(カナダから見た)リオ五輪雑感:心に残った場面① | 覚え書きあれこれ

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記憶力が低下する今日この頃、覚え書きみたいなものを綴っておかないと...




リオ五輪が終わろうとしています。あっという間だった気もするけど、改めて記事にしようと思ったら、色んな意味で心を打たれた場面、うれし涙、悔し涙を浮かべた選手たちの顔がよみがえってきます。

今朝も母から興奮したメールが届き、日本は現在、陸上男子400メートル・リレーの歴史に残る銀メダル獲得に沸いていると聞きました。




私も昨晩、リアルタイムでその試合を追っていましたが、当然、カナダではボルトの三連続オリンピック三冠達成が注目され、




その次にはカナダのチームがアメリカの違反によって三位に繰り上がったことの方が大きく取り上げられていました。




この時点ではまだ惜しくも四位、ということでCBCのインタビューを受けていたチームカナダ



日本の2位については「驚きの快走」とは言われていたものの、試合直後はどうやらどこかのチームが違反を犯してDQになったとのニュースが出て、もしかすると最終ランナーのケンブリッジ選手では?といった映像が画面に映し出されました。

観ていた長男と私とで「えええええ!そんなアホなああああ!」と、叫び声をあげたのは言うまでもありません。




ところがその後、直線でのライン踏みは違反ではないことがコメンテーターによって説明され、どうやら3位でゴールしたアメリカ・チームの第一走者と第二走者の間のバトン受け渡しが原因でカナダに銅メダルが渡ったことが判明。



少なくとも私にとっては最高の結果となりました。


というわけで、今回の五輪雑感記事もカナダで観戦していた、という観点から、主にカナダ選手と日本選手に特化して書きますのでご了承ください。

また、取り上げる場面・試合は全て、私が自分の目で(リアルタイム、あるいは録画で)見たものに限定して、ニュース記事などの情報だけから知ったものは除いておきます。


ではまだ記憶に新しいところから始めますと:


1)カナダの陸上新鋭、ANDRE DEGRASSE の台頭




ボルトと「じゃれ合う」姿が話題となったカナダの若手スプリンター



日本の家族にも再三、言ったのですが、アンドレ選手の名前は「デグラッセ」ではなくて、「ドゥグラース」と発音します。

マロングラッセちゃうんねんから

彼はまだ弱冠21歳、四年前まではバスケットボールが一番好きなスポーツだと言って憚らなかったところ、(バスケのいで立ちで、借り物のスパイクを履いて)お遊びで参加した陸上競技の試合でぶっちぎりの優勝、そこにいたコーチに才能を見出された。。。

と、こう書くとなんだか漫画みたいなシンデレラ・ストーリーですが、そこから本当に数年間で全米学生大会の短距離二冠、昨年はパンナム大会で二冠達成、そして世界選手権で銅メダルを獲得して一気にスプリント界に名を広げることになったのですから、多大な期待がかかっていました。

若さのなせるわざか、その期待をプレッシャーとは思わずに見事、このリオ五輪でも100メートルで銅メダル、200メートルにいたっては銀メダル。そして昨日のリレーで最後にバトンを6位で受け取ると一気に前の選手を抜いて4位まで上がり、アメリカが逃した銅メダルを受け取る位置までこぎつけたというわけです。

今後が本当に楽しみなドゥグラース君でした。


2)女子レスリング

この競技に関してはなんともほろ苦い後味が残りました。

女子レスリングの初日、あまりにも劇的な日本選手の金メダル・ラッシュにただただ感動。どの試合も最後の最後に逆転して、まるでドラマのようでしたね。

私にはこの日の伊調選手の姿が一番、印象的でした。

一口に「オリンピック四連覇」、って言いますが、驚異的であるとしか思えません。

最初の五輪優勝の後からだけを考えても、

20歳から32歳まで、

一般人ならば人生の中でもっとも色々な変化の起こる時期の一つであると思います。

それを延々と鍛錬に費やし、各種大会や世界選手権を経て、五輪のたびにピークを合わせ、体調が不完全でも気力で補って金メダルをもぎ取る。一体どんな過酷な道のりだったでしょうか。

彼女が今回優勝したとたん、喜びを爆発させるような様子が見えなかったのは、おそらくこれまで全ての思いが背中にのっかったまま、すぐには荷を下ろせずにいたのではないかと思いました。





それからしばらく経って、じわじわと湧き上がって来た笑顔の貴重だったこと!

