「反省」・・・の「現実化」に向けて | 御苑のベンゴシ 森川文人のブログ

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 刑事事件の裁判官は、毎日、毎日、法廷で「反省しています。二度としません。」という被告人の発言を聞いていることでしょう。なので、簡単には信じません、そりゃそうでしょうね。

 刑事事件と言っても、無罪を争うような事件は受任することは稀で、引き受ける事件の大多数は、実際、やってしまっている(程度の問題は別として)事件がほとんどです。これまでも、殺人、強盗強姦、詐欺、傷害、窃盗、覚せい剤など、認めている事件も多数弁護してきました。

 このような事件で、私が弁護人として何をするかと言えば、基本的には「反省と再犯可能性の否定」を実質化というか、きちんと「具体的な形」にして示すことです。口先だけの反省なんて上記の通り、無意味だからです。

 本来的な、哲学的な意味での内省的な反省は、もちろん、「罪の重さを理解し、被害者を慮り、二度と同じことは繰り返さない」というようなレベルの反省でも、それを具体化し、伝えることは極めて困難です。

 例えば、通勤途中、電車でけんかして殴って怪我をさせてしまった、という場合を考えてみましょう。
 型通りとしては、いくらかの慰謝料を提示して受け取ってもらう代わりに「今回だけは許す」という「示談書」を貰います。ここまでは、まあ、当たり前。とはいえ、簡単には貰えません。被害者の立場で考えれば当然ですね。
 さらに、通勤経路を変えましょう。そして、その証としては別の定期券の取得。
 それから、会社の上司に証人に立ってもらい「しっかり監督し、同じようなことをしたら会社としても懲戒解雇です」などと(そもそも今回は解雇を免れているという前提ですが)厳しく言ってもらうというのもあります。
 バリエーションで、自動車関係の事故や無免許運転であれば、自動車の売却や駐車場の解約など、ということになりますね。さらには、転居、なんてこともあり得ます。

 ともかく、「現実的に」「形にし」、口先だけではない、ということを示すということだと思います。

 そういう「反省の具体化」の積み重ねで、裁判所に減刑事由があることを示すわけですが、そういう「裁判上の効果」だけでなく、実際のところ、本人(被告人)にとっても意味ある作業だと思います。これから先、罪を背負って生きていくのは本人ですから。

 「反省」・・・言うは易し、行うは難し、なんとか現実化・具体化させるのも弁護活動なのです。