ちょっと長いブログになりますが、今日は最後まで読んでもらえると嬉しいです。(o^∇^o)ノ


昨日、明倫茶会に行ってまいりました。

<私の過去の明倫茶会のブログ>
 ジョンケージ生誕100周年記念茶会
 明倫茶会「職人魂はおもてなしの心と共に…」


さまざまなジャンルでご活躍の方を席主に招いて、毎月一度、面白い趣向で行われている茶会ですが、この3月は、この京都芸術センター(旧明倫小学校)の十周年を記念しての大茶会が行われました。


「トキシラズの庭」明倫大茶会
 ー3人による3つのお茶会ー




まず一席目にお邪魔致しましたのは、「桜守(さくらもり)の茶会」


席主は、やなぎみわさん。
(ぜひお名前をクリックして下さい)
女性の生をテーマにした独自の世界感を写真や映像などで表現される…現代美術クリエイターさん(←そうよんでよいのかな?)です。


待合いで写真集など拝見して、やなぎみわワールドに少しずつ足を踏み入れていきます。
女の老いをテーマにした写真集「マイグランドマザーズ」など、かなり面白かったです。
o(^o^)o ワクワク


お茶室に案内されますと、きちんとおきものをお召しの少しご年配のご夫人と私くらいのお年の女性の2人連れと、これまたお着物の中年男性が、正客席を譲り合ってモメモメ。

「あ~あ、やってはるわ~。」
よくある風景です。

で結局…ご年配の女性が正客に。


しつらえは…

$りえのきものであれこれブログ

床の間には到底入りきらず茶席中を覆い尽くしそうな見事な苔むした八分咲きの桜に、柳が添えられ…暗い部屋に桜だけが上から照らされ、怪しい蔭を落としています。


お点前が始まり、粋なおきものをお召しのやなぎさんが席中にお入りになります。

柳桜(やなぎさんのお名前にかけて)と名付けられた、桜色の道明寺のお菓子を頂いたりお茶を頂いたりしながら…やなぎさんのお話を聞きます。
かなり緊張された様子。


正客の年配の女性もお話しされます。
「いやぁ、みごとな桜どすなぁ、どこから持ってきやはったんどす?」
こりゃ京都弁というより、完全なこってこての花街言葉…えらい人が正客に座らはったもんどす。


やなぎさんも困った様子で、ぎこちない対応。


やなぎさん「うまく詠めませんが、桜にちなんだ和歌を一つ詠ませて頂きます。『花ざかりに京のみやこを見やりてよめる』と前置きがございまして…『みわたせば柳桜をこきまぜて 京(みやこ)ぞ春の錦なりける』」


すると、最初に正客席を年配の女性と譲り合って結局三客に座っているインテリ風のきもの姿の男性が…
「ああ、素性ですな。古今和歌集の。」


やなぎさん「まぁよくご存知ですね。」

インテリ男性「いやまぁ、好きなだけですけどねぇ。たしかに季のええ歌ですけど、出来はイマイチですな。『こきまぜて』いうのやらがあんまり…、いやすんませんな、えらい気の悪いこといいまして。和歌なんか個人の好みですのにな。」

やなぎ「…そうですね。はは…。」


なんか嫌な雰囲気です。{{{{( ▽|||)}}}}ぞぉ~~~~~



やなぎ(敬称略)「ご存知とは思いますがここは元は明倫小学校で、今はこうして京都芸術センターとして使われているんですが、運動場のところに、幹ももう空洞になってるような細いおばあちゃん桜がありまして、本当はそこで野点がしたかったんです。」

へ~、そんな桜知りません。


「でも、この小学校は近隣の方のかなりの援助で出来ている学校でして、運動場は近隣の方が使われるので…結局、運動場の使用は許可が降りなかったので、今回はこうして茶室になりました。」


