造形作家 石山 駿さん(再放送)第7回~カメレオンシリーズについて~ | みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

生命礼賛をテーマに彫刻を創作。得意な素材は石、亜鉛版。
クライアントに寄り添ったオーダー制作多数。主なクライアントは医療者・経営者。
育児休暇中の2011年よりブログで作家紹介を開始。それを出版するのが夢。指針は「自分の人生で試みる!」

みなさま こんにちは。
みんなの学び場美術館 館長 日下育子です。



今日は素敵な作家をご紹介いたします。

陶を素材とした作品を作っておられる造形作家 石山 駿さんです。



石山 駿さん
(茶屋町画廊個展2010)

以下、2016年2月の再放送でお届けします。

前回までの山本 哲三さんからのリレーでご登場頂きます。     
山本 哲三さん
第1回  、第2回  、第3回   、第4回 第5回第6回 、 第7回、  第8回 、  第9回  




石山 駿さん

第1回  ~作品のかたちを日夜考える学生時代でした ~
  
      
 略歴紹介ページ
2回  ~専攻科で決定的に変わりました ~  
第3回  ~瀬戸で陶に出会いました ~
第4回  ~陶で最初の作品がアメリカで紹介されました ~
第5回   ~アマチュアリズムで陶に向き合っています ~

第6回  ~自分にショックを与える作品が欲しかったのです。~



第7回目の今日は、石山 駿さんの作品「カメレオンシリーズ」について、お話をお伺いしました。


石山 駿さんはそれまでに具象的な要素を意識的に排除していくような制作をされていましたが
「小さな陶たちシリーズ」「盤上遊戯シリーズ」というチェスを模した作品展開から、自然に

カメレオンを登場させることになったそうです。


その具象的な要素と作品題名の付け方などから、新しい作品展開ができたというお話です。

どうぞ、お楽しみ頂けましたら幸いです。


* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 


4-1 800 7
4-1(小さな陶たちシリーズ1976~)  





4-3-1 800 7

個展出品作  

1974年

青画廊 (東京 六本木)  






4-11 800 7
「海月」  

各 22×高さ21cm
1981年 

陶展「円」  ギャラリー白(大阪) & ギャラリーマロニエ(京都)


             





4-14 800 7
(盤上遊戯シリーズ1977~) 

「交歓閨夢(交換ゲーム)」 

40×18×高さ20cm 

個展出品作

1979年  

BOXギャラリー (名古屋) 
                         






5-2b 800 7
「痴繪圖閨夢(チェスゲーム)」  

112×112×60cm  

1977年  

第4回日本陶芸展  (毎日新聞社主催)
呉市立美術館所蔵







5-3a 800 7
「痴繪圖閨夢(チェスゲーム)」 

240×240cm    

1981年  

朝日美術展’81 (朝日新聞社主催  名古屋丸栄スカイル) 
アルゼンチン近代美術館「日本の家」所蔵





7-1a 800 7

(カメレオンシリーズ1989~)  

「カメレオンたちの痴繪圖閨夢」 

180×120×12cm

1989年  

名古屋世界デザイン博覧会・コンペ部門審査委員特別賞受賞 
                             







7-3     「カメレオンたちの盤上遊戯」 

270×450cm

1993年  個展  ギャラリーNAF (名古屋)   
                              






7-6a 800 7
「含羞」   

1994年

個展   今人・Imgine (滋賀県 大津)







7-10a 800 7
「談合」  

52×19×26cm

1992年  

アートは楽しい 3  (ハラ ミュージアムアーク  群馬県 伊香保)
                



日下
カメレオンシリーズがとっても
面白いので、詳しくお伺いしてみたいんです。

チェス盤の上にいっぱいカメレオンが乗っていますね。



石山 駿さん
1976年頃から手のひらサイズの軟体物的なフォルムを無数に作り始めたのです、
これは何?というような、粘土をフニャフニャまわしたり、グニューッと曲げたり、
本当にもう手で

コロコロと子供が粘土遊びするような軽やかな感覚で、ちょうど飴細工のような変幻さで、

手が勝手に生み出してくれるようで面白かったですね。


そこに綿密に模様を描き込みました、それまではフォルムの世界だけで展開してきた

ものですから、絵付けによる装飾的な世界を取り入れたのもひとつの変化なんですが、

模様がまとわりつくことでフォルムがより生々しく動きだす感じがしました。
やはり視覚的にフォルムをより効果的に見せるにはどうしたらよいかということは

大事にしていたと思います。


「小さな陶たちシリーズ」と名づけて小さなフォルムを幾つもランダムに置いたり、壁に掛けたり、

飾り棚に置いたり、水の中や草はらに潜めたりしていろんな展開をしているうちに、

チェス盤の上で駒代わりに置いてみたらチェスができるかなという発想で、遊びの概念を

より具体的に「盤上遊戯シリーズ」として展開したんです。


「チェスゲーム」だとか、「ドッジェム」という最小手数何手で、相手の陣地と自分の陣地を
入れ替えることができるかという、古くからある平面上のゲーム遊びを引用しての作品ですね。


