『アベノミクスの成否を問う「一億総活躍」わが真意』(2) | みおボード

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<米アップル社の拠点新設>
「1億総活躍」社会の実現に向けて、私は「新・3本の矢」を掲げました。

第1の矢は、これまでの「3本の矢」の経済政策を一層強化した「希望を生み出す強い経済」です。
そしてその矢が狙う的が、戦後最大となる「GDP600兆円」を、2020年頃までに達成することです。

日本が戦後最大のGDPを記録したのは1997年の523兆円ですから、「600兆円」は発表直後から「無謀な数字だ」との批判が数多く出てきています。

しかしこれもまた、20年近く続いたデフレによる自信喪失が日本に蔓延させた悪弊でしょう。
「デフレ脱却はできない」「給料はもう上がらない」「右肩上がりの時代は終わった」と多くの人が言っていた。

でも現実はどうでしょうか。様々な経済指標が示す通り、我々は一歩ずつ前進し、現状を打破しつつあるではないですか。

もちろん、経営者の方々の中には、「このまま本当にデフレから脱却できるのか?」という慎重な声も多々あることは承知しています。
そうした不安を解消するために、企業の国内投資を躊躇させてきた「六重苦」…すなわち円高、自由貿易協定への対応の遅れ、高い法人税率
環境制約、雇用環境、不安定な電力事情~に正面から取り組み、着々と改善してきました。

こうした中、例えば、こんな心強い朗報もあります。
米アップル社は来年、横浜に研究開発拠点を開設します。近年、アジアにおける経済の拠点といえば香港やシンガポールが主流でした。

しかし、コーポレートガバナンス改革や法人税改革を断行することで、日本のアジアにおける存在価値は高まりつつある。
その象徴のひとつがアップル社の拠点新設といえます。今後、世界中から最先端の技術を持つ人材が集まってくるはずです。


先月、大筋合意に達したTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)によって、域内向けの工業製品輸出(日本以外の11ヵ国向け、総額約19兆円)
にかかる関税は99.9%撤廃されることになります。当然、日本企業にとってさらなるチャンスが広がります。

メリットを受けるのは大企業だけではありません。
例えば岩手県盛岡市の南部鉄器や、福井県鯖江市のメガネ、愛媛県今治市のタオルなど、地方の中小企業の特産品輸出の後押しにもなります。
中小・零細企業にとって、貿易のルールがきちんと統一されていることは大変重要な意味を持つはずです。

農産品や食品についても、関税撤廃によって日本の誇る和牛や果物、日本酒など、付加価値の高い品物をより積極的に輸出できます。
統一のルールの下で地理的表示制度が運用されることによって、「松阪牛」や「夕張メロン」「魚沼産コシヒカリ」などの地域ブランドも、適正に守られるようになります。

メリットはそれだけではありません。
例えば知的財産が保護されることで、模造品や海賊版が出回りにくくなる。また消費者の視点でみれば、関税が下がる分、多様な輸入品の価格が下がり、選択肢が広がることで生活がより豊かになる側面もあるでしょう。

一方、農林水産物に関しては、関税撤廃率を81%にとどめることができました。
甘利明担当大臣を始め、交渉団が戦い抜いた成果です。

もちろん、農家の皆さんが不安を感じていることは十分承知しています。
農林水産業については、「守り」から「攻め」への転換を促します。そのために農協改革も行いました。
現在、農業従事者の平均年齢は66歳です。若い人が夢を持てる農業にするべく、今後もあらゆる策を講じていきたいと思います。


TPPを契機に自由な経済圏を広げて投資を呼び込む。生産性革命を進め、イノベーションを興す。
雇用を増やし、給料を上げて、内需を拡大する。地方に眠る可能性を更に開花させる。働き方改革を進め、女性や高齢者の皆さんのチャンスを広げる。
既存の規制・制度の改革を断行する。

