ダウン・ツ・ヘブン // 森博嗣 | みゅうず・すたいる/ とにかく本が好き!
ダウン・ツ・ヘヴン (中公文庫)/森 博嗣
¥680
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 「ダウン・ツ・ヘブン」


 森博嗣、著。 2005年。



 スカイ・クロラシリーズ3作目。

私にとっては、次の「フラッタ・リンツ・スカイ」が最終巻

です。 変則的順番で読んでいるからですが・・・。


 今回の舞台は都市。

おお、短編を別にすればこのシリーズで初めて人の多い

所が舞台だ!


 なるほど、・・・確信犯だな、これは・・・。

空と人気の無い「基地」周辺を舞台に物語は綴られてきた。

この物語においては、それが彼らの「正常な」世界。


 故に、期せずして都市はすでに「異質な」世界なのです。

勿論、登場人物の心理描写や言動を通じてその事は語られ

ますが、これまでのシリーズの舞台との対比において、それ

はすでに「異質な世界」としてそこにあるのですねえ。



 子供はみんな、空を飛ぶ夢を見るのだ。 飛べるようになる

まで、あるいは、飛べないと諦めるまで・・・・・・戦闘機に乗る

ことに至上の喜びを感じる草薙だが、戦闘中に負傷し入院、

空を飛べぬ鬱屈した日を過ごすことに。 組織に守られる

存在になりつつある自分になじめないままに。

そしてある日「少年」に出会う!

 (裏表紙より引用)



 本作では、草薙が「初めて」カンナミと出会うシーンが描かれる。

(このシリーズは必ずしも時系列順に並んでいない)

草薙とカンナミの「関係」が暗示される。


 カンナミの「過去」が暗示される。

草薙の過去がある程度明らかになると同時に、「草薙の過去」が

暗示される。


 この世界のシステムが少し明らかになる。

草薙たちの属する「会社」=「組織」の存在理由や規模が

暗示される。


 全ては明示されることなく、物語は進んで行く。

時系列も意図的に前後されてシリーズが展開される。


 例えば、「ブレード・ランナー」や「2001年宇宙の旅」と言った

映画作品は「難解である」と評される。

これは、映像を優先するが故にそうなってしまった部分もある。


 意図的になされた部分も無論あるけれど、そのトータルとして

あの未来的な不思議な世界が成立する。

「スカイ・クロラ」は、それを意図的に作り出したシリーズ構成

なのでしょう。


 短編を含む六作全てで一作品。

そして、また一作づつで独立してもいる。

メタ構造・・・、まあ、分析は私の任では無いし、スタイルでも無い

ので、興味のある方はsaiさんのブログなどを参照してみて下さい♪

(ああ・・・、何と無責任なブログでしょう・・・。)


 さて、本作のメイン・ストーリーは、会社を移籍して敵となった

ティチャと草薙の一騎討ちの空中戦。

これを、小説=文章でやってしまう。 しかも、それが迫力満点。


 面白いです。

ただし、決着は・・・・・・。


 「最適の健闘を」

これは、最も森博嗣さんらしいシリーズ。

あと一冊・・・、私にとってどのような物語となるのか、楽しみです。