今日はいぬの日//倉狩聡 | みゅうず・すたいる/ とにかく本が好き!
今日はいぬの日/倉狩 聡
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 「今日はいぬの日」


 倉狩聡、著。 2015年


                    ※


内容(「BOOK」データベースより)

飼い主一家に虐げられ、辛い日々を過ごすスピッツ犬のヒメは、流星群の夜、庭に落ちた不思議な石を見つける。美しく甘いその石を舐めた彼女は、なんと人間の言葉を話せるようになる。「わたしはきっと、世界で一番、賢い犬」ヒメは言葉巧みに、家族を思うままに操り始める…。一方、動物の殺処分を担当する施設で働く獣医師の小高は、犬たちの変化に気づく。まるで「クチコミ」で、自分たちの死を知ったかのように、態度を変える犬たち。そして…。二つの物語が重なるとき、前代未聞の、犬と人のサバイバルゲームが始まる。


                    ※


 角川ホラー小説大賞佳作「かにみそ」に続く第二作。

デビュー作ではカニがしゃべったが、本作では犬がしゃべる。

しゃべる動物つながりだ。

まさか……延々とこの路線で押し切る気か?!

究極のマンネリズム。

全作しゃべる動物がメインキャラクター。

斬新だ!

って。

そんなわけないか。

いや、しかし、ほんとにそうなら……。


 カニの場合、やはり知能が低いせいか、作品はシニカルで不条理なものになった。

人間を喰うカニ。

妙にユーモラスでのどかな雰囲気の作品だったせいで、ホラーと言う感じではなかったが……。


 今回は犬。

かなり知能が高くて、人間の側に暮らす生き物故に、その言動は人間っぽい。

だが主人公犬はまだ子供っぽい。

短絡的かつ自己中。

そのあたりが犬軍団を率いての暴動につながる。


 さらにここに動物センター職員目線の物語が重なる。

助けたいのに殺処分しなくてはならない職員が主人公。

しゃべる犬・ヒメの物語ともうひとつの物語が合流して……。

やはり悲しい結末が……。


 倉狩さんの文章はどこかユーモラスで、どちらかと言えば感傷性を排したタッチである。

故に、ややもすれば重苦しくなりがちなテーマを読みやすく描き切っている。

だが、殺処分と言う悲しい現実から目をそらしているわけではない。

根底には憤りと悲しみがあるのが伝わる。


 押しつけがましくはなく、でも心にしみる物語だと思う。

悲しみと感動共にあり。


 『今日はいぬの日』。

殺処分なんてない世界を実現したいですね。

庇護を必要とする存在と暮らすなら、死ぬまで添い遂げましょう。

それが人類と言う、地球の覇者の果たすべき義務です。

捨てるなら人類やめますか?!

それとも捨てられてみますか?!

7日後に殺処分ですよ!


ああ……つい激してしまいました。


倉狩さんは激情を秘めながらも、流されず良い作品を作り上げたと思います。

本当に面白かったです♪♪