1989年7月に名古屋で「世界デザイン博覧会」というイベントが開かれて、協賛事業として

「デザインけっさく大賞」展コンペがあったんですが、それに応募した時の作品に、カメレオンを

チェスの駒に見立てて出品したのがカメレオンシリーズへのきっかけになりました。


別にカメレオンでないといかんというわけじゃなくて、何ということなくカメレオンというのが

出てきたんですね。
ユーモラスな姿態と好奇心に満ちた大きな眼に魅せられて面白いんじゃないかなと、それで

カメレオンを作って、「カメレオンたちの痴繪圖閨夢(チェスゲーム)」と題して出品しました。


まだまだ純粋に形だけの組み合わせでもっと遊んでみたかったんですが、カメレオンの

存在自体が意外と面白かったので、鳥獣戯画絵巻じゃないけれども、ある種の風刺性を

カメレオンにかぶせて人間社会をなぞってみようと。
これまではあまりそういう世界に踏み込むのを考えもしなかったけど、カメレオンで作品を

作っていくと、結構いろんな展開ができてきて、かなりのめり込みましたね。


たとえばちょっと小さい写真で恐縮ですけれども、こういうふうなのがありましたね。




7-2 800 7
第1回「八木一夫賞」’89現代陶芸展出品 (5点組み作品) 

1989年
手前から (舌禍、羞恥、密談、凝視、窃視) 1点の長さ 90cm






日下
はい、ありましたね。



石山 駿さん
こういうふうにして人がひそひそと密談しているような状況があったり、
相手のところへ行きたいんだけれども恥ずかしそうに前でシャットアウトしてしまったりとか。


そんな人間のちょっとした感情のすれ違いみたいなものや、その時の世相を反映した状況を

造形を通じて遊んでみようと、カメレオンを積極的に作り、時には150体ちかくチェス盤上に

展開してみたりしました。


今まで作品を発表してきたのは東京と京都を中心にしてでしたが、カメレオンシリーズからは

名古屋を中心とするようになってきたので、ほとんどこの時期、僕はカメレオンの作家だと

言われるくらいたくさん作りましたね。


今まではあまり自分の中では意識的に抽象、具象ということを考えないで来たんです。
大学でそういう世界に触れて育ってきたものだから、自分で創りだす形というものは、それを

どう捉えるにしろ、自分の観念的な操作でひとつの形に落とし込んでいく為の表現の方法としては

抽象のほうがが僕にとってはより表現の自由度が高かったからなんです。
意識的に具象的なものを取り除こうというよりは、表現の対象として具象そのものに関心が

薄かったですね。
具象としてのモノにはそれ自体で、見る人それぞれのストーリーが色濃く絡んでゆきますから、

その関係性は僕の好みではありませんから。


それでも、カメレオンを用いてコンペティションに応募してやっていく中で、自分が今まで

展開してきた作品世界の中にカメレオンを放り込んでみたらどんなふうに変わっていくかなと

思って展開してゆくことにしたんです。


後から考えてみたら、結局、抽象とか具象とかというところにこだわること自体も、自分に

何かしらの観念的な束縛感や、まだ自分で捨てきれないものがあったんだろうなという思いは

します。
自分の中にある余計なものを捨て去るということの難しさをつくづくと感じますね。


カメレオンを題材に用いることによって、結果的には動物であろうが何であろうが、表現として

面白いことができるんだったら、自分を自由に解放してなにものにも囚われずに、何も躊躇せずに

やればいいんだと簡単明瞭に考えることができて、ある種自分を解放できたんだろうなという

気がしましたね。



日下
白と黒のカメレオンが整然と並んでいる作品がありますね。




7-19 800 7

「パレード」  

カメレオン1体の概寸 20cm

1989年
ソウル⇔名古屋立体造形の交流展 (ソウル)                        




石山 駿さん

これは韓国で展覧会をした会場での写真です。
白いのはカメレオンの頭に綿が被さっていて、黒いのは針金をぐるっと巻いてあるんですね。
別に何の意味もないんです。解釈は見る人がどうぞ、とこういうふうにして。
(※スカイプカメラで手のひらに作品を1体乗せて見せて下さいました。)



日下
ああ、手に乗る大きさのものなんですね。(感心!)


石山 駿さん
はい。これを「パレード」というタイトルにしてこういうふうに並べて。
何とでも深読みできるんでしょうけど。
カメレオンの周辺の床上には全部2次熟語で、「羞恥」とか「密談」、「秘匿」とか要するに

ネガティブな言葉を散らばるように配置して、こういうふうにエスカレーションした作品なんです。



日下
何か文字なのはわかったんですが、写真では読めなかったんですが、
熟語が書いてあるというところで、何か訴えるものが出てきますね。



石山 駿さん
そうなんです。集合体として「パレード」作品のように展開することもあれば、これなんか「含羞」、

先ほど言った「密談」とか、あるいは「彷徨」、「礼節」とかの熟語と組み合わせて、

ひとつひとつの作品にしたりしてました。



日下
面白いですね。文字と形の出会いとか、そこで受け手が何を感じるかという・・・。



石山 駿さん
そうですね。
本当を言えば僕はそれまでの作品というのは、純粋に形態だけの組み合わせでしたから。
特に初期の即興シリーズの時の題名なんかはすべて、当時はテレビがまだそれほどはなくて、

