- ダウン・ツ・ヘヴン (中公文庫)/森 博嗣
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「ダウン・ツ・ヘブン」
森博嗣、著。 2005年。
スカイ・クロラシリーズ3作目。
私にとっては、次の「フラッタ・リンツ・スカイ」が最終巻
です。 変則的順番で読んでいるからですが・・・。
今回の舞台は都市。
おお、短編を別にすればこのシリーズで初めて人の多い
所が舞台だ!
なるほど、・・・確信犯だな、これは・・・。
空と人気の無い「基地」周辺を舞台に物語は綴られてきた。
この物語においては、それが彼らの「正常な」世界。
故に、期せずして都市はすでに「異質な」世界なのです。
勿論、登場人物の心理描写や言動を通じてその事は語られ
ますが、これまでのシリーズの舞台との対比において、それ
はすでに「異質な世界」としてそこにあるのですねえ。
子供はみんな、空を飛ぶ夢を見るのだ。 飛べるようになる
まで、あるいは、飛べないと諦めるまで・・・・・・戦闘機に乗る
ことに至上の喜びを感じる草薙だが、戦闘中に負傷し入院、
空を飛べぬ鬱屈した日を過ごすことに。 組織に守られる
存在になりつつある自分になじめないままに。
そしてある日「少年」に出会う!
(裏表紙より引用)
本作では、草薙が「初めて」カンナミと出会うシーンが描かれる。
(このシリーズは必ずしも時系列順に並んでいない)
草薙とカンナミの「関係」が暗示される。
カンナミの「過去」が暗示される。
草薙の過去がある程度明らかになると同時に、「草薙の過去」が
暗示される。
この世界のシステムが少し明らかになる。
草薙たちの属する「会社」=「組織」の存在理由や規模が
暗示される。
全ては明示されることなく、物語は進んで行く。
時系列も意図的に前後されてシリーズが展開される。
例えば、「ブレード・ランナー」や「2001年宇宙の旅」と言った
映画作品は「難解である」と評される。
これは、映像を優先するが故にそうなってしまった部分もある。
意図的になされた部分も無論あるけれど、そのトータルとして
あの未来的な不思議な世界が成立する。
「スカイ・クロラ」は、それを意図的に作り出したシリーズ構成
なのでしょう。
短編を含む六作全てで一作品。
そして、また一作づつで独立してもいる。
メタ構造・・・、まあ、分析は私の任では無いし、スタイルでも無い
ので、興味のある方はsaiさんのブログなどを参照してみて下さい♪
(ああ・・・、何と無責任なブログでしょう・・・。)
さて、本作のメイン・ストーリーは、会社を移籍して敵となった
ティチャと草薙の一騎討ちの空中戦。
これを、小説=文章でやってしまう。 しかも、それが迫力満点。
面白いです。
ただし、決着は・・・・・・。
「最適の健闘を」
これは、最も森博嗣さんらしいシリーズ。
あと一冊・・・、私にとってどのような物語となるのか、楽しみです。