夫が戻ってこない場合~離婚or失踪2~3種~ | 法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

大学では資源工学科で熱力学などを学んでいました。
科学的分析で法律問題を解決!
多くのデータ(事情)収集→仮説定立(法的主張構成)→実証(立証)→定理化(判決)
※このブログはほぼ法的分析オウンリー。雑談はツイッタ(→方向)にて。

Q 夫が行方不明です。
  離婚とかできるのでしょうか。

詳しい状況が分かりませんが。
お辛い状況をお察しします。
具体的事情によって対応策は異なります。

誤解ありがち度 3(5段階)
***↓説明↑***
1 一般の方でもご存じの方が多い
2 ↑↓
3 知らない新人弁護士も多い
4 ↑↓
5 知る人ぞ知る

お陰様でランキング1位継続中!
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
人気ブログランキングへ
↑文系弁護士のブログも見てみよう!↑
↑↑↑クリックをお願いします!↑↑↑

A 家庭裁判所に離婚訴訟を起こすか,失踪宣告の手続きを行うかのどちらかです。

夫婦というのは「家族となる契約」です。簡単に言うと。
当然ながら,個人的事情が多く絡みます。
いろんなことが起きます。
「弁護士の扱う案件は小説より奇なり」です。
とにかく,事情によって対応法が異なります。

【離婚訴訟】
相手が行方不明だと「協議離婚」の「協議」ができないので「裁判での離婚」しかできません。
離婚訴訟の場合は,原則として,その前に調停をしなくてはならないことになっています。
調停前置主義と言います。
しかし,長期に渡り行方不明で連絡が付かない場合は,例外として調停をせずに直に訴訟を提起することが認められています。

1つ別の問題が出てきます。

この場合,相手の所在が不明のために裁判所から相手へ訴状を送れません。
そこで,一定期間裁判所の掲示板に掲示することにより送達したことにする手続き(公示送達)をします。
実際に居場所が分からない,という内容の「調査報告書」を作って裁判所に提出するのです。
公示送達がなされれば,結果的に相手方(被告)が欠席でも訴訟は進められます。
当然,そのような状況であれば,元通りの夫婦生活に戻ることはないだろう,と判断され,離婚が認められる可能性が高いです。

次にちょっと違う状況の場合。

【失踪宣告】
もしもご主人の生死すら不明であるような場合は「失踪宣告」という手続きを取る方法もあります。
失踪宣告は2つ,場合によっては3つに分けられます。

【1;普通失踪】
→7年以上生死不明(行方不明)のケース
家庭裁判所に失踪宣告を申し立てられます。

7年間連絡が一切とれず,生死すら不明,という場合は「失踪宣告」の申立ができます(民法30条1項)。
この後出てくる亜流と区別するため,「普通失踪」と呼びます。
呼びたくないですが。「失踪」自体が「普通」ではないのですんで。

で,家裁に申し立てて失踪宣告がなされると,「死亡した」とみなされます。
そうすると,夫婦関係としては,いわゆる「死別」になります。
この場合,「離婚」ではないので「財産分与」は生じず,その代わり「相続」が生じます。
また,生命保険などの夫婦と関係ない部分でも「死亡」とみなされます。
なお,その後,本人が戻ってきた場合は,失踪宣告を取り消すことになります。

【2;特別失踪】
→震災など,特定の原因(「死亡の原因となるべき危難」)によって行方不明になった場合は,1年間で失踪宣告の申立が可能です。

普通失踪と区別して「特別失踪」と呼んでいます。

具体的な震災その他の災害など,「これで亡くなったのだろう」という状況であることが前提です。
条文を持ってきておきます。

【民法30条】
第30条  不在者の生死が7年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。
2  戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後1年間明らかでないときも、前項と同様とする。

条文上,例として挙がっているのは
・戦地に臨んだ
・船舶が沈没した
の2つです。
「戦地」は憲法9条との兼ね合い・・・PKO活動の合憲性・・・
とかを想い出しますね。
「震災」なり「災害」は例としては挙がっていません。これだけの地震国なのに。

話し,戻ります。

最後の1つと言えるかもしれないモノを。

【特別失踪よりも特別な失踪】
これは,現在審議中で,まだ法律として出来上がっていません。
というのは東日本大震災の後に出てきた話しだからです。
3・11の後に,「1年間待たなくても死亡したことは明らかだろう」「何で1年も待つんだ?意味あるんかい?」
という声が大きくなりました。
そこで,特別失踪の期間(1年間)を「3か月」に特別に変更する立法が現在審議中なのです。

ちょっと,最初の質問内容が特定できないので広めにお答えしました。
今回は,理系プロパーの視点(水色部分)はありませんでした。

【補足!「死亡の判断」の緩和】
読者からご指摘をいただいたので補足します。ご指摘ありがとうございました。
東日本大震災では,救済措置的に,被災者が亡くなったと思われる場合,ストレートに「死亡」とする届出を緩和しています。
戸籍法86条3項を活用した形です。
逆に,「死亡したとは判断できない」場合は,↑のとおり,規定の期間待ってから失踪宣告をする,というようになります。
なお,第一東京弁護士会の弁護士(私も含む)や司法修習生が作ったこちらの冊子でも各種制度の説明をしています。PRとして。PDFで重いですが。

【戸籍法第86条】
1 死亡の届出は、届出義務者が、死亡の事実を知つた日から七日以内(国外で死亡があつたときは、その事実を知つた日から三箇月以内)に、これをしなければならない。
2 届書には、次の事項を記載し、診断書又は検案書を添付しなければならない。

一 死亡の年月日時分及び場所
二 その他法務省令で定める事項

3 やむを得ない事由によつて診断書又は検案書を得ることができないときは、死亡の事実を証すべき書面を以てこれに代えることができる。この場合には、届書に診断書又は検案書を得ることができない事由を記載しなければならない。

<<告知>>
みずほ中央リーガルサポート会員募集中
法律に関する相談(質問)を受け付けます。
1週間で1問まで。
メルマガ(まぐまぐ)システムを利用しています。
詳しくは→こちら

<みずほ中央法律事務所HPリンク>
PCのホームページ
モバイルのホームページ

お陰様でランキング1位継続中!
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
人気ブログランキングへ
↑文系弁護士のブログも見てみよう!↑
↑↑↑クリックをお願いします!↑↑↑

震災関連法律相談Q&Aはこちら
震災特例法に基づく被災者(会社)の負担軽減策。税金の還付請求など。by国税庁
弁護士による離婚問題無料相談
弁護士による離婚問題無料相談(モバイル)
個別的ご相談,お問い合わせは当事務所にご連絡下さい。
お問い合わせ・予約はこちら
↓お問い合わせ電話番号(土日含めて朝9時~夜10時受付)
03-5368-6030
050-5538-5030