キノの旅//時雨沢恵一 | みゅうず・すたいる/ とにかく本が好き!
キノの旅 the Beautiful World<キノの旅> (電撃文庫)/KADOKAWA / アスキー・メディアワークス

¥価格不明
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 「キノの旅」


 時雨沢恵一、著。 2000年

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「キノはどうして旅を続けているの?」 「ボクはね、たまに自分がどうしようもない、愚かで矮小な奴ではないか? ものすごく汚い人間ではないか? なぜだかよく分からないけど、そう感じる時があるんだ……でもそんな時は必ず、それ以外のもの、例えば世界とか、他の人間の生き方とかが、全て美しく、素敵なものの様に感じるんだ。とても、愛しく思えるんだよ……。ボクは、それらをもっともっと知りたくて、そのために旅をしている様な気がする」 ―――短編連作の形で綴られる人間キノと言葉を話す二輪車エルメスの旅の話。今までにない新感覚ノベルが登場!

 (Amazon商品説明より)

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 先日読んだ『男子高校生で売れっ子ライトノベル作家を……』が面白かったので、こちらも読んでみた。

 童話・寓話・ファンタジー・SFその他、先行作品群を解体・咀嚼し、オリジナリティを加えて再構築するのが小説であるならば、これはまさに正しい小説だと思う。

 Ai機能を備えたバイクと旅をする少女・キノの物語。
連作短編ロードノベルだ。

 キノが訪れた国は「人の痛みが分かる国」「多数決の国」「大人の国」「平和な国」etc.
どの国もユートピアがデストピア化したような国ばかりだ。
人の愚かしさをカリカチュアライズしたような作品が並ぶ。

 どの国においても観察者であるキノは、結局傍観者ではあり得ず、その国のありように介入する結果になる。
まさに、観察者の視線が観察されるものに影響を与える事になるわけだ。

 後味の悪い話ばかりであるはずなのだが、ドライでシニカルなキノの行動には暗さを払拭するエネルギーがあるようで、どれも読後感は悪くない。
読み始めは、どこかで読んだような内容ばかりだと感じるのだが、積み重なる事によりオリジナリティを打ち出す事に成功しているように思えた。

 ベストセラーになるだけの事はある。
と思う。

 『キノの旅』。
結構面白かったです♪