(・_・D フムフム
そういえば、こんなイベントの日なのに、中央の運動場ではおっちゃん達がテニスをしてましたな。

この小学校が廃校になってからも、こうして芸術センターとして使われているのは、この学校が大層特別だからでもあります。
西陣の旦那衆が、自分たちの子供達にしっかりした文化を学んで欲しいが為に、町の人達が大変な出資をして作られた本当に素晴らしい建物なんです。
ここは町の財産でもあるんです。


インテリ男「それもよろしかったやろねぇ。あの咲いたり咲かなんだりする気まぐれなおばあちゃん桜。今年はよう咲いてる方ですしなぁ。『咲けば散る咲かねば恋し山桜 思ひたえせぬ花のうえかな』いいましてな。」

やなぎ「本当に和歌にお詳しいんですね。」

インテリ男「いやいや、ホンマに好きなだけですわ。」

正客「まぁ~それにしても、近所の方もそんなん言わんと使わしてくれはったらよろしいのになぁ、いけず言わはりますなぁ。」

インテリ男「ほんまですなぁ。」

やなぎ「まぁ、芸術センター設立時からのお約束らしいですから…。」


(- -) (- -) (- -) (- -) シーーーン


詰めに座っていらした、また別の中年のおきもの姿の女性が、「あの…あの…すいません。」
と口を開く。

「私、この近所の者で、明倫小学校にも通てたんですけど…。」

正客「いや!そら失礼致しましたなぁ。えらいこと言うてしもうて。かなんわぁ。ホホホホホ。」


近所の女性「私らは、こないしてこの小学校が若い人らに使てもろてんの喜んでるんですえ。明倫茶会かて折角やし、毎回申し込んでるんですけどねぇ、なかなかあたらへんのですけど、今日は当たったんで喜んで寄せてもうたんです。うちのおばあちゃんらかて、喜んでる思いますえ。」



なんか、またややこしなってきた…。



正客「いやぁ、ご近所の方がいらしたんやったら、うちらなんかがこんな高座してしもて、失礼なことしてしもたわ。ホンマかんにんしておくれやす。」

近所の人「いえいえ。そんなん、楽し過ごしたらよろしいねん。桜も綺麗やし、色んな方々がこうして集まってお茶よばれてで、よろしいやんか。」


う!なんかこっちの人も花街じゃないけど、こってこての京都の真ん中の人…。意地悪感が沸々と出てきてる。

そんな感じで、京都の嫌~な感じを丸出しにしたこの3人が、嫌~な感じで会話をしておりました。
しかも何か声でかいし…。

だいぶ不快。




近所の人「(正客さんに向かって)祇園の方ですよね。」

正客「いや、そんなん、わからはります?」
(活字にしても伝わらないのが残念ですが、使う言葉も違いますけど、イントネーションから発声から何もかもが、完全な祇園の花街言葉です。)

インテリ男「そらわかりますわ。ねぇ。(やなぎさんに)」

やなぎ「いや、私、京都じゃないので、京都弁はわかりません。」

インテリ男「京都弁やなんかゆうたらあきませんで。『都ことば』に『京ことば』。この言葉は方言なんかと違いますねん。東京の方の言葉やらは『東京弁』でよろしいんでっしゃろけどね。」

やなぎ「それは…すみません。」




全員お茶を飲み終わった頃、ずっと困った様子で、何とか会話に入っていたやなぎさんも退室されました。(もしかして怒ってる?)


桜に占領されかけた暗い茶室の中で…三人の会話が続きます。

私達は他に同席している見知らぬ人達と「京都ってやっぱり怖いなぁ。」「えらいことになりましたねぇ。」などと思わずささやき合ってしまう。



三人の会話の中で、また運動場の桜の話が出て…

インテリ男「そやけど、あの桜はいわく付きですけどな。」

近所の人「え!いや!知ってはりますん!?」

正客「なんどす?いわくて。」

近所の人「出るんですわ。下に。」

インテリ男「おばけがねぇ。」

正客「いや~ん、うちそんな話あきませんねん。ほんま堪忍しておくれやす。いや~ん、ほんまにぃ。」(←かなりキモイ。(笑))

