

 ephemeral#4
 h57×w20×d20(cm)
楠・発泡ビーズ・油絵具
 2012

 

 

 

 

 ちょっとだけ高い所から "From the slightly high place"  
h74×w19×d14(cm)
  楠・発泡ビーズ・油絵具
 2013
 個人蔵

 

 

 

 

 

 「イケビト 〜ikebana×hito〜」
h40×w25×d25(cm)
  楠・真鍮・油絵具
  2014
  個人蔵

 


 ドローイング 14/17

 

 

 

 


 
牡鹿に棲まうもの #1
h250×w140×d45(cm)

 

 

 

 

 

牡鹿に棲まうもの

#2  h90×w60×d30(cm)

#3 h120×w140×d35(cm)

 

 

 

 

 

 

牡鹿に棲まうもの #5
h130×w90×d35(cm)
2017



 

 日下
 美術を始めたきっかけを教えて下さい

 

 
 

 富松 篤 さん
 美術、彫刻を始めたきっかけは、やはり周囲の環境が大きいです。父親が建築設計士。母親が彫金作家の中、小さい頃から母のアトリエにあった粘土や彫金の型に使う蝋で、遊んいたのが影響していると思います。

 

 

 

日下
 そうですか。

 

 

 

 富松 篤 さん
ゴジラやモスラを模写したりするのも好きでしたが、どちらかというと粘土で立体を作る方が好きで、小学生の頃、夏休みの宿題でキングギドラの貯金箱を作って賞をもらったこともありました。

 両親には、小さい頃からよく美術館や展示会に連れて行ってくれて、沢山の美術作品に触れる機会をもらっていてとても感謝しています。小中学生の時に2回イタリアに連れて行ってもらって、レオナルド・ダ・ヴィンチ「最後の晩餐」の修復中と修復後を見れた事が思い出に残っています。

 そんな環境の中で育って、自分も美術をやるんだなって自然に思っていました。実際、親も自分が美術の道に進みたい、彫刻をやりたいと言っても、全然驚かなかったです。

 

日下

それは素晴らしい環境でしたね。
 影響を受けた作家,作品はありますでしょうか。

 

富松 篤 さん
 好きな作家さんは沢山いますが、影響されたと聞かれると、舟越桂先生の「妻の肖像」です。最初は確か高校生の時、図録で見たのかな? 「なんて彫刻だ!素晴らしい!!」その時の思った言葉は詳しく覚えていませんが、あとあと実際に見ることが出来て、見た瞬間涙が出てきたことを覚えています。

 

日下
 舟越桂さんの「妻の肖像」は富松さんがおいくつ位の時にご覧になったのでしょうか。

 

富松 篤 さん
 初めて実物を見たのは高校生の時に東京都現代美術館で先生の回顧展で見て、2回目はヤン・ファーブルと舟越先生の展覧会で見ました。その時は、結構広い部屋にその作品が一つだけ置かれ素晴らしい展示になっていて、かなり長い時間見ていました。

 

 

日下
舟越桂先生は確か東京造形大学で教えていらっしゃいますよね。

 

 

 
富松 篤 さん

はい、客員教授をされています。

 
日下
 舟越先生に教わるために造形大学に行かれたのでしょうか。

 

富松 篤 さん
 それもあったと思います。
 美大に進学するときに、行くなら東京の美大、東京芸大に行きたいというのがありました。

 現役の時に何度か東京の予備校の講習会に通いましたが、現役のときは全部落ちてしまいました。
 当時、東京の予備校のデッサンのレベルが和歌山とは全然違って、こんなに違うものなのかとショックを受けました。それで浪人の時から東京に出て、新宿美術学院という予備校に通いデッサンの勉強をしました。

 そこの彫刻の先生は、木彫をされる方で、当時、浪人で地方から出てきているのは僕だけで、同郷でとても良くして頂きました。

 浪人するなら、厳しくいこうと思い、住まいも、家賃の安い風呂無しで、共同洗濯機のところに自分から住むことを決めました。近くに銭湯があって楽しかったですよ。 朝予備校に行ってデッサンや粘土で模刻したり、特別に夜間部も出させてもらい、帰宅しても描いて、一日で3、4枚はデッサンしていました。デッサン詰めの浪人生でした。

 
日下
 デッサン一日3、4枚は、本当に凄いです。それだけ自分を追い込んだというのはすごく良い体験でしたね。尊敬します。


 富松 篤 さん
 そのくらい描かないと、みんなに追いつけなかったからです。
 結果、東京芸大は落ちましたが、受験デッサンだけが上手くなる状態は終わりにして、大学で制作したいと思い、造形大は受かっていて舟越桂先生もいらしたので入学しました。
 

日下
 舟越先生との思い出はありますか。

 

 富松 篤 さん
 大学四年生の時の卒業制作(「夏の午後~想~」)で、モデルを頼んだ方とやがて交際するようになっていました。ある時その制作をしていたら、舟越先生が木彫室にいらして
 「君、これ、特別な人を作ってるでしょ。」と声をかけられました。

 そして、先生ご自身も「妻の肖像」を制作されていますが、大切な人を作ることについて
 「モデルを使って制作して、残っていくものに対しての責任をもって、気持ちを大切にして作らないといけないよ」という話をされました。

 

 日下
 そうですか~。大切な人を彫る体験を尊敬する先生と共有できたというのは、素晴らしいことですね。
 富松さんの制作テーマについてお聞かせ頂けますでしょうか。

 

富松 篤 さん
 制作テーマは、「人」「人間」「想い」とか、自分の中で感じたもの、感じているものを、人の形を通して作品を制作しています。

 女性像のスタイルになったのは、大学の卒業制作の時に発表した。「夏の午後~想~」からです。動きがあるよりも静かに立ってる感じが好きなんです。

 抽象的な形も制作したいと思いますが、なんか自分の中で消化しきれない感覚があって、自分には具象が合ってるのかなと感じています。

 

