- 今日はいぬの日/倉狩 聡
- ¥1,620
- Amazon.co.jp
「今日はいぬの日」
倉狩聡、著。 2015年
※
内容(「BOOK」データベースより)
飼い主一家に虐げられ、辛い日々を過ごすスピッツ犬のヒメは、流星群の夜、庭に落ちた不思議な石を見つける。美しく甘いその石を舐めた彼女は、なんと人間の言葉を話せるようになる。「わたしはきっと、世界で一番、賢い犬」ヒメは言葉巧みに、家族を思うままに操り始める…。一方、動物の殺処分を担当する施設で働く獣医師の小高は、犬たちの変化に気づく。まるで「クチコミ」で、自分たちの死を知ったかのように、態度を変える犬たち。そして…。二つの物語が重なるとき、前代未聞の、犬と人のサバイバルゲームが始まる。
※
角川ホラー小説大賞佳作「かにみそ」に続く第二作。
デビュー作ではカニがしゃべったが、本作では犬がしゃべる。
しゃべる動物つながりだ。
まさか……延々とこの路線で押し切る気か?!
究極のマンネリズム。
全作しゃべる動物がメインキャラクター。
斬新だ!
って。
そんなわけないか。
いや、しかし、ほんとにそうなら……。
カニの場合、やはり知能が低いせいか、作品はシニカルで不条理なものになった。
人間を喰うカニ。
妙にユーモラスでのどかな雰囲気の作品だったせいで、ホラーと言う感じではなかったが……。
今回は犬。
かなり知能が高くて、人間の側に暮らす生き物故に、その言動は人間っぽい。
だが主人公犬はまだ子供っぽい。
短絡的かつ自己中。
そのあたりが犬軍団を率いての暴動につながる。
さらにここに動物センター職員目線の物語が重なる。
助けたいのに殺処分しなくてはならない職員が主人公。
しゃべる犬・ヒメの物語ともうひとつの物語が合流して……。
やはり悲しい結末が……。
倉狩さんの文章はどこかユーモラスで、どちらかと言えば感傷性を排したタッチである。
故に、ややもすれば重苦しくなりがちなテーマを読みやすく描き切っている。
だが、殺処分と言う悲しい現実から目をそらしているわけではない。
根底には憤りと悲しみがあるのが伝わる。
押しつけがましくはなく、でも心にしみる物語だと思う。
悲しみと感動共にあり。
『今日はいぬの日』。
殺処分なんてない世界を実現したいですね。
庇護を必要とする存在と暮らすなら、死ぬまで添い遂げましょう。
それが人類と言う、地球の覇者の果たすべき義務です。
捨てるなら人類やめますか?!
それとも捨てられてみますか?!
7日後に殺処分ですよ!
ああ……つい激してしまいました。
倉狩さんは激情を秘めながらも、流されず良い作品を作り上げたと思います。
本当に面白かったです♪♪