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「H story」

H story

特集【日本映画を語ろう!】

【外国の監督の描く日本、日本の監督の描く外国】。
2本目は1999年の「M/OTHER」 がなかなかおもしろかった
諏訪敦彦監督による「H story」であります。
カンヌ映画祭で高い評価を得た「M/OTHER」の後の作品であるのに、
なぜか日本未公開。
なぜ未公開かは、ウン…見ればわかります。


2001年制作(劇場未公開作品)
監督:諏訪敦彦
出演:町田康、ベアトリス・ダル、馬野裕朗


  ベアトリス・ダルを主演に迎え「二十四時間の情事」のリメイクとしてスタートした「H story」。
  フランスの女優と日本の男が被爆地ヒロシマで出会い愛し合う。
  だがダルは、40年前にマルグリット・デュラスにより書かれた
  古いテキスト通りに演技することに違和感を覚える。
  40年という時間の溝を埋められず苛立つダル。
  やがてそれは、リメイクすることそのものへの疑問へと向かう。
  ダルは完全にスランプに陥ってしまい、撮影はついに中断となる。
  そんな時、町田康が現場を訪れ、ダルは町田にだけは心を開くようになり…。

この作品「M/OTHER」よりもより一層、ドキュメンタリーとフィクションの境をなくしています。
と、いうよりも「二十四時間の情事」のリメイクに失敗してしまった“ドキュメンタリー”部分
諏訪監督が町田康を登場させ無理やり最後に“フィクション”をつけたような感じですね。
ですから元が一つの作品の失敗例である以上、いくら“フィクション”の部分をつけても
作品自体が【未完成品】であることに変わりありません。

確かにドキュメンタリーでも「ロスト・イン・ラ・マンチャ」 のように
テリー・ギリアムの大作「ラ・マンチャ」が撮影中止になる顛末をドキュメントした作品もありましたが、
あちらはテリー・ギリアムのエキセントリックな映画制作現場が、
実際の作品を上回るほどのおもしろさを見せたからこそ
ドキュメンタリー自身も興味深い出来になったのであって、
「H story」の諏訪監督とテリー・ギリアムを比較するのは酷なことでしょう。
だいいち、日本映画の制作現場って、
どうにも“暗く”てドキュメンタリーで見てもあまりおもしろくないんですね。
みんなボソボソ喋ってて、知らぬ間にカメラは回ってるようだし…。

ですから諏訪監督としては失敗例を、一発大逆転の発想で一つの作品にまとめあげたのでしょうが、
結果として劇場未公開で終わってしまったのも、
やはり一つの作品としては認められなかった結論ではないでしょうか。
きつい言い方ですけど

ところでなぜこの作品を
今回【外国の監督の描く日本、日本の監督の描く外国】の欄で取上げたかというと
諏訪監督はアラン・レネの「二十四時間の情事」をリメイクしようとした、
つまり「二十四時間の情事」という【日本を舞台とした外国作品】を
マルグリット・デュラスの脚本をそのまま使って日本人スタッフで映画化しようとしたわけです。
もし完成していたら、さながら【日本を舞台とした外国脚本を使った日本映画】と
非常に複雑な趣になったわけです。
もっと複雑に言えば【日本を舞台とした、昔の外国脚本を使った、最新の日本映画】
ということで一種【日本の監督の描く外国】であると思ったので、とりあげたわけです。
ちょっと言い訳がましいですが!

ところがこの複雑さが逆に災いして主役のベアトリス・ダルは根をあげてしまったんですね。
…ベアトリス・ダル同様、作品を見ているこっちも根をあげそうでしたけど

■関連記事はこちら
 「M/OTHER」(2005.1.22)
 「ロスト・イン・ラ・マンチャ」(2004.12.14)

■特集【日本映画を語ろう!】の過去の記事、今後の予定は こちら から

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