経世済民・建築論『ゴミ屋敷と電信柱』
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『電信柱ってイヤなものですよね』
日本の都市において建築写真を撮る際、厄介なのが電線と電柱です。これを避ける為にアングルが制限されたりしますし、そもそも建物の美観が大きく損なわれます。雑誌によってはレタッチソフトで電線を消す場合もあるくらいで、とにかく邪魔です。日本の都市を醜くしている元凶が電線と電柱です。
『年々電線が増え続けている』
昔は電線+電話線くらいで細やかなものでしたが、最近は光ファイバーのケーブル、CATVのケーブル、など線が大幅に増えています。年々シワが増えるように徐々に都市が醜くなって行くのです。主要国の特に都市部では、電線の地中化は常識であり、韓国より遅れている情けない現状を認識すべきです。
『3.11で実感した電柱の害悪』
東日本大震災の際、湾岸部の埋立地で液状化現象が大量発生して、電柱の多くが陥没して極めて危険な状況となりました。私もこれらの被災地を見て廻りましたが、避難や救助活動に大きな悪影響を与えかねず、仮にこの状況で火災が発生すれば、消火活動が妨害され、都市が拝塵に帰する危険性も高まります。
『緑化の妨げに繋がる電線』
都市環境の善し悪しを考えると、グリーンの多さが都市の魅力に大きく影響を与えています。注意深く街路樹を見てみると、電線の高さで枝を切っているケースが多いのです。電線を地中化し、電柱を無くせば、市街地の緑化がより進む事は間違い有りません。都市の緑化のスペースを電線が奪っているのです。
『30年は掛かる電柱撤去』
仮に今すぐ電柱を撤去する法律や政策を政府が決定しても、それが実現するまでに30年くらい掛かるのでは無いでしょうか?重点地域の実現に10年、主な市街地で10年、郊外は更に10年という感じです。しかし逆に考えれば、たった30年です。仮に1985年から始めていれば、もう完了しています。
『人口過密国家日本』
少子高齢化による人口減少は、今後数十年続く大きな社会の流れです。しかし、忘れてはならないのは、日本は世界屈指の人口過密社会だという点です。特に居住可能面積当たりの人口密度は、インドやチャイナより高くバングラデシュ並です。仮に人口が半分に減っても超人口過密国家のままという点が重要です。
『都市からの撤退という愚策』
ところが建築界では、このような人口減少社会を背景とした、都市の縮小論、放棄論、撤退論が盛んです。日本経済は成長しない衰退するとの誤った認識がそれを助長しています。積極的な都市開発やインフラ整備による生産性の向上や、震災対策などの危機管理などをエンジンとした経済成長が可能なのにです。
『空き屋対策をポジティブに考える』
いわゆるゴミ屋敷対策をメインとした空き家対策法が成立しました。人口減社会では、空き家や、空き地の問題が必須ですが、これを積極的に活用すべきです。実は、私が今設計している物件で面白い事が起きました。古屋を解体する為に隣地の所有者と打合せをしたら、土地を売っても良いとの話が出たのです。
『敷地の細分化を反転させる好機』
都内の狭小敷地をクライアントが購入したのですが、隣地のオーナーが土地を売ってくれれば、敷地は倍以上になって、より良い建築計画が可能になります。事実、東京では土地が徐々に細分化が進む現象が続いて来ました。最初は200坪の土地が、代替わりの度に細分化され20坪になる事も珍しく無いです。
『隣の土地を買うなら優遇措置を取る』
今後、人口減少社会になって空き家が更に増加した場合、隣地を購入する、複数の敷地を合わせて大きな敷地にする場合など、行政が優遇措置を採用し、数十年のスパンで考えれば、都市環境が改善する可能性が期待出来ます。かつてウサギ小屋と揶揄された住宅が徐々に広々とした住まいになるかも知れません。
『規制緩和のウソと行政の意志』
都内の住宅地を見ると、大きなお屋敷が相続の結果、驚く程多くの狭小住宅に細分化される例も見られますが、単純に法律がそれを許しているのです。規制緩和と言っても、規制が無くなる訳では無く規制の種類が変わるだけです。行政がどのような街作りをするかという意志が都市に可視化されているのです。
『都市を綺麗にする積極財政』
今までの日本は、人口過密による様々な問題に悩まされて来ました。人口減社会になって、その解決に向けた好機が訪れたのです。何十年か掛けて電柱を撤去して、敷地を大きくして、そこに緑を増やせば、日本の都市は美しく生まれ変わるでしょう。それを実現するには何より『積極財政』が不可欠です。
『人間、気づきが一番大切』
私が設計した建物が完成した時に必ず起きる面白い現象があります。お隣が必ずリフォームするのです。新築の家が出来ると自分の建物が汚さに気づくようです。電線が街から無くなり緑が増えれば、それだけで人々が街を美しくしようという意識に気づき目覚めるだけでなく、民間投資が活性化するでしょう。
『美しくする具体的な公共投資計画を』
残念ながら安倍政権は日本の成長を信じて投資をする事よりも、緊縮財政によって日本をより貧しくすることに熱心です。安倍総理は「美しい国へ」という著作を出しましたが具体的に美しくする処方箋については示していません。今日本に必要なのは、改革ではなく具体的で整合性の取れた公共投資計画です。
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