近所の人「そんな怖がることやないんです。私らにとっては、またいてはるわ~ってくらいあたりまえのもんでしたんえ。」


そのうち… きものを着てあぐらをかいて、ちょっとやんちゃな目をした一人の若いの男性が口を開く。
「僕もその話、母から聞いたことあります。母もここの卒業生で。」


よう入ってくるわ、この人らの話に…。

その男性も交えて色々と具体的な、そのおばあちゃん桜の下のおばけの話、それにまつわる様々な思いで話などが続きました。




その男性の隣りに座っていた、今時…と思う程に素朴で可愛い女子高生(制服姿)2人が、
「もうやめません!?こわい~!!」

おばけの話が?
この会話の雰囲気が?

私は断然この人達の雰囲気が怖い…。



私と一緒に怖いなぁこの人達…と話していた私の隣りのおばちゃんも、ちゃんと話に参戦。
「でも桜っていうのは、そういうものですよね。下に何かが埋まっていたり。」
「霊のざわつくのを、おさめたり、聞こえなくする為に、人は桜の下に集まって宴会をするものだとか…。」


はぁ、聞いたことありますね。
そういう話。

ますます怪しの雰囲気は深まります。




「わきて見む老木(おいき)は花もあはれなり 今いくたびか春にあふべき」

「願わくば花の下にて春死なむ その如月の望月のころ」




あのインテリ男性だけでなく、近所の方の口からも会話にちょこちょこと和歌が挟まれます…。


この亭主側が誰もおらず、飲み終わった茶碗が全部畳の上に並んだままのこの時間の長さの異様さ…。


いやらし過ぎるこの人達の話し方…。


この怪しい雰囲気…。



続く会話の中・・・・・・・

・・・・・・・・やられたぁぁぁぁぁぁ!!!!

はぁ・・・・・ようやく気付きました。




若い男性が言いました。

「芭蕉の歌にありましたね。『さまざまなこと思い出す桜かな』」



そして…正客の年配女性、その隣りの女性、三客のインテリ風男性、お詰めの近所の女性、若い男性の5名が唱和します。

「さまざまなこと思い出す桜かな」

全員一膝進んで、一礼。



勝手口がすっと開き、やなぎさんが意地悪そうに、嬉しそうに微笑みながら入室。


サササとお手伝いの皆さんも入ってきて一気にお茶碗などを下げられます。


「いかがでしたか?桜の茶会は?」




床の桜より…桜のお菓子より…桜の乗せられたお抹茶より…この茶会の一番の桜の演出は…

客の中の「桜」でした。



やなぎみわさんの演出にしては、あっさりしてたなぁと思ったんですよね。

さっきまでの、すこしおどおどとされた様子とはうって変わったイタズラな表情と、余裕な話し振りのやなぎさん。


悔しい!!
やられたぜ!!

桜の恐ろしくも異様な魅力を、全身全霊で感じさせてもらった一時間でした。



お土産に

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さくらのポン菓子と会記。

会話の中の、和歌もすべて書いてあります。


『席主・脚本・演出 やなぎみわ』


ですと。(笑)



まだもう一日あるこの茶会。
この茶室の中で起ったことはくれぐれも口外せぬように…と口止めされました。

なので、一日遅れのレポートでした。



他の席では、誰も会話に入って来なかったそうですが、私達の時は

可愛い女子高生さん達の「こわい~やめて下さい~!!」や、
私の隣りのおばちゃんの桜の怪しの話。

などが入ってきたそうで、面白かったそうです。


ちなみに、おばけの話も嘘。

女子高生も桜かと思ったり…

どこからどこまでが本当か。


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お床飾りの「老少女面」
表が少女で、裏が老女。
まるでおばあちゃん桜の顔。


それと
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「マダムコメット」


もちろんどちらもやなぎさんの作品です。



茶室を出ますと、またまた「どうぞ」と案内されました。

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その望遠鏡を覗くと…

運動場でテニスをするおっちゃん達の側の、おばあちゃん桜。



( ̄∇ ̄;)ハッハッハ
最後までやられました。


他の茶席のお話は、またにします。