あらゆる政策を総動員していけば、名目経済成長率・年3%の実現は十分可能です。
そして、それを毎年実現していけば、今のGDPは約500兆円ですから、2020年には「GDP600兆円」が自然と視野に入ってきます。
この数字は、無謀な夢でも何でもなく、現実的な目標だと私は確信しています。

<「団塊の世代」が70歳を超える>
第2の矢は「夢をつむぐ子育て支援」で、その矢の的は、2020年代半ばまでの「希望出生率1、8の実現」です。

耳慣れない言葉かもしれませんが、「希望出生率」とは、簡単に言えば結婚して子供を産みたいという人の 希望が叶えられた場合の出生率です。

2010年に実施された出生率動向調査から算出された希望出生率は約1.8でした。

しかしながら現在の実際の出生率は約1.4です。産みたいのに何らかの事情で産めない方々の事情を取り除いていくことで、
実際の出生率が、希望出生率と同じ1.8になるようにしたいというのが基本的な考えです。
産みたくない方々に対しても「産めよ、増やせよ」と国家が推奨しようというわけでは断じてありません。

例えば、結婚したくとも経済的な事情で躊躇している方々の為に、新婚夫婦は安く賃貸住宅に入居できる仕組みを整えるなど、結婚を考えている若者の背中を押す政策を進めています。

また子宝を願い、不妊治療を受ける皆さんへの支援の拡充や、妊娠、出産時のさらなる負担軽減策も検討していきます。

そして子供が産まれた後も、子育てにやさしい社会を作るために、
待機児童ゼロ、幼児教育の無償化、ひとり親家庭支援などをさらに拡大していきます。

しかしながら、そうした制度整備だけでできることにも限りがあります。
そこで、大家族で支え合う生き方も選択肢として提案し、3世代同居や親子が徒歩圏内で暮らす「近居」の促進もうったえていきます。
これまでの発想にとらわれない大胆な政策を実施していきます。


第3の矢「安心に繋がる社会保障」の的は『介護離職ゼロ』です。これは2020年代初頭までに成し遂げたいと考えています。

総務省の調査では、介護を原因とした離職が年間10万人を越えています。
こうした介護離職を機に、被介護者である高齢者と、仕事を辞めた現役世代が共倒れするケースも現実にあるわけです。

「安心に繋がる社会保障」とは、高齢者の安心だけではなく、現役世代の安心にも資するものでなければなりません。

東京五輪が開催される2020年には、いわゆる「団塊の世代」(1947~49年生まれ)が70歳を越えています。
その頃に40代の働き盛りで、あらゆる職業で大黒柱となっているのが「団塊ジュニア世代」です。
彼らが、介護のために大量に離職することになれば、日本経済は成り立ちません。

その点を見据え、在宅介護の負担軽減、介護施設の整備を加速します。一案として、国家公務員宿舎跡地などの国有地を活用します。
特別養護老人ホーム(特養)の入所を希望されながら、自宅で待機されている方々が多くいらっしゃいます。
しかしながら、特に地価の高い都心では、なかなか新規に特養を建てられない。

その解消のため、首都圏の国有地 約90ヵ所を対象として、早ければ今年度中にも介護施設事業者に安価で貸し出すことを検討しています。また、首都圏以外についても検討しているところです。

併せて、介護に携わる人材を増やしていかなければいけません。
今年の介護サービス料金改定で、介護職員の処遇改善については、ひとりあたり月に1万2千円アップとなりましたが、引き続き介護人材の育成などを進めていきます。

介護の問題は、対症療法だけでは対応しきれないのも事実です。
健康寿命を引き上げ、介護なしで豊かな老後を送れるよう、予防に重点化した医療改革も同時に行い、企業による健康投資も促していきます。


高齢者がずっと元気で「生涯現役」を貫ける社会を構築していきたい。
意欲ある高齢者に多様な就労機会を提供し、生きがいを持って社会と関わりあいを持ち続けてほしい。
高齢者世帯の自立を、健康面でも経済面でも力強く支援していきたいと思います…