彫刻家 加藤裕之さん 第3回目 ~人間が創った温かみのある作品にしたい~ | みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

生命礼賛をテーマに彫刻を創作。得意な素材は石、亜鉛版。
クライアントに寄り添ったオーダー制作多数。主なクライアントは医療者・経営者。
育児休暇中の2011年よりブログで作家紹介を開始。それを出版するのが夢。指針は「自分の人生で試みる!」


みなさま こんにちは。

彫刻工房くさか 日下育子です。


今日は素敵な作家をご紹介いたします。

彫刻家の加藤裕之さんです。



アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館

加藤裕之さん 


  
前回の彫刻家 渡辺 尋志さんからのリレーでご登場頂きます。

  彫刻家 渡辺 尋志さん  第1回目  第2回目  第3回  第4回 




第3回目の今日は、素材についてと

社会との接点についてお話頂きました。


お楽しみ頂ければ幸いです。


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3.素材について



アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館

2002 「上流へ」




アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館

2010 「森へ」




アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館

2012 「BLIZZARD2012」



日下
それでは、素材のお話で
樟(くす)をたくさんお使いになっていますが                   
いろんな木がある中で「樟」をお選びになっているのは             
想いがおありなんでしょうか。



加藤裕之さん
特にこだわりは無いんですが
あの、材料として大きいものがあるというのが一番。
やはり樟は大木があるので                      
それで比較的、安価かと言ったら安価でも無いのですが
彫りやすいですね。

一番大きな理由は、やはり大きな材料がまだあるということですかね。



日下
なるほど~。



加藤裕之さん
のみの跡だとか
のこやすりという道具、のこぎりやすりという道具があるんですが

そういうのでガリガリ削った感じの肌合いというのも好きなんですけどね。



日下
のこやすりという道具って
あの、鬼おろしみたいな形の道具でしょうか?



加藤裕之さん
そうですね。ちょっと似てますね。
のこぎり状の歯がついているやすりがあるんですよね。         



日下
樟は大きい材料が取れるから木を選んだというお話ですね。       

他の実材、私なんかは石を彫っていますが
そういう石でも、鉄でも無く、木ということには何か
こだわりはおありでしょうか。



加藤裕之さん
石も彫ったことがあるし、
鉄もやったことがあるんですよ。
やっぱりちょっとはね。


でもやっぱり、木の柔らかさというか
それは触覚的なこともありますけど。
見た目、温かいというかそういうのはいいなぁとは思っています。


自分の作品も、人間が創っていて
温かみがあるものにしたいなと思っているので
石や鉄というよりは
木の方が、そういう自然現象や、心象風景だとかいうことには
やはり適しているかなとは思っていますけども。



日下
私個人は、木という素材はそれ自体が
とても生き物っぽくて、扱うのが難しかったんですね。

生命感をかたちで表現しようと思った時に
素材自体がすでにそれを持っているような気がして
感覚が難しかったということがあります。



加藤裕之さん
だから素材とはあまり戦っていないんですよね。



日下
ああ、はあはあ。



加藤裕之さん
実際、木はのこを入れてみたらそこに腐りがありました、
とかそういうこともあるし、
目がここ良くないなみたいなこともよくあるんだけど
あまりそういうことを気にしないで、
木なりに創っていくような感じで作っています。  

         

基本、合わせたり、寄せたりということをやっているので          
そういうことでは僕は扱い易い、
量を表現するには扱い易い、
よく考えるとそこかな~。



日下
なるほど~。



加藤裕之さん
本当は知的にどうなんだというのがあると良いんだけど
意外とそういうことになっちゃうかな。

木に対して自然なものというようなこだわりは無くて
やっぱり自分の表現としては使い勝手がいいだとか               
自分の表現したいものに似合っているというような感じですかね。    

あんまりセンチメンタルなこともないですね。 

          


日下
そうですか~。



アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館

上流へ     (2000制作)




アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館

2008    「CREVASSE]


