(カナダから見た)リオ五輪雑感:心に残った場面②(訂正あり!) | 覚え書きあれこれ

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記憶力が低下する今日この頃、覚え書きみたいなものを綴っておかないと...



最後にご紹介したカナダの選手が旗手に決まっているとの記述に誤りがありましたので訂正しています。すみません!



私の「リオ五輪、心に残った場面シリーズ」のつづきです。


いつも五輪の後半は陸上競技が中心になりますが、前半は注目すべき競技が多いように思います。

特に私が好きなのは体操、柔道、水泳。


ってことで


4)日本の男子体操

団体予選では意外なミスが相次いでちょっと不安な展開になりましたが、終わってみれば日本の貫禄の優勝。

不利かと思われたローテーションが実は功を奏した、というところがミソと言えばミソですが、これも日本チームがそのような流れを作る演技をしたから言えること。

中でも若手の白井選手の貢献が大きかったように思えました。もちろん、王者・内村航平選手の存在は絶大ですが、白井選手の叩き出した床や跳馬のスコアがずば抜けて高かったので、これで日本チームがホッと一息つけたのではないかと思います。


そして個人総合。

最後の最後で逆転して、ウクライナのヴェルニャエフ選手に勝った内村選手。あの勝利は彼の最後まで諦めず、人事を尽くして、、、の姿勢が引き寄せたものだったと思います。

はっきり言って、私の見ていたカナダ側の放送で解説者は、最後の鉄棒が始まる前に「ヴェルニャエフが負けるには落下するくらいしか考えられない」といったようなことを言っていたのです。点差からすると、私もそうだろうと納得していました。

ところが、ところが、テレビの放送って、実際の競技の進行具合からはほんの少し遅れているのでしょう。

鉄棒の最後の演技が終わって、ジャッジのスコアを待っていると、アイパッドに現れた順位表には、ヴェルニャエフ選手が内村選手の一つ下に入り込んできたのです。


「ぬおおおおッ!」


なんという幕切れ。


日本びいきの者にとっては嬉しい場面でしたが、これはウクライナ側のファンにとってさぞつらい結果だったでしょう。

しかしその後の日本のニュース報道を見ると、ヴェルニャエフ選手は記者会見で潔く、負けを認め、内村選手に向けられた(「最後のスコアリングはジャッジからのえこひいきもあったのでは?」といったような)質問に対して助け舟を出したと言われていました。

例えば:
内村2連覇 会見で垣間見えた頂点を争った2人の友情 ベルニャエフ「無駄な質問だ!」

(デイリースポーツ)

競技者同士のリスペクトが見られた、良い場面でしたね。


ただ、動画から判断するところによると、選手たちは記者会見で同時通訳の声を聴きながら質問に答え、彼らの答えもまた通訳を介して伝えられている。

ということで

内村選手への質問は英語から日本語へ、彼の答えは日本語から英語へ

ヴェルニャエフ選手への質問は英語からウクライナ語、彼の答えはウクライナ語から英語へ

と、変換されていたのだと思います。


じゃあ、日本の記者さんたちは一体、ヴェルニャエフ選手の言ったことを何語で聞いていたのか?

ウクライナ語が分かるとは思えないから、英語、またはさらにそれが英語から日本語へと訳されたもの?


そこでヴェルニャエフ選手の言ったことを、英語の訳で聞き取った英語メディアの記者の書いたものを読んでみると、彼が言ったのは:

“We all have feelings,” he said, “but we know the scores are fair. All the questions are superfluous here.
ヤフースポーツ記事

All the questions are completely superfluous here… "
ウオールストリート・ジャーナル記事


ということでした。


これを

「今のは無駄な質問だ」


と訳すかどうかは判断の分かれる所でしょう。


私ならおそらく

「今ここでどんな質問をしたって意味がないでしょう」

というニュアンスでとらえると思います。


ちょっと違いますよね?

ウクライナ語から英語に訳した人によると、ヴェルニャエフ選手が言いたかったのは、

その特定の質問が無駄だ、ということではなく、

競技が終わったこの期に及んでどんな質問をしても意味がない、ということだったんじゃないかなあ。


まあ、実際に記者会見の場にいて、どんな間合いで、元の言語ではどんな言葉が発せられたのか分からないので推測の域を出ませんが。。。


なお、伊調選手、吉田選手に対して感じたこと(長年、競技のトップに君臨するための努力と苦悩)を、内村選手に対しても感じたのですが、それについてはまた別の記事にしたいと思います。


