みなさま こんにちは。
彫刻工房くさか 日下育子です。
今日は素敵な作家をご紹介いたします。
彫刻家の加藤裕之さんです。
加藤裕之さん
前回の彫刻家 渡辺 尋志さんからのリレーでご登場頂きます。
第1回目の今日は、彫刻を始められたきっかけ、
制作テーマについてお話頂きました。
お楽しみ頂ければ幸いです。
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2012 「空をゆくもの」
2012 「BLIZZARD2012」
2006 「BLIZZARD(Turara)」
1.彫刻を始めたきっかけ
日下
まずは、彫刻に向き合われたきっかけを
お聴かせ頂けますでしょうか。
加藤裕之さん
私は岩手の一関出身なんですけども、
高校生ぐらいの時に岩手県出身の彫刻家である
船越保武先生の彫刻展が盛岡で開かれていて、
それをどういう経緯だったかは忘れましたが見に行って、
やはり 「いいなぁ~!!」 と思ったのがきっかけです。
あとは、船越先生が新制作展という展覧会の
創立会員だということを知って、
仙台には、それこそ佐藤忠良先生がいらしたりということで、
東北の人でも第一線で活躍されている彫刻家がいて、
そういうことに憧れを持ったということがそもそもあります。
そこがスタートだったかもしれません。
日下
そうですか。それでは絵画をやっているうちにというより
まさに彫刻そのものから入られたんですね。
加藤裕之さん
そうですね。
船越先生や佐藤忠良先生のことは
やはり格好イイと思いましたね。
2008 「CREVASSE]
2.制作テーマについて
日下
新制作展のホームページで、
加藤さんは原風景をテーマにされていると拝読しました。
大学で専門的に彫刻を勉強すると、
通常、基礎的な人体の制作などから入りますよね。
そこから、最近の「原風景」や、「体に眠る心象」という
方向に展開してきたきっかけや経緯を
お聴かせ頂けますでしょうか。
加藤裕之さん
やはり若い頃は、学校ではモデルを見て
塑造を作ってということが当たり前にありました。
ですが、自分の創りたいもの、
モチベーションのあるもので制作を進めていこうとした時に
子どもの頃、感じたことや、見たことというのが、
それこそ「体に眠る心象」ですが、
いつも一緒にいて、僕を形作っていたんです。
年もとってくるとなんかそういうことって大事だったなって。
今は風景見たりしても、なかなかそういうことって
自然に感じられなかったりするもんですから・・・。
私は田舎に育ちながらも
高校卒業と同時にずっと都会に暮らしていて、
子どもの頃のそういう感覚って新鮮だったなって思ったり
そういう子どもの頃に感じた、
風土、気候、自然現象というのが逆に懐かしいというか、
モティーフとして強く引き付けられるようになりました。
それがノスタルジーなのか何なのかは
ちょっとわかりませんけども
日下
そうですか~。
「-BRIZZARD-」や「-crevasse-」といったタイトルの作品も
制作していらっしゃいますが、
そういう風景も体験していらっしゃるのでしょうか?
