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作家・松本清張生誕100年記念映画
憲一(西島秀俊)と禎子(広末涼子)は昭和32年8月、銀座の高級レストランでお見合いし、結婚した。
憲一は金沢赴任していたが、後輩が行くことになった。
仕事を引き継ぐための最後の金沢行きになるはずだった。
「1週間なんて、すぐだ」2人は窓越しに別れをした。
それが、禎子と憲一との最後だった。
帰ってくる予定の8日、禎子はすき焼きを作って待っていたが、憲一は帰って来なかった。
先に届いた荷物を整理していたら、2枚の建物が写ったモノクロの写真。
金沢出張所から7日には発っているとのこと。
禎子は、義兄夫婦を訪ね、金沢へ行くことを伝えた。
汽車で寝ているうちに朝を迎え、金沢に到着した。
金沢では、本多(野間口徹)と所長の青木(本田博太郎)が迎えにきていた。
羽咋(はくい)の海岸で30代の男性の遺体が上がったという。
おっとり刀で車で羽咋に向かった。
「激しく打ちつけとる」警官がゴザを剥がし「旦那さんかね」
禎子は首を振った。
津幡の下宿も1年半前に売り払っていたそうだ。
青木「どうや?おかしいやろ。奥さん」
禎子は宿に泊まった。
女中「雪起こしの雷、明日は大雪やわ」
憲一が営業で仲良くしてもらったと言う会社がある。
本多「室田社長にお話を伺ったら・・・」
青木は叱責した。「大事なお得意先。奥さんの個人的ならことにしてもらわんと。つまらんことでご機嫌を損ねたら・・・」
憲一は、室田からすぐに気に入られたそう。
白銀町で路面電車を降り、室田煉瓦の前。
近く、市長選挙もあるという。
工場の事務所に来るように言われた。
煉瓦の仕上がりが悪かったと、工員が責められていた。
室田(鹿賀丈史)「首くくっている暇があったら、片町言って仕事探してこい」
室田「旦那が戻って来ないとは。大概は女ですな。でもあんたなら戻ってくる」
妻の佐知子(中谷美紀)は上条保子の市長選挙の手伝いをしていた。
室田「鵜原(憲一)のやつ、栄転と結婚が重なったのに、妙に沈みがちだった。あいつの私生活は、私より家内の方が詳しかった」
選挙事務所に石が投げられ、選挙スタッフが怖がった。
女性が立候補することをよく思わない人がいるようだった。
佐知子の運転で自宅の敷地に入った。
それは、禎子が見た写真と同じ邸宅だった。
週末の6日にお別れの夕食で、鵜原は「オンリーユー」と言う歌まで歌ったそうだ。
佐知子の弟の亨が家にいた。
憲一は昔、立川で巡査を務めていたことがわかった。
義兄・宗太郎(杉本哲太)が到着。
京都出張からこちらに駆けつけたと言う。
「禎子さん、元気を出してください。あいつは大丈夫、私が見つけ出しますから」
鶴来の加能屋という料亭で、宗太郎が泡を吹いて倒れた。
サングラスに真っ赤なコートの女性が降りて行った。
ウイスキーには青酸カリが致死量を超えた量。
警察が宿に確認したら、宗太郎は1日早く着いていたという。
宗太郎の死去の知らせを電話で聞いて、妻・道子が悲鳴をあげた。
警察に佐知子が別件で訪ねて来たという。
本多も合流して3人になった。
禎子は「宗太郎が憲一と待ち合わせていたのでは」と想像して、恐ろしくなっていた。
本多は「2つの事件は関係しているとは限らない」
禎子「このまま宙ぶらりんな状態よりも、いっそ悪い結果でも・・・」
佐知子「簡単に諦めてはだめよ」
室田邸宅では儀作が自宅パーティを開いていた。
室田「どうだ?選挙ごっこは上手くいっているのか。お前、本当に鵜原とは何もなかったのか」
強引にキスしてから「本当はどんな女なんだ」
宗太郎の葬式で東京に戻ることになった。
本多は駅に見送り。
禎子が思い出したように言ったのは「室田さんの会社に手の荒れた受付の女性(木村多江)がパンパンしか使わないようなスラングを使っていた」
禎子は阿佐ヶ谷で葬儀の準備をしていた。
本多から電話が入った。
受付の女性は田沼久子と言って、社長の知り合いで、3日も休んでいる。
田沼の旦那も最近自殺していた。
死んだ旦那と社長の関係を知っている者がいない。
噂では社長の愛人ではないかと。
本多が、調べているうちに確信に迫って来た感触を得てワクワクしだした。
本多が田沼の自宅を訪ねたところ、包丁で人刺し。
外から窓にもたれかかった本多の最期だった。
警察に青木、禎子も来て、本多の遺体を確認した。
田沼久子が指名手配されていた。
田沼の内縁の旦那の曽根益三郎は、金剛で飛び降り自殺をして、8日には亡くなったと聞いた。
禎子は、田沼の実家に来た。
もう一枚の写真に写っていた古民家だった。
部屋から、禎子が上野駅で渡したバターキャラメルの箱が見つかり、憲一が久子の内縁の旦那の曽根だと確信した。
金剛の断崖で涙を流した。
禎子は警察に来て、久子が突き飛ばしたのではないかと語った。
曽根には遺書があった。
「この煩悶を抱いて永遠に消えることとする」筆跡が、憲一のものと一致した。
禎子は選挙事務所を訪ねた。
佐和子「あなたは十分に頑張ったんだと思う。冷静な判断ができなくなっている。あとは警察に任せて東京でゆっくりしていた方がいいわ。お別れね」
2人は握手した。
禎子は立川警察の交通課に行き話を聞いた。
