夜明けのヴァンパイア//アン・ライス | みゅうず・すたいる/ とにかく本が好き!
夜明けのヴァンパイア (ハヤカワ文庫NV)/アン ライス

¥882
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 「夜明けのヴァンパイア」

 アン・ライス、著。 1976年


 原題「Interview Wihe The Vampire」。
トム・クルーズ、ブラッド・ピットなどが出演して
映画化された作品。

 数多いヴァンパイア小説の中でも、一二を争う
名作だと言われています。


          ※

「私がヴァンパイアとなったのは二十五歳の時、
1791年のことだ」
彼はそう語りはじめた。彼の前にはテープレコー
ダーが置かれ、一人の若者が彼の言葉に聞き
入っている。彼は語る。アメリカからヨーロッパへ
歴史の闇を歩き続けた激動の二百年のことを。
彼をヴァンパイアとした“主人”吸血鬼レスタトの
こと、聖少女クロウディアとの生活、訪れた破局
― 伝説の存在、吸血鬼への驚くべきインタビュー。

 (裏表紙より)

          ※

 吸血儀式の翌日にヴァンパイアへと変貌する。
故に、人間として一日だけ生きる事が出来る。
本人にはその事がまだ分からないのだが、ヴァンパ
イアは人間として見た最後の夜明けの景色を忘れら
れない…。

 ヴァンパイアは動物の血液を摂取しても生きて行
く事が出来る。
しかし、皆、不老不死の超越者として、人間の血を
吸って生きる事を選ぶ事になる。

 食物連鎖の頂点に立つものとして、人間の命を糧
として生きる。
超越しなければ、永遠を生きると言う孤独に耐える
事は出来ない。

 殺戮者・殺人者としての超越。
柔らかな日差しの中にたゆたう天国ではなく、氷雪
に閉ざされた暗闇にある地獄にある超越。

 されど、この超越者はしょせん人間の属性を捨て
る事は出来ないのだ。
超越者もまた人間であるというこの矛盾。

 真理を追究するために悪魔を呼び出した超越者・
ファウストを見よ。
彼もまた、最後は人の子としての感情に縛られ、
口にしない約束の言葉を口走る― 。

 「時よとまれ!」と。

 『夜明けのヴァンパイア』はある意味で、まぎれ
もなく人間の物語だ。
生きものの命を奪う事でしか生命を繋ぐ事が出来な
い、人間そのものの物語だ。

 生きることの孤独。
罪人であることの不安。
求める事では、けして得る事が出来ない愛への渇望。

―「かくある」ことは、哀しいことなのだ。
汚れなくては生きて行けぬ事は哀しいことなのだ。

 透明な闇を永遠に旅する主人公・ルイたちの、狂
おしく切なく悲しく、そして美しい物語。
再読ですが、やはり面白い作品でした。