「シャドウ・オブ・ヴァンパイア」
- ポニーキャニオン
- シャドウ・オブ・ヴァンパイア
9月に入っても続く【真夏の夜のホラー特集】。
今週は、単純には【ホラー映画】とは決められない作品、
ちょっと見は【ホラー映画】じゃないんじゃないのという作品3本を取上げます。
まず本日は「シャドウ・オブ・ヴァンパイア」であります。
真夏の夜のホラー特集第7弾
2001年劇場公開作品
監督:E・エリアス・マーヒッジ
出演:ジョン・マルコヴィッチ、ウィレム・デフォー、ケイリー・エルウィズ、アデン・ジレット、
エディ・イザード、ウド・キア、他
1922年にドイツの映画監督ムルナウによりつくられた、
吸血鬼映画の古典的傑作「吸血鬼ノスフェラトゥ」。
日本では正式にはロードショーされずに戦後フィルムセンターで始めて紹介されたそうですが、
この作品で主役のノスフェラトゥを演じた俳優・マックス・シュレックは、
ツルツル頭に異様な形相と、特殊メイクもそれほど発達していなかったであろう当時としては、
まさに異色の俳優であったことでしょう。
しかし彼はその後これといった作品に出演した形跡も無く、
映画史ではこの1本の作品の出演のみで消えていった“謎の俳優”でもあった、
そこに目をつけた脚本家のスティーヴン・カッツが、
主演俳優シュレックは実は本当の吸血鬼だったのでは、という
大胆な設定のもとで作られた異色のホラー映画であります。
主役のシュレックを演じるはウィレム・デフォー。
今日の特殊メイクの発達を最大限に使用して、
異様なまでにマックス・シュレックにそっくりなメイクを施し、この謎の怪優を怪演しており、
その怪演さは2000年のアカデミー賞で助演男優賞にもノミネートされたほど。
しかしウィレム・デフォーの怪演以上の怪演を見せるのが、
ムルナウ監督役に扮したジョン・マルコヴィッチ。
徹底したリアリズムにこだわり、リアリズムのためなら手段も選ばずといった、
まさに“映画バカ”的人物を熱演!
なにせこのムルナウ監督。
映画が当時サイレントなものですから、「アクション!」のかけ声でシーンを撮っている最中でも、
まぁ大声で演技に注文をつけるそのうるさい事、うるさい事。
「さぁ君は○○に今いる、今の気持ちはこうで、そして君はこうしている!」みたいに。
「カット!」の声がかかった途端に演じていた女優が
「監督がうるさくて演技に集中できない!」とクレームがつくのも納得がいきます。
そんなムルナウが吸血鬼映画を撮るにあたってリアリズムを追求したために、
遂には本物の吸血鬼を「主演女優のイケニエ」を条件に出演させたという設定も、
ジョン・マルコヴィッチが演じるとフィクションだとはわかっていながらついつい納得してしまいます。
ラストで遂に主演女優の“ご馳走”喰らいつくシュレック。
しかしムルナウはその行為を止めるどころか
「フフフ、いいシーンが撮れた」と
フィルムをまわし続けるのですから呆れたもの。
しかも最後には外からの日の光をサンサンとシュレックに当てて、
シュレックをも絶命させて、そのシーンを嬉々としてフィルムに収めるのですから
ここまでくると吸血鬼・シュレックより生身のムルナウのほうが数段恐ろしい人物であります。
監督はE・エリアス・マーヒッジ。
今年久々に、異色のサスペンスホラー「サスペクト・ゼロ」を発表した監督でありますが、
本作では監督ムルナウと吸血鬼シュレックのぶつかり合いを、
どちらかといえばストレートに演出しております。
「ちょっと面白みがないなぁ」とは思いつつも、
題材が非常におもしろいために大分演出も助けられたようです。
私は前回「ノロイ」
の感想で
徹底的にドキュメンタリーとして見せたいならば
【それなりのキャスティング】を組まなければダメだと書きました。
本作のムルナウの行為こそが、まさにそのお手本を示したといえるでしょうね。
本作はフィクションだとは重々承知の上、
でも「ムルナウならこれくらいやってもおかしくない」と思わせてこそ
リアリズム作家の面目躍如じゃないでしょうか…。
■本作のモデルとなった「吸血鬼ノスフェラトゥ」を収録
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- アイ・ヴィー・シー
- モンスタームービー・クラシックス DVD-BOX
■過去の記事はこちら
●ドーン・オブ・ザ・デッド(【真夏の夜のホラー特集】第1弾)
●テキサス・チェーンソー(【真夏の夜のホラー特集】第2弾)
●ゴシカ(【真夏の夜のホラー特集】第3弾)
●4人の食卓(【真夏の夜のホラー特集】第4弾)
●デビルズ・バックボーン(【真夏の夜のホラー特集】第5弾)
●ノロイ(【真夏の夜のホラー特集】第6弾)
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