平蜘蛛の妖し夢・黎明に叛くもの(1)//宇月原晴明 | みゅうず・すたいる/ とにかく本が好き!
平蜘蛛の妖し夢―黎明に叛くもの〈1〉 (C・NOVELS)/宇月原 晴明

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 「平蜘蛛の妖し夢・黎明に叛くもの(1)」


 宇月原晴明、著。 2004年


 『信長・あるいは戴冠せるアンドロギュノス』(日本ファンタジーノベル大賞受賞作)。
あれは、とんでもない作品でした。
信長が両性具有者で、マジカルな存在という設定で、安土城は異界の舞台のような建造物で…。

 ぶっ飛んでます。
よくこれに大賞を与えたものです。
審査員の審美眼の凄さに戦慄する思いです。

 奇書…ですね、これは。
インパクトのある作品でした。
ほんと、スゴイしトンデモだし、妖しいし、耽美的だし…。

 著者のマジカルな知識が半端じゃない。
その半端じゃない知識を持ちながら、堂々と“晴明”などというペンネーム…。
普通、この名前は名乗れません。

 知識があり、マジカルなものに傾倒する人間としては、畏れ多くて名乗れないですね。
歴史小説家で☓☓信長と名乗るようなもの。
なんか…いろんな意味で凄い人です…。

 で、まぁ、その後もずっと気になっていた。
他の著作を読まねばならぬと、思っていました。
でも、ぶ厚いのだよね、本が…。

 しかし、本作はノベルスで分量も少ない。
これだ!
飛び付きましたよ。

 で…シリーズものだったのね…。
『黎明に叛くもの』を四分冊して、短編を追加したという…。
ははは…良く見りゃよかった…。

 でもね♪
これが♪
凄いの♪

 いや~、続きがあって良かった♪
これは、面白い!

               ※

下剋上の風吹き荒れる元亀二年。たび重なる怪事の呪詛封じを求めて紅葉の信貴山を急ぐ明智光秀の前に、白亜の壁と漆黒の瓦が煌め空中楼閣が浮かび上がった。妙薬となる樹木が植わり、霊香漂う山城の主は金髪碧眼の傀儡(くぐつ)を繰る妖人・松永秀久。幼き日に兄弟子・斎藤道三と交わした国盗りの誓いを胸に、ペルシアの暗殺教団の蠱惑の秘術で戦国群雄を翻弄する━!!
稀代の出来氏伝奇小説、待望のノベルス第一弾!

 (裏表紙より)

               ※

 二人は妙覚寺の兄弟弟子。
しかし、ここは普通の寺ではない。
師は果心居士。
ペルシアの幻術を使う妖人にして、暗殺教団の主。

 二人は寺を出て、それぞれに国盗りを目指す。
腕と技と知恵を駆使して。
この二人、後の名を斎藤道三と松永秀久(弾正)という…。

  えっとね…二人とも美形です。
で、幻術も使えば腕も立つ。
ハートも強い。

 二人の義兄弟のような強い絆と、それでもなお各々の力だけで国を盗るという矜持が清しい。

 で、秀久の傀儡・果心がまた妖しい。
白磁の如き肌を持つ女性の人形ながら、男ともつかず女ともつかず妖美の極。
それが、どうも自分の意思を持っているような…。

 歴史の影を魔術で書き換える。
偽史にして伝奇小説。

 妖しく、どこか耽美的で、トンデモで、しかも歴史を背景にしているからぶ厚い。
これはとんでもなく面白いです♪
クケケケ♪

━ちなみに「黎明に叛くもの」とは、明けの明星の事であり、魔王を意味します。