。和田氏が言われたままに目の前のキーを叩いてみると,画面の中の畑から一斉に“芽”が出たという。「思わず『おおー!』と歓声を上げました」と,和田氏は感慨深い面持ちで振り返る。  「ただのゲーム,モニタの中での出来事だったんですけど,あの初めて芽が出た時の感動,新鮮な驚きは,今でも忘れられません」  和田氏は,ここに来て「このゲームはいける!」という確信を持ったそうだ。「よし,この調子でどんどん作っていこう!」,気を良くした和田氏は,チームのメンバーにそう声を掛けながら,さらに開発にのめり込んでいったという。  ゲームの開発に合わせて,世界観やキャラクターも練り込んでいった。ほのぼのとした雰囲気がウリの本作だが,人生の中の大イベントである“結婚”という要素を入れることを決め,花嫁となる5人のヒロインを作った。さらに,子どもでも楽しめるようにファンタジー要素も入れ,今の牧場物語の世界観が出来上がっていったという。  ちなみに,和田氏は当初,本作のタイトルを「人生牧場」にしようと思っていたらしいのだが,本作のシナリオ/世界設定を担当した当時のスタッフ?宮越節子氏がそれに大反対,結果として,宮越氏が提案した「牧場物語」にしたのだという。  「今考えると,自分の考えた“人生牧場”にしなくて,本当によかったと思います」 数々の困難を乗り越えて  開発は順調に進み,いよいよテストROMを作る段階に入った。  しかし,今度はここで「処理落ち」という問題が発生する。それぞれパーツの状態では動いていたプログラムが,併せてみるとまともに動かなかったのである。用意されたたくさんのオブジェクトが仇となったと,和田氏は言う。  しかし,単純にオブジェクトを減らしてしまっては,ゲームがつまらなくなってしまう。和田氏は,DQ10 RMT,プログラマーにその意図を伝えながら,プレイヤーには見えないところのグラフィックスを描画しないようにするなど,プログラムを全面的に見直すなどして,少しずつゲームを軽くする作業を進めていったそうだ。  こうして,処理落ちの問題にもめどが立った頃,さらにとんでもない問題が発生する。なんと,開発を依頼していた制作会社が倒産してしまったのだ。  「そのときはもう,目の前が真っ暗になりました」 と,和田氏は振り返る。開発の社長は行方をくらまし,ドラクエ10 RMT,結果,未完成のデータだけが残された。絶望的な気持ちになりながらも,和田氏は,プログラマーの山楯氏に残されたデータの中身を解析してもらったという
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