【マンガ感想】
『世界の終わりと夜明け前 (浅野いにお)』
浅野 いにお
【あらすじ】
この国の片隅で夜明けを待つすべての人へ――。『ソラニン』『おやすみプンプン』などの話題作で知られる異才・浅野いにおが贈る、待望の初短篇集!! デビュー連作の短編「素晴らしい世界」、構想6年の渾身作「東京」を含む、心ざわめかす単行本未収録作品10編+α。描き下ろし、カラーも多数収録!!
短編集。
漫画家デビューから10年目を迎えた作者による初の短編集らしいです。
私自身、この作者の作品は、この作品で初めて読みました。
以下は、それを踏まえた上での感想です。
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まず、10年目を迎えた作者による初めての短編集ということですが、
索引を見る限り『2005年7月~2008年9月』の約3年間に描かれた作品を集めているようです。
なので、こういう短編集にありがちな『絵柄の古臭さ』や『技術の未熟さ』などを一切感じることなく、
ある意味統一感のある作品に仕上がっていまして、安定して読む事ができました。
次に、作品構成について。
この短編集は、9本の繫がりの無い『短編』と、1本を3話に分けた『短編』を1本と、エッセイを1本、
そして、最後に作者による10本の短編の『解説』で構成されています。
(掲載順は、作品を発表された順番ではなく、適当に並べられています)
次に、作品の内容について。
主に、現代を舞台としており、何処にでもいる『未来に何かしらの不安を持っている人物』を主人公に、
彼らの何気ない日常を描くという作品で統一されていまして、作者の過去の作品の続編から、
漫画家である作者自身の自叙伝(?)まで、様々なストーリーが描かれています。
私が普段、紹介する漫画のような明るい作品ではなく、全体的に暗い雰囲気の作品が多く、
物語を楽しむ漫画という感じではなく、どちらかと言えば読者に共感を求めるような内容です。
なので、この作品の主人公と同じような環境にある方や、かつて同じ環境にあった方が読むならば、
共感を持ってこの作品を読む事ができるであろう作品に仕上がっていると思います。
とはいえ、私のように、能天気で明るいサクセスストーリーな作品が好きな人や、
人間の内面を描くような作品が苦手な人には、なんとも微妙な作風の作品であると思います。
作品・作者自体が、読者を選んでいるという感じでしょうか。
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【総評】
作品としては、絵柄は安定していますし、ストーリー構成も非常に丁寧で読みやすい作品です。
多分、作者の過去の作品もこのような系統の作品だと思われますので、
作者のファンならば、楽しめる作品に仕上がっていると思います。
点数的には
75点
です。
点数は、あくまで私個人の好みなので、あまり気にしないでください。
今の私は、こういう人間の暗い内面を描こうとする作品は率先して避ける傾向にありまして、
漫画でも実生活でも、能天気で明るいサクセスストーリーを求めるようになっています。
そのため、この作品には、どうしても性に合わず、どうしても点数が低くなってしまいました。
多分、学生時代の不安定な時期にこの作者の作品を読んでいたらハマッていたかも・・・。
では、ここまで。