みなさま こんにちは。
みんなの学び場美術館 館長 日下育子です。
今日は素敵な作家をご紹介いたします。
陶を素材とした作品を作っておられる造形作家 石山 駿さんです。
以下、2015年3月の再放送でお届いたけします。
前回までの山本 哲三さんからのリレーでご登場頂きます。
山本 哲三さん
第1回
、第2回
、第3回
、第4回
、第5回
、第6回
、 第7回、
第8回
、 第9回
石山 駿さん
第1回
~作品のかたちを日夜考える学生時代でした ~
略歴紹介ページ
第2回
~専攻科で決定的に変わりました ~
第3回
~瀬戸で陶に出会いました ~
第4回
~陶で最初の作品がアメリカで紹介されました ~
第5回
~アマチュアリズムで陶に向き合っています ~
第6回 ~自分にショックを与える作品が欲しかったのです。~
第7回 ~カメレオンシリーズについて~第8回目の今日は、石山さんのたくさんの作品展開の中でも、とりわけ彫刻的な1982年からの
スティック&リングシリーズについてお伺いしてまいります。
シンプルな造形が、実は非常に高度な陶芸技術に裏打ちされていることが分かるお話です。
どうぞお楽しみいただけましたら幸いです。
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作品 6-1
「現代のやきもの展」 出品
1984年
(呉市立美術館)
作品 6-5
個展出品作
1983年
(名古屋 桜画廊)
作品 6-8
寸法 51.5×30.6×7.7
米国・東欧巡回「現代日本陶芸展」 出品
1986年
国際交流基金所蔵
作品 6-9
個展出品作
1983年
(名古屋 桜画廊)
作品 6-6
寸法 8×60.2×49cm
「現代のやきもの展」 出品
1984年
(呉市立美術館)
呉市立美術館所蔵
作品 6-12
作品 6-14
日下
石山さんの作品の中で、屋外で展示されているもので
スティック&リングシリーズがありますが、とても興味を惹かれる作品ですね。
石山 駿さん
このシリーズは、今までの作品の流れを俯瞰してみた場合、フォルムの構築性を意識した
最も造形的な作品と言えるでしょうね。
僕はとりわけこれらの作品を作りながら、やっぱり美大の彫刻科で勉強してきたんだという意識を
改めて感じました。
専攻科を卒業する際は、大学で学んだことを捨て去ろうとしてもがき、瀬戸で土に出会い、
土の持つ融通無碍な表現の意外性に魅せられて色々と作品を展開してきました。
そこを通り抜けてゆく中で、私自身が見出す形のオリジナリティとも言うべきものに、
僕はずっとこだわり続けてきたように思っています。
もう制作することに迷いや、混乱を持つことはなかったですね。
即興シリーズから始まってグラフィックシリーズ、ワンダーランドシリーズ、小さな陶たち、
盤上遊戯シリーズと進んできた中で、突然このスティック&リングシリーズへと変わるんだけれど、
改めて考えてみるとそこに低通しているものは、軽やかさや、明るさ、遊戯性といった雰囲気が
視覚的に造形化されているように見えてくるわけですね。
僕にとってはそれを生み出す根源みたいなところに踏み込んでゆけたらという思いが強くあって、
ギリギリ単純な形としてスティックとリングに拘って展開してみたかったんです。
シンプルであればあるほど余分な要素は排除されて、フォルムの純粋な表情から見えてくるものが
あるんじゃないかと考えたんです。
とりわけこのシリーズでは、スティックとリングだから棒と輪という2つの要素でどのように
形の展開ができるか、どれだけのバリエーションを作り出していけるかと思って取り組んだのが
この作品なんですね。
子供が積み木遊びをするように輪をいっぱい棒の中へ通してみたり、輪と輪の組み合わせの形を
様々作ってみたりしながら、嫌だったらまた抜いて違うところへ入れたり、何本か入れたりと
形体や空間の変化をあれこれ試しているプロセスの一場面が作品として固定されていると思って
います。
言ってみれば形がどのようにでも変化してゆくであろう過程での仮設の状態が作品になっているんです。
これも自分では、単純なフォルムどうしが出会うことで発見できる形の面白さ、楽しさを強く意識していた
からでしょうね。
遊戯性のある視覚的な形の遊び、そして盤上遊戯シリーズでのゲームとしての具体的な遊びの形、
それよりもっとしシンプルな形で造形的に遊びたいなと思っていました。
日下
造形が、スティックとリングという2つの要素だけのものなのに、知恵の輪のような手のひらサイズに
見えたり、もっと遊具とか、キャンプファイアーとか、かがり火みたいなすごくスケール感のあるものにも
見えるという・・・。
石山 駿さん
そうです。
長さや太さは様々つくり分けていますが、50cmぐらいのスティックを3本組み合わせている作品でも、
それをもっとエスカレーションしていくと、これなどは、1本の長さが約1メートルです、100本ほど焼いて
いますからそれを3本づつ組み合わせてるんです、30個ほどずらっと並べてあるんですね。
そしてそれぞれのスティックの中に細いスティックを無数に差し込んで、さらに大小のリングを通して
あるんです。
作品 6-20
陶ー空間の磁場〈現代陶芸5人展〉 出品
1992年
(名古屋市民ギャラリー)
作品 6-20a
(スティック&リングシリーズ 1982~)
日下
物量的にも凄い迫力ですね。
石山 駿さん
で、また展示が終わったら全部ばらばらにして、元に戻す。
展示会場や空間に応じて表現形式を柔軟に対応できるインスタレーション作品にしてあるんです。
日下
屋外の1メートルのものだけは、組み立てができる感じなんですね。
作品 6-18a
国際陶磁器展美濃’86 出品
1986年
(岐阜県多治見市)
作品 6-17a
概寸 1点の長さ 105cm
国際陶磁器展美濃’86 出品
1986年 (岐阜県多治見市)
