「旅するパオジャンフー」
特集【日本映画を語ろう!】
【外国の監督の描く日本、日本の監督の描く外国】。
3本目は1995年の柳町光男監督によるドキュメンタリー「旅するパオジャンフー」。
先日の「珈琲時光」
のホウ・シャオシェンは台湾人監督として日本映画を撮りましたが、
こちらは全く逆で「さらば愛しき大地」「火まつり」の柳町光男が台湾に乗り込んで
独特の文化を持つ“パオジャンフー”の世界をドキュメント作品であります。
“パオジャンフー”…とにかく怪しさいっぱいの世界でありました。
1995年劇場公開作品
監督:柳町光男
出演:葉天爽、邱兎搬、葉春鴻、黄春蓮、他(ドキュメンタリー)
【パオジャンフー】とは日本でいったら何でしょうね、
「ガマの油売り」と「見世物小屋」が合わさったような感じですかね。
ちょっとした広場に彼らはバンで乗り付けて、椅子をそこに50脚ほど円状に並べます。
真中を空けてそこを舞台として、彼らはそこで歌や踊りなどの芸を見せるのですが、
これがもう妖しさ満点。
ほとんど下着姿の娘がストリップまがいの踊りを見せて
しかもそれをMCらしき男がマイクを使って
「ハイハイよく見て!興奮するでしょ~」とガナリたてる。
踊りが終わると今度は歌。
先ほどストリップまがいの踊りを踊っていた娘が今度は綺麗に着飾って歌いだすのですが
これが向こうの歌詞なんだけど「どっかで聞いたメロディ」だなと思ったら
これ「浪花節だよ人生は」だったりして
…オイオイ著作権クリアになってるのかよ!
他にも火を噴く男が出てきたり、ヘビと格闘する男がいたりと…とにかく怪しい世界。
そして一通りの出し物が終わり拝観料を取るのかと思いきや、
彼らの最後の目的は【薬を売ること】らしく、観客の中を回って必死に薬を売るんですね。
ところがこれが何ともインチキ臭い塗り薬、塗ったら逆に化膿しそう。
【ストリップ】と【塗り薬】というカップリングには、とにかくびっくり仰天。
こんなのが日本にいたら…見に行くかもしれないけど、私、薬は絶対に買いませんワ。
このパオジャンフーってのは、結構伝統のある台湾独特の職業で、
全国を旅して回る集団が台湾にはかなりいるそうですワ。
中には地方回り専門で「台北には足を踏み入れた事がない」という集団もあるそうです。
彼らはとにかく薬が売れなければ商売あがったりなもんですから
必死で出し物である“芸”の方に磨きをかけるわけです。
決して薬の効能を向上させようとは思っておりません!
彼らにもちゃんと伝統に基づいた“役割”のようなものがそれぞれあり
【司会(MC・座頭)】【踊り(女・娘)】
【歌(女・年齢様々)】【大道芸(たいてい男・キワもの)】
この一つでも欠けたらダメなようで、彼らの中では
「あそこはMCがダメだから薬が売れないんだよ」とまで言われてしまうらしいです。
…まぁ、私にとってはどれも同じに見えますけどね。
結局は【薬を売ること】が目的ですけど、売ってる薬が“あれ”ですから
まぁ観客たちも【薬を買う】というよりは
出し物の“芸”への【拝観料】でお金を払っているんでしょうな。
さて「旅するパオジャンフー」の作品自体は、この特異な世界を余すとこなくカメラに収めていて
世界が世界だけに終始「へぇ~」や「怪しいぃ~」を連発しながら見ていたから退屈はしませんでした。
但し、これが鬼才・柳町光男の手によるドキュメンタリーだと思うと、
ちょっと掘りが浅いなと思ってしまいましたね。
パオジャンフーの現在での台湾国内での位置づけや、
彼らが直面している問題や悩みかなんかも見てみたかったですね。
だって日本の「ガマの油売り」だって今や目に触れる機会も少ないのに、
台湾とはいえどもパオジャンフーは明らかに【時代遅れ】な集団でしたもの。
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