5)柔道

今大会における日本人の柔道選手の快挙は目を見張るものがありました。ほぼ全員がメダルを獲得して、前回のロンドン大会の成績を大きく上回った。

私の母は中でもベイカー茉秋君がお気に入りで、試合のある日はずっとメールが届いていました。私は初めて見る選手でしたが、彼の足腰の強さ、姿勢の低さにはすぐに気が付きました。後で調べてみたところ、重いベストを着てのすり足のトレーニングや、腰を落としてテニスボールを拾ったりして鍛えたそうですね?(サンスポ記事より)


でも私の心に残ったのは松本薫選手の3位決定戦の試合でした。


前回のロンドン五輪でただ一人、柔道で金メダルを獲った時には一気に「野獣」というニックネームで広く知られるようになり、人気が急上昇した。

その四年後、連覇の期待がかかっていたけれど、準決勝ではまさかの24秒スピード敗退。悪夢のような出来事だったことでしょう。


それでも気を取り直して、銅メダルをかけての試合ではしっかりと戦いました。


勝利が決まった瞬間の松本選手のなんとも言えない表情に涙が出ました。






ふっと目を閉じて、また開けて、

苦笑いにも見えるような口元。


とにかくメダルが獲れた、という安堵だったのか。

勝ったけど、これは金メダルではないんだ、と改めて思ったのか。


この場面にも四年間の長さを感じました。。。


6)水泳

普段なら水泳競技において、日本選手を断然応援する私なのですが、今大会ではカナダの女子がすごい頑張りを見せたので、ここではその中の一人を取り上げます。

16歳になったばっかりのPENNY OLEKSIAK選手





まだ高校一年生ですが、185センチの長身を生かしたダイナミックな泳ぎを見せてくれます。

まずは女子4×100メートル自由形リレーでアンカーを務め、見事に銅メダル獲得。


その翌日には100メートルバタフライに出場して銀メダルに輝きます。

この時、ゴールしてからしばらくゴーグルをつけたまま、電光掲示板の方を振り返ろうとしない様子が不思議でした。聞くところによるとこれはペニー選手の癖で、レースが終わってもすぐには結果を知ろうとしないのだそうです。ジンクスの様なものでしょうか?

でも二位になったことを知った時の表情がプライスレス。



うっそおおおおおお~~~~


次に登場したのは女子4×200メートル自由形決勝、またアンカーを務めてカナダを銅メダルに導きました。

これだけでもカナダの過去の夏季オリンピック出場選手の中で一大会最多メダル獲得数(3個)でトップに並んだのですが、まだまだ快進撃は終わらなかった。

六日目に出場した100メートル自由形決勝では50メートルターンの折り返し時点で全体7位。

そこから驚異的な追い上げを見せて、最後はアメリカのマニュエル選手と異例の同タイム優勝!


またまたゴールしてから、掲示板で結果を確認しないペニー選手。

ようやく振り向いて。。。




え、マジで?




わーい



というわけでオレクシアク選手は弱冠16歳でカナダのオリンピック史上に名を刻むことになったのでした。

インタビューを受けても当然のことながらまだまだ幼さが際立つ彼女ですが、勝負度胸は相当なものです。いつもレースの最後の15メートルは息継ぎをしないでガムシャラに泳ぎまくる、というのが持ち味だそうですが、今大会で獲ったどんなメダルよりも、大好きなミュージシャンで同じくトロント出身のDRAKEからインスタグラムで声をかけてもらったのが一番、嬉しかった、と言ってました。



訂正箇所!

なお、閉会式では彼女がカナダの旗手を務めることが決まっています。

↑ ここは見切り発信でした。確かに五輪前半が終わったところで彼女が閉会式での旗手最有力候補でしたが、今朝の新聞を読んだところ、これはまだ未定だったようです。その後、もう少しベテランのアスリートが良い成績を収めたため、まだ若いオレクシアク選手の指名は見送られるのではないかと言われています。

それこそ走高跳のドルーアン選手、あるいは乗馬のラマーズ選手(今大会銅メダル、過去二度の五輪メダリスト)、そしてドゥグラース選手たちも候補に挙がっています。



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始まるまで不安材料てんこ盛りのリオ五輪でしたが(実際、開催中もけっこう色々あったようですが)、やはりいつものように、アスリートたちの活躍によって我々観客は感動のるつぼに包まれてしまいましたね。


他にもいっぱい、取り上げたい選手や競技はあるのですが、取り急ぎ、五輪閉幕前に間に合わせようと思ってほんの一握りをフィーチャーしてみました。


この後、いよいよシーズン開幕間近になったフィギュアスケートに絡めて、もう一つだけ五輪テーマの記事を書きたいと思います。


ではひとまず、アップします。