憲一は昭和23年、風紀係をしていたという。
夜中に、米軍の通う繁華街で娼婦の日本人女性を取り締まる仕事をしていた。
鵜原は悩んでいたという。
一昨日同じ新聞(久子の記事)を持って来た者が尋ねて来たと言うので聞いたら、室田儀作だった。
娼婦が住んでいた大隈ハウスを訪ねた。
管理人「エミーの過去をほじくって笑いものにしようとしてんだろ」
当時の写真を見せてもらった。
笑顔の田沼久子、佐知子も写っていたので驚いた。
佐知子はマリーと呼ばれていた。
「2人とも足を洗ってここを出て行ったよ」
禎子は急いで列車に乗った。
禎子は、2年前に3人が偶然金沢で再会したのが事件のきっかけだとわかった。
宗太郎も久子のことを聞いて、久子を訪ねていた。
その頃、佐知子と久子とが車に乗っていた。
佐知子は急ブレーキをかけた。
「ごめんなさい。最近エンジンの調子が悪くて」
佐知子はさらに「あなた騙されていたのよ。若くていい女がいたから、そっちに乗り換えただけよ。東京に行って生まれ変わりたい、そんなこと言っていたのよ」
佐知子は車を降りて、車のエンジンを見た。
久子「マリー、あの人に初めて会った日のこと、覚えているかい・・・」
(戦後の回想シーン)逃げ込んだ学校で2人は一緒に歌って隠れていたところ、憲一が逃してくれていた。
憲一は生前、佐知子に「仕事を世話して欲しい女性がいるんです。生まれ変わりたい」
佐知子「あなたのような男がいつも女を苦しめて来たのよ。あなたが死ねばいいわ」
曽根の自殺を偽装を勧め、2人は断崖に来た。
憲一は遺書を書いて、久子の連絡先を渡していた。
佐知子(この人はあたしがパンパンだったことを知っている)
佐知子が憲一の背中を押していたのだった。
気づいたら、佐知子はナイフを持っていた。
久子「次はあたしかいね? みんなあたしがやったことにするつもりだったんだ。あたしはもう、何も信じられないよ。あんたは生き延びて、私の分まで生きればいい。またいつかぁ会おうね」
久子は自ら崖に身を投げたのだった。
佐知子は慌てて久子のバッグを車から出し、転んだ。
久子の母子手帳を発見していた。
佐知子は家に戻り、怒鳴り、頭を柱にぶつけ顔中血だらけになっていた。
「私がやったんじゃない」
それを聞いた儀作「誰も殺してない。全て運命なんだ」
禎子の推理では宗太郎も本多も、佐知子に殺されたのだ。
上条保子の選挙事務所は移転していた。
田沼久子の遺体が上がったとラジオのニュース。
佐知子は顔や腕中に怪我をしていて、サングラスをかけていた。
禎子も選挙事務所に着いて、これから始まる当選会見を見つめていた。
亨(佐知子の弟)「すべてわかったんだね」
佐知子と亨は戦後両親を失って、立ち直ってきた。
その頃、上条保子の当選の速報が入り記者がなだれ込んでいた。
亨「姉さんを許してもらうわけにはいかないよな。姉さんは、人を殺したことを忘れている」
儀作が警察に自首していた。
愛人の田沼久子と共謀してやったと思われた。
連行される間、儀作は警官のピストルを奪って自害した。
その頃、佐知子はサングラスを外して当選のスピーチ。
違和感を感じた禎子は「マリー」と叫んだ。
佐知子の表情が険しくなった。
禎子をにらみつけ、涙を流し、そのままばったり倒れた。
禎子は、外で佐知子を見つけて、ビンタした「あなたは私の夢を奪った」
佐知子「わかってるわ。謝っても謝りきれない。どうしても伝えないと。あなたとなら、生まれ変わることができる。鵜原さんはあなたのことを愛していた」
禎子がさらに佐知子をとどまらせようとしたが、亨が捕まえた。
佐知子は車でどこかへ行ってしまった。
禎子はその場でへたり込んで、涙を流した。
警察も近づいてきた。
BGM「オンリーユー」
1週間後、佐知子も遺体となっていた。
禎子は実家に戻り、写真を焼いた。
「夫は2人のことを忘れまいと、この写真を撮った。夫が夢見た新しい時代、それはどんな時を刻むのだろう」
銀座の画廊には、亨の描いた佐知子が飾られていたが、斜めに傷が入っている。
(平成21年、電通・東宝 作品)
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「禎子探偵」の名推理は見ていて面白かったです。
英語を勉強すると、娼婦の使うスラングまでわかるようになるのでしょうか。
受付に来たビジネスマンが感づかずに、禎子にピンと来たのは、禎子に英語を教えた人もポンポン関係者だったのかな。
どう物語と選挙とを重ねていくのか、気になってました。
室田社長の行動が意外でしたが、妻に嫌気が刺すのではなく、身代わりになるとは。
妻の弟まで同居してさせているくらいだから、妻に頭が上がらなかったのでしょう。
見合い結婚というのも、相手のことがちっともわからないから不安があることが改めてわかりましたが、憲一と禎子のことは、誰が紹介したのでしょう。
最後まで見ると、中島みゆきさんの迫力ある歌『愛だけを残せ』に心打たれます。
前回の「松本清張の“顔”」の記事はこちら(2022年7月28日)
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http://ameblo.jp/miyacar/entry-12755311688.html
では、明日。