石山 駿さん
そうそうそう。
でもこれも1メートルは超えているんですけれども、これは一緒に全部焼きこんである、
このところはね。 (作品写真6-17aの棒と輪について)
この4本は近くの公園で撮影したんです。
日下
そうですか。
その1メートルくらいのスティックを焼くというのは、技術的には結構大変ではないかと
思うんですけれども。
石山 駿さん
それは大変ですよ。
この大きくて反っているこの形(前出の作品写真6-17について)は、
棒は無空で中が空洞じゃないもんだから、この細いリングと太いの棒を同時に焼きこむと収縮率が、
土の縮み具合がそれぞれ違うんですよ。
それに加えて、棒の釉薬は艶消しになっていて、輪の方は光沢の釉薬、つるっとした釉薬なんですね。
またこれも収縮率が違うわけだから、同時に焼成すると、輪の方の収縮が棒の太さに対して
縮みきらないもんだから、パーンとはぜちゃうんです。
だからそれを避けるために最初から60個、70個の輪と太い棒とは別々に焼き上げておくんです。
改めてもう一度固定させるためだけに再焼成します。
一回目で高温焼成しているから、十分に縮みきっているわけですね、焼き直すときにはそれ以上
縮まらない。
釉薬が溶け合うだけだから、ちょっと低い温度で焼成しても充分溶け合って固定されますね。
いくつかの失敗を重ねて技術的な点の解決法と言うのは見つけていくわけですね。
作品 6-4
個展出品作
1983年
(名古屋 桜画廊)
石山 駿さん
これはちょっと小品ですけれども、これらも同じように2度焼きしています。
それに、今までのシリーズでは素焼に施釉して窯詰めしながら棚板の上で形を組み立てていたのです。
有機的な、柔らかい形の作品だったから組み合わせている最中に釉薬が剥がれ落ちる事はそれほど
無かったんですが、四角い棒のようにエッジが立っているとどうしても剥がれ落ちやすいんです。
その点からも先ず本焼成しておいたほうが扱いやすかったんです。
たとえば1250度程の焼成温度で本焼成すれば、2度目は1240度程でも溶けてひっついてくれて
いるんです。
スティックが細ければ上に載せた形の重さや、角度によって変形しないようにたくさんの支柱を
立てねばならず、結構窯詰が大変なんです。
作品を構成している棒の数より支柱の数の方が多かったり、でもあれこれと工夫するのも
楽しいんですけれどね。
日下
素晴らしいですね。すごいですね。(感動!)
石山 駿さん
それはもう、失敗を重ねて学んでいくことですけれどね。
日下
100本作って、長さが1メートル以上というこの作品も(前出の作品写真6-20)
空洞ではなく無空の棒なのでしょうか。
石山 駿さん
これは真ん中に、こうやって、先ほども説明したように、細い棒を入れていますよね。
真ん中があいているわけです、そこへ差し込んでいるんです。
これはさすがに自分の電気窯では焼けないもんだから、大きな窯を持っている工場に依頼して
こういう形を作ってもらったんです。
差し込んである細いスティックの部分は自分で焼いてます。
日下
穴が開いているにしても粘土の量もものすごいですね。
石山 駿さん
そうですね。でもそれは手作りじゃなくて、土練機(どれんき)という機械でつくってあります。
金型を作って,粘土が押し出されてくる口のところに、棒の断面図に相当する金型を固定して、
そこから押し出された形を必要な寸法で切ったものなんです。
だから棒自体は発注しているんですね。
日下
そうですか。
シンプルな造形表現を陶でこのような大きさでやるというのは、物凄い技術なのですね。
石山さんが失敗を重ねて学んでいくと仰ることにとっても重みを感じます。
今日もとっても興味深いお話をありがとうございました。
作品 6-11
個展出品作
寸法 高さ60×51×16.5cm
1983年
(名古屋 桜画廊)
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編集後記
今回、山本 哲三さんのご紹介で、初めて石山 駿さんにお話をお伺いしました。
石山 駿さんは陶を素材とした彫刻作品で国内外での発表活動歴が豊富で多彩な
彫刻家でいらっしゃいます。
山本 哲三さんからは、クレーワーク(学生当時は陶彫と言われていた)をやっていらして、
既成概念に捕われない楽しい作品が大変評価されている彫刻家としてご紹介いただきました。
愛知県瀬戸市で1月まで開催されていた「アートでびっくり!干支セトラ展」を主催するアートの
NPOの理事もしていらっしゃいます。
今日は、陶という粘土を焼成することによって収縮する素材で、1メートルもある棒を、
同じ陶の輪に差し込んで形を保つことの技術的の高かさが伺えるお話でした。
印象的だったのは、作品が焼成中の収縮によって壊れないように、一度、本焼きまでして
縮みきった素材を釉薬で形同士を接着させるためだけにまた焼く、という時間と手間をかけて
かたちを生みだされているということ。
また、それを失敗を重ねながら見いだしてこられたというところにとっても重みを感じました。
実際のサイズ以上の大きなスケール感を感じさせる造形は、やはり石山さんが彫刻家で
いらっしゃるからなのだと感じています。
次回は、主に石山 駿さんが理事として活動されている、愛知県瀬戸市の
NPO Art-Set 0(アート・セット・ゼロ)についてお伺いしてまいります。
どうぞお楽しみに。
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◆ 石山 駿さんが所属する特定非営利活動法人 Art-Set0のホームページ
特定非営利活動法人 Art-Set 0で運営しているギャラリーのフェイスブック
アートセットスタジオ
◆石山 駿さんの略歴
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