Michael Jackson "This Is It" | Minako Ikeshiro' s Tokyo Journal

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音楽ライター、池城美菜子のblog。2016年8月19日に『ニューヨーク・フーディー〜マンハッタン&ブルックリン・レストラン・ガイド』を出しました。

 遅ればせながら、マイケル・ジャクソンの『This Is It』を観て来ました。2週間限定公開のため、前売り券が飛ぶように売れているとのニュースでしたが、火曜日の5時という中途半端な時間帯を選んだせいか、34丁目と8番街の映画館はガラガラ。

 中心となるのは、キャリア最後のツアーになると公言していた、ロンドン公演のリハーサル場面。

 前評判が良かったので相当楽しみにしていたのですが、その期待をも軽々と越える面白さでした。

 仕事柄、すべてが出来上がった本番を観る機会が多いため、それ以上にリハーサルや舞台裏が気になります。人一倍、この映画を楽しむ素地があったのは自分でも認めますが、マイケル・ファンなら、観て絶対に損はない作品でしょう。

 ネタバレにならない程度に、とくに印象的だった点を挙げます。

 まず、ミュージシャンとしての、マイケル。

「マイケルは、自分の曲の構成もキーも分かっている」との音楽監督の言葉通り、ミュージシャン達に的確に指示を出す姿が新鮮で。ダンスを含めたエンターテイナーとしての顔が有名ですが、彼は音楽に対する造詣も一流なのです。

 それから、マイケルの言葉遣い。
 
「マイケルの肉声」ですぐ思い出すのは、囁くような“I Love You”。あとはほとんど喋らなさそうな彼なのに、ふだんの言葉が凄くカッコ良くて、飛ばされました。

 歌い出すタイミングを見送ったマイケルに、舞台監督が「どうかしました?」と尋ねたら、

 “I’m sizzling”(うん、ちょっとジリジリ来てるの)って答えたり。

 キーボーディストに向かって、

 「もうちょっと引きずるように弾いて。そう、朝、無理やりベッドから出る時みたいに」って言ったり。

 一カ所だけ、「音が大きすぎる、なんか、耳を誰かに拳で叩かれているみたいだ」と言った時は、死因として疑われている合法ドラッグを採っているのでは、と、ちらっと思ってしまいましたが。
 
 最後は、マイケルの服装。

 リハの時でも、衣装みたいなキラキラ、ギラギラした服を来ているのです。カジュアルにまとめても、水色のTシャツにオレンジのジーンズ、白っぽいジャケットという具合で、「フツーの人はなかなか似合わないけれど、マイケルが着るととってもカッコいい」服がいっぱい出て来ます。今年、流行っている80‘s調の尖った肩の細身ジャケットは、「元祖!」という感じで、早いうちから着ていたリアーナよりも似合っていました。

 一般的には、ダンサー達のボタンのついたシャツにスウェットもしくはジャージーを合わせて、さらにポークパイ・ハットを被る方がマネしやすいので、流行るような気がしますが。そうそう、オーディションを勝ち抜いたダンサー達がリハでも一切気を抜かず、すばらしいダンスを披露するのも見どころの一つ。ただ、平均年齢がマイケルの年齢の半分に行くか行かないかという若い彼らの中心で踊っても、やっぱり一番華麗で上手いのがマイケル、というのも凄まじかったです。

 DVDになったら、とっとと買おうと思います。