彫刻家 田村茂直さん 第3回~ 自分で決めたテーマで作り続ける | みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

生命礼賛をテーマに彫刻を創作。得意な素材は石、亜鉛版。
クライアントに寄り添ったオーダー制作多数。主なクライアントは医療者・経営者。
育児休暇中の2011年よりブログで作家紹介を開始。それを出版するのが夢。指針は「自分の人生で試みる!」



「みなさま、こんにちは。

彫刻工房くさか 日下育子です。


今日は素敵なアーティストを紹介させて頂きます。

岩手県盛岡市在住で、おもにヨーロッパで発表活動をされている
彫刻家 田村茂直さんです。



アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館
田村茂直さん


第1回目 「文明」というテーマで「壁」の作品を作る

第2回目 ~ 「作品によって作り方を変える」



お楽しみ頂けましたら、とっても嬉しいです。


* * * * * * * * * * * * * * * *


3 社会との接点について①



アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館-名古屋逓信病院  700
名古屋逓信病院



アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館-設置作品  700
設置作品



アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館-1993彩園子個展風景  700

1993彩園子個展風景 1



日下
田村さんが制作・発表される時に
何かしら社会との接点を意識されることはありますか。



田村茂直さん
社会との接点という意識は無いですね。
僕は芸術をしている人との交流が無いんです。
造形大学の同級生の菅原君(このインタビューの紹介者)
とは話しますけど。
友達はいるんですが、その友達同士が友達じゃないんです。



日下
そうですか~。



田村茂直さん
僕は話が苦手なところがあって、
30を過ぎてから海外に行くようになりましたが
海外では話ができなくても、
無口な人と思われるだけなのでいいんです。


でもパリに行って良いことがあったな、
楽しかったなと今になると思います。



日下
はい。それはどんなことでしょうか。


田村茂直さん
さきにお話した美術運動COBRAの代表の
ギューム・コルネイユに会ったり、
他の作家のアトリエに呼ばれたり、
食事やパーティ―に行ったり。


ギューム・コルネイユ に会ったのはとても感動しました。

 


日下
芸術運動をしていたご本人様に
直接会えるなんて、とっても貴重で素晴らしいですね。


アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館-破壊する沈黙  700

破壊する沈黙 

素材 レジン



アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館-蒼い船と赤い海  700
蒼い船と赤い海

素材 レジン



アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館-蒼い船と赤い海部分

蒼い船と赤い海 部分



日下
それから田村さんが作品や発表を通して
何かメッセ―ジとか、こんな風に伝わったらいいとか
想われることはありますか?



田村茂直さん
今、世界で起きていること、社会現象とかいうものに

普遍的な価値観があるのだろうか?
普遍的価値観は幻想じゃないかということです。



日下
幻想、ですか・・・。
それは、具体的にはどんなことかお聴かせいただけますか。



田村茂直さん
今の価値観では平和が大切、平和が良いと思っていても
もしかすると本当は、それは違うかもしれないということです。



日下
えっ!?(驚き)
なんだかどきどきして来ちゃいますが・・・。



田村茂直さん
人類の歴史の中で、宗教間、国家の対立で
戦争という殺人を肯定していた時代があります。


今は平和が大切だといっている日本だって、
一時は戦争を肯定的に考えていて
芸術家が戦争画を描いたりしていた時期がありました。


そういうことにかかわりがないわけじゃないですが
僕は鉄腕アトムの時代に育って、
その時はアトム(核エネルギー)がすごい思って
育ちました。


でも近頃では、原子力エネルギーの別の側面が見えてきて
今は自然エネルギーが良いと言われています。




日下
そうですね。
そう言われると、本当に価値観というのは変遷していますね。



田村茂直さん
はい。
それで今は自然エネルギーが良いと言われていますが、
だからと言って、そういう自然エネルギーを肯定する
芸術活動もしたくないと思っているんですよ。


だから、原子力のお話にのせられないで
やっていきたいと思っています。
自分で決めたテーマで作り続けて行こうと思っています。



日下
はい。



田村茂直さん
例えばビルに作品を設置して欲しいとか
依頼のあった制作の時には人と相談して制作しますが
展覧会での作品発表は違います。



日下
そうですか~。
田村さんは、諸々の社会的な事象からは
独立した立場で制作されるという姿勢でいらっしゃるのですね。



田村茂直さん
僕が作っている作品では、普段から
もうちょっと違う個人的な感情というか、
言葉にならない個々の人間の感情、

つまり本当のことを作りたいんです。



日下
本当のこと、といいますと・・・。



田村茂直さん
つまり、例えば我々は震災に遭いましたが、
でも、本当に言葉にならないほど大変だった人の気持ち
その本当のところは僕には、わからないんです。


そういう風に、完全にその人の気持ちというのは
わからないわけだから、
その個別の現象の説明ではなく
もっと大きな歴史観や事件を

象徴的に捉えて制作していきたいと思うんです。


文字の無い時代の原始の人が、

そのときのことを誰かに伝えたくて描いた壁画や彫刻
その人の本当の想いだと思います。

そのテーマが文明という「壁」だったり遺伝子だったりします。

僕は言葉で表現する表現者ではないので、そんな感じです。



日下
なるほど~。そうでいらっしゃるんですね。

私が申し上げるものも何ですが、
そういうことを正直にお話されるというのは
田村さんは実直で謙虚な表現者でいらっしゃると思います。



田村茂直さん
先にお話した
COBRA(コブラ)

原始美術運動というのがそういうもので、

言葉の無い時代に起こった民族芸術とかを賛えています。


そのCOBRA(コブラ)
の代表の

ギューム・コルネイユ の個展を
見た時にすごい衝撃だったんですよ。

彼はスウェーデンとか北欧の人ですけど、
アフリカの原始芸術の動物とかの影響を受けた作品を作っていました。

  

  ギューム・コルネイユ の作品

   ⇒http://www.artcba.com/amm/itm/07-0409003.htm
 
  http://www.tokinowasuremono.com/artist-d00-hoka/065G_CORNEILLE.html



日下

そういう大局の視点から制作をしていらっしゃるんですね。




田村茂直さん
大局というほどのことでもないですが。

だから依頼された制作の仕事などの
設置に関わるような実際的なことは考えますが、
社会との接点を考えて作るということは無いんです。



日下
そうですか~。
とても、本質的なお話をお聴かせくださって
ありがとうございました。



アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館-遺伝子のテーマ

遺伝子のテーマ
素材 レジン



アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館-遺伝子のテーマより5  700
遺伝子のテーマより 5
素材 レジン


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今回、彫刻家の田村茂直さんに初めてお話を伺いました。


田村茂直さんのご登場の経緯は、
2012年10、11月ご登場の斎正弘さんが
社団法人 宮城県芸術協会 彫刻部主任で、

宮城県美術館創作室ご勤務でもいらっしゃる彫刻家 

菅原裕さんをご紹介下さいました。
その菅原裕さんが田村茂直さんをリレー作家としてご紹介下さいました。


初めて、お話をお伺いしましたが、飄々と訥々と、
お話をお聴かせ頂けて、とても有意義な時間でした。


お話を終えて後から気がついたのですが、
私自身も若いころに、
田村さんの作品 を拝見していたことが
ありました。


アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館

その時は、自分が未熟過ぎて感知できなかったのですが
今は、とても内容豊かな、造形表現としてとっても興味深い
作品を創っていらっしゃると感じます。


皆さまも、田村茂直さんの作品をご覧になって見てはいかがでしょうか。


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◆田村茂直さんのホームページ






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