深夜放送のラジオ番組に出てくる、例えば「ヒットパレード」とか「ムーンライト」だとかいう

音楽番組のカタカナ文字をとっかえひっかえ作品の題名に押し込んでいったんです。

アメリカで紹介された日本の若手陶芸家6人の、この作品も「ナイトムーン」という題名を

つけたんです。(※)

  ※(アメリカで紹介された作品は 第4回  でご覧頂けます。)




日下
そうですか~。



石山 駿さん
解説にも、「彼の作品の題名のつけ方そのものが非常に作品とコミットして、雰囲気を非常に

盛り上げている」というような解説がしてあるんですけれども。


作品に対しても、形と形、断片と断片が偶然組み合わされて出来上がった形のユニークさと、
そこにもう一つ何の脈絡もない題名を押し込んでいくことによって、見る人が

「あれ?何?この作品。この題名との関連性は?」という、もう一つ何か混乱を感じさせるという

出会いを意図的に織り込んであるんですね。



日下
それは、とっても面白いですね~。



石山 駿さん
ところがカメレオンシリーズになってくると、題名とカメレオンの様相がさもありなんというふうに

収まってしまっているわけなんですね。
作品と題名との関連性から言えば、僕は題名が作品の世界を説明したり補完したりするのは

好きじゃないんです。


だけど、カメレオンを擬人化しているもんだから、見る人にはそういう様相をよりしっかりと

意図的に押し込むことによってはっきりさせたいと踏み込んだんです。
この点でもカメレオンでは今までとちょっと違う作品の見せ方を展開しましたね。
それも自分が意識的にそうしてもいいんだというふうに自分の中で納得できたので、
そういう意味でも、カメレオンたちが僕にとってはより柔軟な姿勢への転機にはなりました

けれどね。



日下
本当にカメレオンシリーズはとっても面白いですね。
同時に石山さんご自身の制作スタイルの上でも、お伺いしたように
とても深く意味がある展開になったというのが、素晴らしいですね。
とっても興味深いお話をありがとうございました。






7-17 800 7
「ファミリー」 

1番大きい頭部の寸法 46×17×高さ43cm
1997年
個展出品作 (ガレリア フィナルテ   名古屋)    

 


**************************


編集後記


今回、山本 哲三さんのご紹介で、初めて石山 駿さんにお話をお伺いしました。
石山 駿さんは陶を素材とした彫刻作品で国内外での発表活動歴が豊富で多彩な彫刻家で

いらっしゃいます。


山本 哲三さんからは、クレーワーク(学生当時は陶彫と言われていた)をやっていらして、
既成概念に捕われない楽しい作品が大変評価されている彫刻家としてご紹介いただきました。
愛知県瀬戸市で1月迄開催されていた「アートでびっくり!干支セトラ展」を主催するアートの

NPOの理事もしていらっしゃいます。



今日は、石山 駿さんの作品シリーズの中では、唯一具象的なカメレオンシリーズについて

お聴かせ頂きました。


石山さんは、これまで常に予定調和的ではない、形と形の偶然の出会いのユニークさを

追求されてきました。
また同様に題名も形と何の脈絡のない題名をつけることによって、見る人に意外な何かを

感じさせるという出会いを意識的に織り込んでこられました。


それがカメレオンシリーズでは、具体的なかたちと、題名のネガティブな二字熟語によって、
カメレオンの擬人的な様相が見る人に伝わってしまうという展開を意識的にされたことで

転機になったということでした。


石山 駿さんの制作にはいつも、本当に自由になろうとする何か新しい挑戦があって、また、

とても素晴らしいと感じるお話でした。


次回は、棒と輪の形を組み合わせた「スティックアンドリングシリーズ」についてお届けいたします。


どうぞお楽しみに。

**********************************

◆ 石山 駿さんが所属する特定非営利活動法人 Art-Set0のホームページ 
   特定非営利活動法人 Art-Set 0で運営しているギャラリーのフェイスブック
   
アートセットスタジオ

石山 駿さんの略歴

:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

:::::::::::::::::::::::::::::::::::


★無料メルマガ【1114(いい石)通信】
メルマガ登録のお申し込みは
 ★コチラから★


 「みんなの彫刻アカデミー」0期モニター生募集のご案内
次回は2017年7
月15日(日)13:30~16:30開催します。



::::::::::::::::::::::::::::::::::::


★☆ アーカイブス ☆★


学び場美術館登場作家リスト
学び場美術館登場作家リストⅡ
学び場美術館 登場作家リスト Ⅲ ー2014

学び場美術館 登場作家リスト Ⅳ ー2015
学び場美術館 登場作家リスト ⅴ ―2016




人気ブログランキングへ ←ポチッとおしてね! 


↓こちらも


にほんブログ村  ← ポチっとおしてね!