4.社会との接点について


日下
前回、渡辺 尋志さんは、
作品を作る前より先に社会を意識することは無い
というお話でしたが加藤さんはいかがでしょうか。


表現の分野では、
いわゆる「世に問う」ということが言われますが
彫刻を作るというコト、創っているモノ、
世の中に発表していくことに
何か姿勢めいたものを意識されることはありますでしょうか。



加藤裕之さん
若い頃は、やっぱり新しい価値観というか
自分が見つけた価値観を提示するなんていう
ちょっとカッコ良いことを威勢よく思っていたりしたんですが
今はそこは、世の中に問うんじゃなくて
何というんでしょうかね。


世の中にモノ申すとか、問うという感じじゃなくて
誰か僕と同じ風に感じてくれる人いますか? ぐらいの
謙虚な気持ちでやっています。


世の中に何か言う為に作っているわけじゃないし
どちらかというと、
もう本当に、申し訳ないけど、個人的な動機で
自分の中の自己実現の問題として制作しているので。  

         

そのことがある意味では、
一人よがりではやっぱりつまらないから
あとは発表する段階で
自分と同じ様に、共感出来る方がいるかな                 
ぐらいの感じで見てもらっていますけどね。


だから見て頂いて、感想を言ってもらってというのが、
この年になってみると一番嬉しかったりしますけどね。

何かこう、あらかじめそういう社会的なメッセージを
刻みこんで作るということは意外と無いです。



日下
はい。なるほど~。



加藤裕之さん
昔は誰がどう見ようが関係ない、
「これでどうだ!」という感じで                      
やっていましたけどね。
いまはそういうのは抜けた感じです。   

               

よく木が好きで、見てくれる人たちっていますけどね。
そういう人たちは素材が木で、
かたちが柔らかかったりすると
表現が自分の心持としっくりくるような感じがすると
安心するようなことを言って下さいますけどね。


それは自分にとっては本当にありがたいことだし
自分はホットすると言ったら変だけど・・・。
まあ作ることで欲張っても仕方無い
という風になってきていると思っています。



日下
加藤裕之さんの作品は雪の風景というものを作られて
いますがやはり、温かみはありますよね。



加藤裕之さん
そういう風に言ってもらえると嬉しいんですが。

あの、モチーフというか表現したいということのうらはらに
冷たいものに触ると自分があったかいことに気づくというか
氷でもそうですが自分の手の中で溶けちゃうわけじゃないですか。

冷たいと感じることで、自分の温かさに気づく、            
ということもあるわけだから。   



日下
それは新鮮な感じのする言葉ですね。



加藤裕之さん
何となく少し、自分の中に問答めいたものもあり
考えてはいますけどね。
他意は無いですが。



日下
そうですか。
興味深いお話をありがとうございました。



アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館

2012 「空をゆくもの」


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今回、渡辺 尋志さんのご紹介で
初めて、加藤裕之さんとお話をさせて頂きました。

岩手の風雪のある風土を純度の高い抽象彫刻に
されている作品がとても素晴らしいと感じました。


楠という木の素材感を活かしながら
冷たい、しかもかたちの無いものを、
温かみのある造形に昇華していらしゃいます。


その温かみというのは、木からくるものだけではなく
ご自身では大学で保育士養成など、
人間を培う造形表現を研究し、実践していらっしゃるという
人間的な温かさからもきているのだろうと感じました。


加藤裕之さんの作品は、東京池袋のホテルグランドシティ
でも常設されています。


みなさまもぜひ加藤裕之さんの作品を
直接ご覧になって見てはいかがでしょうか。


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◆ 加藤裕之さんの個展

  加藤裕之彫刻展 2013,5,7(火)~5,18(土)
  


◆ 加藤裕之さんの過去の個展情報


  


◆ 加藤裕之さんが掲載されている 新制作展ホームページ
  
  ⇒   

l ホテル グランドシティ  制作に関する言葉
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