 日下
 女性像でも、年代によって、少しずつ表現に変遷がありますね。

 

富松 篤 さん
 そうですね。
 舟越先生のお話を聞いたのもあって、特定の人のかたちを作ることが怖くなって、大学院中はモデルを使わない作品になっていき、人物というよりは人間を表現するようになりました。大学院を卒業してから1,2年は、顔も作らなくなりました。

 けれども、だんだんと顔を作らなきゃ、作りたいなという気持ちが出てきて。作るようになりました。でも、モデルになる人はいませんね

 顔は最初の頃から目を閉じていますが、それは今でもそうです。目の表現というのは、すごく難しいですが、目を開いて主張するよりは、目を閉じていて、作品の人間が見る人に受け入れられるというか、目を閉じていてこの子は何を感じているのかな、というのを作品に感じてほしいと思っています。

 

 日下
 なるほど~。
 顔が粒々で表現されている作品も面白いですね。

 

富松 篤 さん
 顔が粒々の作品は発泡ビーズという、舞台で雪の演出に使うものですが、それを固めて油彩したものです。 泡のように膨らんで、消えて行く、儚さ、うたかたのイメージ、人の感情も膨らんで大きくなっていくけどいつかは消えていくことを表現しています。

 僕は両親が離婚したことや周りの人との関係から。人への愛を感じていて、だからこそ人間を作りたいというのがあります。
 あとは、違う素材も取り入れてみたいというのもありました。

 

 日下
 「イケビト」という作品は面白いですね。とても目を引かれました。
 

 富松 篤 さん
 2013年に華道家の人と仲良くなって、その人を表現したものです。

 僕は先に絵を描いて、絵を描く時は立体にするとは考えていなくて、自然に出てきた線やかたちを描いて、これを立体にしたら面白そうかなというものを木彫に入ります。

 
日下
 木彫をされていますが、素材についてのこだわりなどはありますか。

 
富松 篤 さん
 素材は、クスノキを使っています。(他の木でも彫ってみたいと思います)。舟越桂先生の影響もあり、彫刻するなら木彫をやりたいと思っていました。大学では、粘土、木、石、鉄と一通り実習します。その中でもやっぱり木がいいなと思ったのが、僕には粘土は流動的過ぎるし、石は硬すぎるし、鉄は規制的だし、僕の中では、木が丁度いい硬さで扱いやすかったです。それに他の素材に比べて、触ってみても、あたたかいし、人物像を彫るならやっぱり木がいいなと思いました。

 牡鹿半島に移住してからは、最近では流木も使って制作しています。リボーンアートフェスティバルに、荻浜小学校の中庭で展示した「牡鹿に棲まうもの」です。流木を組合わせて制作した鹿です。不思議と自然に手が動いて、面白いなと思って、自分の中では新しい表現方法を見つけた感じです。

 
日下
 そうですか。新しい環境で新しい手法に出会われたんですね。
 今日は、素敵なお話をありがとうございました。

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 編集後記

  前々回ご登場の現代美術家パルコキノシタさんからのリレーで、初めて彫刻家 富松 篤 さん のお話をお伺いしました。 富松 篤 さん は1年前に東京から石巻市の牡鹿半島に移住されて、今年の夏に石巻市で開催されたREBORN ART FESTIVAL2017には地元在住の作家として出品されていました。
富松さんは牡鹿半島で、海の仕事に携わりながら制作活動に励んでいらっしゃいます。

 今回のインタビューは、12月初旬に富松さんが私のアトリエに来て下さり、お伺いしました。
 私は、富松 篤 さんの作品世界にとても繊細さを感じます。そして造形性もとても面白く感じました。

 次回は、富松 篤さんの社会との接点で思うこと、REBORN ART FESTIVAL2017に参加して感じたこと、「あなたにとってアートとは?」についてお話を伺いします。

 どうぞお楽しみに。

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 ■今後の活動予定

  ◇12月~1月 グループ展国内の展覧会
    会期: 2017.12.25〜2018.1.31
 開催時間: 19:00〜23:00
    会場: 
ego Art&Enterainment Gallery

  
 ■富松篤 Atsushi Tomatsu

 作家略歴
 1985   和歌山県生まれ
 2011   東京造形大学大学院造形研究科 修了
 2016  宮城県石巻市に移住。


 展示 
 2008   第72回新制作展(東京)
 2009   彫刻五七五美術系大学交流展2009(沖縄)
 2010   国際野外の表現展2010比企(埼玉)
 2011   「行商~ギャラリー・サーカス」(東京)
     Tomatsu Atsushi solo exhibition(Art Lab AKIBA/東京)
 2012   「pimp studio delivery art exhibition"HAMELN"」(東京)
     遊美工房 第8回企画展「777aspettos」(岡山)
     「pimp studio delivery art exhibition 2nd"LOVE ME TENDER"」(東京)
                  (FEI ART MUSEUM YOKOHAMA/神奈川)
     ”Day Dream Believer"(Art Lab TOKYO/東京)
     The pimp show(Art Lab AKIBA/東京)
 2013   アートフェア東京2013 ART FAIR TOKYO 2013(東京)
 2014   アートフェア東京2014 ART FAIR TOKYO 2014 (東京)
 2014   SICF15 (東京)
 2017   Reborn-Art Festival 2017 (宮城)
           4th OSAKI ART FESTA (宮城)

 

 

 
 本日もご訪問ありがとうございました。


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★ 「みんなの彫刻アカデミー」0期モニター生募集のご案内
次回は2018年1 月20日(土) 13:30~16:30開催します。

 

 

 

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