ああもう、こうやって書いているだけでまた胸が詰まります。伊調選手、おめでとうございました。


さあ、伊調選手に続いて吉田選手が同じく四連覇か?これ以上、確かなものはないように思えず、次の日もレスリングの放送をアイパッドで追いました。

カナダの解説者たちも「吉田はレジェンド、無敗のチャンピオン」と盛り立てた決勝、画面に映った吉田選手の顔色が気になりました。

前の日の伊調選手も気迫のこもった、鋭い目線でしたが、吉田選手の場合は切羽詰まったものがありました。

もちろんその後の結果ゆえによけい、そう思い出されるのかも知れませんが、隣の部屋にいる息子に「あー、なんかやな予感」と言ったのは憶えています。


試合後半になって、きっと他の日本選手同様に劇的な逆転をやらかしてくれると願っていたのですが、相手のマルーリス選手がなんだか勢いづいているのが伝わって来て怖かった。


ショッキングな銀メダル。

でもでも、吉田選手は謝ることなんて何もない。自分のために泣くのは仕方がないけど、それ以外の人のために悲しまないでほしい。観ている者は皆、そんなことを望んではいない。

ただただ、お疲れ様でした、ありがとう、と言って抱きしめてあげたい。


ああもう、これも書いてて涙が出るわ。


ところで、実は女子レスリングではカナダの選手が75キロ級で優勝してるんですよね。エリカ・ウィーブ選手、見事な決勝戦での圧勝でした。27歳で初めてつかんだ金メダル、満面の笑みでインタビューに答えていました。



試合後、コーチを肩車して嬉しそうなエリカ選手。この肩車は確か、吉田選手がお父さんにしたのが始まりではなかったかと思うのですが、もしもそうだとしたらこれもまた、どれだけ世界中の選手がSAORI YOSHIDAを英雄と仰ぎ、彼女の様になりたいと思ってきたのかの証だと言えましょう。


3)高跳び競技のカナダ人選手たち

棒高跳びで優勝したブラジルのダシルヴァ選手と、フランスの世界記録保持者ラヴィレニー選手との闘いはサスペンス満々だったけれど、試合中、そして表彰式時のブラジル人ファンが起こしたブーイング事件については残念、としか言いようがありません。

しかしその陰で実はカナダにとってもちょっとしたドラマがあったのです。


前回の北京世界陸上選手権で優勝したのはカナダのShawn Barberといって、当時21歳の若い選手でした。




リオでも当然、メダルあるいは優勝を期待されていたのですが、あっけなく決勝ラウンドでパーソナルベストから40センチ以上も低い5メートル50センチしかクリアできず、10位に甘んじました。

試合直後、失意の中でもしっかりと笑顔でインタビューに答える姿が好感を呼びました。



一方、走高跳でも世界チャンピオンはカナダのDerek Drouin、こちらはリオ五輪でも素晴らしい試合運びで優勝を遂げました!




競技前はCBCのフィーチャーで、自虐ネタっぽい実験を披露してこれまた好感度アップ。





ヨーク大学の図書館の前で、通りかかる学生たちに「ぼくは誰でしょう?」と聞き、選択肢として「成り上がり億万長者、世界チャンピオン、有名作家、ギネス記録保持者、有名ミュージシャン、政治家」を挙げたところ、

正解者はわずか数人、それも「何の競技の世界チャンピオンか分からん」と言われてしまいました

しかもこの時点でドルーアン選手は前年にトロントで開催されたパン・アメリカン選手権で優勝もしていたのです。。。

優勝インタビューでも非常に謙虚で静かな振る舞いが好評で


「やっぱりカナダ人だけある」



とCBCの解説者たちに言わしめていました。


ちなみに行間を読むと、ここは

「=(自己アピールしまくって派手な)アメリカ人と違って」

というカナダ人特有のいじけた自慢がこめられているのです。



と、長くなってきたのでここでいったんアップ。

(つづく)