加藤裕之さん
まあ「-BRIZZARD-」や「-crevasse-」といった
実際の体験はほとんどないんです。
でもやっぱり、子どものころ感じた寒さ、冷たさというのは
大人になってから実家に帰ると
温暖化じゃないですけど
昔感じたようなことはなくなっています。
また、つららがドーンとなっているというのが
冬の風景だったのに
今はそういうのがここ20年から30年の間に
気象というか環境が大分変わってきたということに対しては
懐かしく思うという所もところもあります。
今年に関しては例外的なんですかね。
その象徴的なものが
「-BRIZZARD-」というようなものです。
自分では本当は生ぬるい雪しか
経験したことはないんですけども。
なんというかその、
かたちになっているイメージじゃないので。
日下
そ、そうですよね。
加藤裕之さん
だから本当に漠然としたイメージや記憶を
かたちに彫っているという。
かたちにしたいという想いだけでやっている
という感じです。
日下
はい。
加藤裕之さん
だから「-crevasse-」なんていうのも
実際に氷河に行って経験している訳でもないし
そういう意味では、
「-crevasse-」が先にあるわけじゃなくて
作品を作っている間に、なんというか
形態からタイトルを読みとったりということがあります。
本当は冷た~い感じにしたかっただけ、
氷のしゃりっとした感じにしたかっただけで
必ずしもタイトルが始まりではなかったりします。
日下
そうですか~。
作品から、本当にそうだなと思える感覚が
伝わってくるので素晴らしいなと思います。
2005「BLIZZARD4]
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今回、渡辺 尋志さんのご紹介で
初めて、加藤裕之さんとお話をさせて頂きました。
岩手の風雪のある風土を純度の高い抽象彫刻に
されている作品がとても素晴らしいと感じました。
楠(くす)という木の素材感を活かしながら
冷たい、しかもかたちの無いものを、
温かみのある造形に昇華していらしゃいます。
その温かみというのは、木からくるものだけではなく
ご自身では大学で保育士養成など、
人間を培う造形表現を研究し、実践していらっしゃるという
人間的な温かさからもきているのだろうと感じました。
加藤裕之さんの作品は、東京池袋のホテルグランドシティ
でも常設されています。
みなさまもぜひ加藤裕之さんの作品を
直接ご覧になって見てはいかがでしょうか。
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◆ 加藤裕之さんの個展
加藤裕之彫刻展 2013,5,7(火)~5,18(土)
ギャラリー澄光
◆ 加藤裕之さんの過去の個展情報
ギャラリーなつか
◆ 加藤裕之さんが掲載されている 新制作展ホームページ
⇒ http://www.shinseisaku.jp/member/profile/sculpture/kato_hiroyuki.html
http://www.shinseisaku.jp/sculptor/news/news100227_2.html
◆ 加藤裕之さんの彫刻が展示されているホテル
ホテル グランドシティ
◆加藤裕之さん 略歴
1963 岩手県生まれ
2011 schedule
1987 東海大学教養学部芸術学科卒
1993 東海大学教養学部芸術学科美術学課程研究生終了
【個展】
2001 「加藤裕之彫刻展」ギャラリーなつか&b.p/銀座
2003 「加藤裕之彫刻展」ギャラリー澄光/自由が丘
2009 「加藤裕之彫刻展」ギャラリーなつか&b.p/銀座
【グループ展・公募展】
1993 「第57回新制作展」東京都美術館
1994 「アートヒル三好ヶ丘’94彫刻フェスタ・優秀マケット展
1995 「アートヒル三好ヶ丘’95彫刻フェスタ・優秀マケット展
1996 「第1回小田原アートフォーラム’96」小田原市・旧三の丸小学校
「第60回新制作展」東京都美術館
1997 「横浜・湘南周辺の彫刻家展」ギャラリーヨコハマ/横浜
「ふれる彫刻100展」神奈川県立 生命の星・地球博物館
「第61回新制作展」東京都美術館
1998 「第7回現代日本具象彫刻展」千葉県立美術館
「第62回新制作展」東京都美術館
1999 「第63回新制作展」東京都美術館
2000 「第64回新制作展」東京都美術館
2001 「第65回新制作展」東京都美術館
2002 「第66回新制作展」東京都美術館
2003 「第67回新制作展」東京都美術館
「虫展」ギャラリー澄光/自由が丘
2004 「第68回新制作展」新作家賞受賞 東京都美術館
2005 「新制作受賞作家展2005」ギャラリーせいほう
「第69回記念新制作展」東京都美術館
2006 「第70回記念新制作展」東京都美術館
2007 「第71回新制作展」国立新美術館/六本木
2008 「第72回新制作展」国立新美術館/六本木
2009 「第73回新制作展」新作家賞受賞(国立新美術館)
2010 「新制作受賞作家展」(ギャラリーせいほう)
「第74回新制作展」会員推挙