。  具体的に何をしたかというと,ゲームビジネスのポートフォリオを設定し,牧場物語の企画を“その中の一つ”として位置づけたという。  「事業が成長をするためには,新しいことに挑戦することが必要不可欠です。今までやってきたことをただ繰り返すだけでは,大きな成功は望めません。しかし一方で,そもそも計画すら立てようがないものにお金を出す経営者はいません」  「そこで私がとった戦略は,確実に需要が見込めるであろう企画や,海外のゲームで日本にマッチしそうなものを輸入する企画など,複数の事業をまとめて実施する“ポートフォリオ戦略”でした。そこで儲けた利益を使って,まったく新しいチャレンジをする……そういうことを提案しました」  ここでゲームの単体の企画を飛び越えて,会社の事業戦略そのものまで提案してしまうあたり,和田氏の実業家としての氏の側面が見えてくるわけだが,これ自体はとても大切な考え方だろう。ゲームとはいえ,ビジネスである以上,単に「作りたい」「面白い」をアピールするだけでは駄目,という意味でもある。  ともあれ,まったく前例のない企画だった牧場物語は,そうした回り道(?)を経て,開発をスタートさせる。それは,企画を立ててから2年後のことだったそうだ。  「しかし,この提案は思わぬ効果ももたらしてくれました。この2年間の間に,経営者に対して実績を示すことができ,信頼を得ることができたからです。また,2年間ゲーム制作/ゲームビジネスの現場に接することで,開発やプロモーションなど,ゲーム事業をより深く理解することもできました。結果,牧場物語の企画を立てた当初より,ずっと現実的で,説得力のある計画を立てられるようになり,ドラクエ10 RMT,開発の予算も少しだけですが増やすことができました」  「ここで私が学んだことは,ビジネスを成立させようとする場合に一番大事なのは,プロジェクトを判断してGoサインを出す人の信頼をいかに獲得するか。すべてはそれにかかっているということです」  「そのためには,マーケティングデータや綿密な資料といったことも大事ですが,それよりも,ドラゴンクエスト10 RMT,結局は地道に実績と結果を積み上げて,信頼を勝ち取っていくことが大切なのだと思いました。もちろん,そのすべてを上手くこなす必要はありませんが,そこで自分が何をやってきたか。それが,いろいろな面での信用に繋がっていくのだと思います」 ゲームで“仕事をする”という概念  さて,ようやくこぎ着けた牧場物語の開発だったが,制作にあたっては,実際の仕様を書けるように企画の概要を示す必要があった
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