「ロスト・イン・ラ・マンチャ」
おもしろい!おもしろい!ドキュメンタリーはやはりトラブルに限ります。予定通り進んだんじゃおもしろくありません。まさに「事実は小説より奇なり」であります。ドキュメンタリー第2弾
2001年アメリカ/イギリス作品。
監督:キース・フルトン、ルイス・ペペ
出演:テリー・ギリアム、ジョニーデップ、ジャン・ロシュフォール、他
テリー・ギリアムが「妥協しない映像作家」であることは、「タイム・バンデッツ(バンデットQ、傑作!)」「12モンキーズ(これまた傑作!)」など、その映像世界をみればよーくわかるし、「未来世紀ブラジル」にいたってはラストをめぐってプロデューサーと裁判ザタの大喧嘩をしたこと(また勝訴してしまった)などは本1冊が出版されるほど有名である。
だから本作の監督キース・フルトン、ルイス・ペペも当初はテリー・ギリアムの新作「ラ・マンチャ」でのエキセントリックな創作風景を捉える事を目的にしていたのだろう。
確かにこの作品の前半は
そんなテリー・ギリアムの姿が存分にうかがえる。
役者に凝り、美術に衣装に凝り、そしてカメラワークに凝る。
まだ撮影前だというのにテリー・ギリアム、
早くもエンジン全開の状況である。
しかし後半、撮影が始まると雲行きが怪しくなる。
撮影前から予算の関係上、ジョニー・デップらキャスト達と
事前打ち合わせができない、というあたりから
【つまづき】はあった。
しかし撮影が始まるとそれどころではない。
中世の話なのにロケ地の上空を軍用機が飛び回り
予期せぬ大雨でセットは流され、衣装・小道具はドロまみれ
とどめは主役のジャン・ロシュフォールが腰痛で馬に乗れず
検査のために無念の帰国。
さすがにこれだけ悪運が重なると
凝り性のテリー・ギリアムも「凝る」ことが出来ない。
ついには無念の撮影中止の羽目に…。
「人の不幸は蜜の味」
この撮影中止に追い込まれる後半が、
前半にも増して面白いのなんの。
なんかこの作品の監督たちも表面では「大変ですね~」言いながら
内心「いい画が撮れた」と喜んでいる雰囲気である。
テリー・ギリアムの「ラ・マンチャ」完成品が見られないのは
何より残念ではあるが、
自身の苦悩する姿を存分に映して
ドキュメンタリーの傑作を1本作ってしまうとは、
テリー・ギリアム
転んでもタダでは起きない、さすが一筋縄ではいかない監督である。
タイトル: ロスト・イン・ラ・マンチャ